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「汝の隣人を愛せ」
本特集号はアディクション(addiction)を取り扱っている。アディクションというと麻薬,芸能人,野球選手やらアルコール依存症と連想することが多いが,本特集で取り上げたのは,むしろもっと身近な危険ドラッグ,インターネット,ゲーム,ギャンブル,窃盗,性依存である。普段,メールやLINEなどのSNSを利用する御仁にとって,これらがアディクションといわれると,筆者も含めて自身が病人かと不安になってくるのではないか。麻薬のように,家族,身代,名誉まで捨てるようなアディクションと,それ以外のアディクションでは何が違うのか。本特集を読まれた方は,とりわけ松本論文「アディクションの神経基盤」を読まれると,そこに明確な区別のないことがわかるであろうし,逆に,嗜癖そのもの,あるいは類した行動をとる脳活動そのものがアディクションだと正しく理解できるはずである。Addictionの邦訳は,嗜癖であり依存症である。依存症というと「症」の文字から病的とわかるが,嗜癖となるとボーダーの認識が生まれ得る。しかしながら,本特集では,これらが正常と一線で区別することのできない連続したバランスを欠く脳活動スペクトルであることがわかる。よく,窃盗癖逮捕者に「病気のせいにするな」とは警察や近親者の説得であるというが,医療者はこれを病気と捉え,治療対象として考えるのである。極論すれば,過度にこだわる癖は,病気であり治療対象に入るというスタンスが存在するのである。このスタンスは,アディクション当事者への福音ともなるが,回復への妨げとなることもあり得るであろう。本特集では,アディクション治療として,同病者との交流プログラムや,薬物治療,あるいは隔離治療などが紹介されている。基本的には,アディクションに活動する神経回路以外の別回路の補強,フィードバック賦活化であるとも俯瞰できそうである。
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