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あとがき
酒井 邦嘉
pp.902
発行日 2014年7月1日
Published Date 2014/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101857
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半年ほど前から,フルートを習い始めた。先生について習ったことのある楽器はヴァイオリンだけだったので,管楽器のトレーニングは初めての経験である。私の場合,木工技術の粋であるヴァイオリンから木製のリコーダーやトラヴェルソへと関心が広がり,金属製のモダン・フルートにたどり着いた次第である。自然な息が音に変化するという爽快感は,弦楽器とは違った魅力だと改めて思うようになった。
約4万年前の笛が出土しており,これが現存する最古の楽器だというから,フルートは実に息の長い楽器である。古代の笛は,鳥の中空な骨などを利用して途中に横穴を開けたものであった。横笛の系譜をたどると,日本では古来の龍笛や篠笛がそのまま現代まで続いている一方,西洋では円筒管のルネサンス・フルートから,バロック期に円錐管のフラウト・トラヴェルソへと発展した。ベーム式のモダン・フルートに移行してからは150年余りしか経っていない。19世紀後半のアルテスによる教本が今なお使われている一方で,基礎的な演奏技法をめぐる対立した見解は珍しくない。音が出る原理をよく理解して,理にかなった習得法を選びたいものである。
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