--------------------
あとがき/読者アンケート用紙
桑原 聡
pp.188
発行日 2017年2月1日
Published Date 2017/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200663
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回は近年爆発的に増加しているオープンアクセスジャーナル(open access journal:OAJ)について考えてみたい。OAJのパイオニアであるPLOS ONE誌は2006年にPublic Library of Science(PLOS)より刊行された。発刊時のコンセプトは「おおむね方法論が正しければ掲載し,その科学性は出版後の引用回数で評価される」である。従来型の購読料を要する雑誌と異なり,OAJはウェブ上で自由に閲覧でき,出版のための費用は論文の著者が支払う投稿料(Article Processing Chargeと称される)によって賄われる。すなわち読者は無料で論文を読むことができる。現在PLOS ONEの採択率は70%,年間掲載論文数は3万編を超えている(世界第一位)! 2009年にインパクトファクターの対象となり以後3.5〜4.0で経過している。
OAJの問題点を挙げる前に,従来型の出版社との契約料が高騰していることを述べておく。大手の国際的出版社としてElsevier,Nature Publishing Group,Springer社などがあるが,筆者の所属する大学で支払う年間の契約料は各社を合計すると約3億円(!)である。検索した論文の本文をウェブ上で直接入手するためには購読契約を結んでおく必要がある。この購読料は年々値上がりしており,これに対して研究機関が抗議し是正することはまったくできない。さらに消費税が5%から8%に上がった際に,購読料は9,000万円の増額になった。この大手出版社のやり方に研究機関は怒りと,絶望感さえ抱いている。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.