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6月21〜24日にグラスゴーで開催されたInflammatory Neuropathy consortium(INC)に参加してきた。本誌67巻(2015年)11号でも特集したように,ギラン,バレー,ストロールによるギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)の1916年の原著報告から100周年となるため,丸1日をかけて大々的なシンポジウムが組まれていた。本会の全体像については後日,本誌の学会印象記でも紹介される予定である。GBSに関する近年の大きなトピックはジカウイルス感染後GBSであり,この学会でもブラジルから4演題が発表された。今回はGBSに絞って紹介する。
報道などでご存知の方も多いと思われるが,このウイルスは1947年にウガンダのZika forest(ジカ森林)のアカゲザルから初めて分離され,ヒトからは1968年にナイジェリアで分離された。その後2007年にはミクロネシア連邦のヤップ島で流行し,2013年にはフランス領ポリネシアで約1万人の感染が報告され,2014年にはチリのイースター島,2015年にはブラジルを含む南アメリカ大陸で流行が発生した。日本への最初の輸入症例はフランス領ポリネシアでの感染症例であった。ジカウイルス感染後GBSを多数例でまとめた初めての報告は,上記のように2013年に集団発生が起こったフランス領ポリネシアから42例の報告として2016年4月にLancet誌に掲載された1)。この論文中では臨床症状は古典的な脱髄型であるにもかかわらず,電気生理学的検査では軸索型であると記載されている。筆者は神経生理学を専門としているので,特に注目して読んでみると,検査データはみごとに脱髄型の所見を示している。国際的な影響力の大きい天下のLancet誌で明らかな誤りがあることは望ましくないことであり,早急に正しい解釈を示すべきと考えて,同じ意見を持つイタリア,マレーシアのGBS研究者とともにLetter to Editorを投稿したが,なんとrejectされてしまった。これが5月のことであった
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