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あとがき
酒井 邦嘉
pp.236
発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200124
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日本の食卓では,箸を使うのが今なお一般的であろうが,箸の形や材質は実にさまざまである。丸や四角の箸が圧倒的に多いのは,単に作りやすいからであろう。取り箸,菜箸,真魚(まな)箸といった使い分けにも表れているように,箸は食文化や習慣の違いを如実に反映している。中国や台湾では先が太い長めの角箸や丸箸が多い一方,韓国では平形のステンレス製の箸が一般的だ。毎日手にする道具だからこそ,割り箸はできるだけ使わずに良い箸を長く使いたいと私は思う。
いろいろと考えて試行錯誤した結果,箸は五角形のものが最良だとわかった。まず「面」の数が少ないほど面積が増すため,ピンセットと同じ要領で豆類や麵類がつかみやすくなる。丸箸は先端が「線」で接するから,道理で使いにくいわけだ。しかも丸箸は手の中で滑りやすくて力を先端まで伝えにくい。一方,三角箸や四角箸となると,面取りがされていない限りどうしても箸のエッジが手や指に食い込んですぐに痛くなってしまう。四角箸が単に作りやすいという理由だけで,痛いのを我慢して使うのは理不尽であろう。そこで五角箸を試してみたところ,手と指に接触する面が自然と五角箸の面に一致することがわかった。箸が滑らず手に吸い付くように持てて,しかも先端の二面が正対するから,先が細ければ胡麻粒まで楽に摘まめるのだ。これこそ「機能美」の典型と言えよう。
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