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あとがき
酒井 邦嘉
pp.1192
発行日 2024年10月1日
Published Date 2024/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202757
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私は小学生低学年のときから,ドイツ式の音名でヴァイオリンを教わったが,cis(ツィス)やh(ハー)などの呼び名にはなかなか馴染めなかった。何より,運指の記憶が,楽譜やソルフェージュの記憶と結びつかないため,暗譜(楽譜を見ないで演奏すること)が苦手になってしまった。ところが最近になって,英語圏で広く使われている「移動ド・ソルフェージュ」を知って,これまでの疑問が氷解したのだ。
ソルフェージュとは,楽譜を見て「ドレミファ……」で歌う練習のことである。Cの音を「ド」に固定して音名で読む「固定ド」が今なお一般的だが,♯(シャープ)や♭(フラット)などの臨時記号を含めると歌えなくなってしまう。ところが,相対音感に基づく移動ドではキー(調)が変わっても同じメロディーと捉えることができ,さらに英語圏のソルフェージュとなると,♯は母音を「i」に,♭は母音を「e」に変えることで,臨時記号つきで歌えるようになる。鼻歌やハミングで頼りなく覚えるのとは雲泥の差なのだ。
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