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あとがき/読者アンケート用紙
酒井 邦嘉
pp.1122
発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200563
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「1日で5分余計に進む時計と,完全に止まった時計では,どちらの時計が正確か?」というクイズがある。答は,後者だ。毎日2回は正確な時刻を示す。これを思い出したのは,しばらく使っていなかったクォーツ腕時計がすべて電池切れで止まってしまったからだ。何はともあれ,電池交換やオーバーホールに時間がかかって閉口した。機械式の時計は,たとえ止まっても手巻きですぐに動かせるから,そういう点ではクォーツ時計に勝る。
街の至る所に時計があり,スマホで簡単に時間がわかる時代になっても,腕時計を身につけた人は周りに少なくない。現在の時刻だけでなく,次の予定まで後どのくらい時間があるかを知りたいとき,アナログ時計はとても便利だ。腕時計の基本は3針(時・分・秒)で,これに日付・曜日,クロノグラフ(ストップウォッチ),ムーンフェイズ(月の満ち欠け)などの表示が付加されているものもある。最近は電波時計やGPS時計が普及してきた。シチズンが初めて開発した光発電時計エコ・ドライブは電池交換の心配がないし,年差10秒以下を保証する高精度のものまである。一方,機械式腕時計のムーブメント(針を動かす仕掛け)も進歩を続けており,オメガが初めて実装したコーアクシャル(Co-Axial)機構では,油切れや摩耗のためオーバーホールが必要となるまでの年数が8〜10年と倍に伸びた。時計職人による手仕事の賜である機械式時計は,今なおその存在価値を失っていない。自動巻きは便利だが,手巻きの時計にも特有の味がある。忙しい毎日であればこそ,時計のリューズを巻く心のゆとりを持ちたいものである。
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