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編集後記
近藤 幸尋
pp.988
発行日 2014年11月20日
Published Date 2014/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200049
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泌尿器科領域においては腎癌の分子標的薬に次いで去勢抵抗性前立腺癌に対する新薬が相次いで発売されました。薬剤の価格は上昇の一途であり,経口剤にしても点滴の化学療法剤にしても1か月で40〜60万円も1剤だけでかかってしまい,医療費は年単位で考えると大変なものです。幸いにして日本においては高額の医療費には高額療養費の制度があります。高額療養費とは,同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合,一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が,あとで払い戻される制度です。これは患者さんには非常に優しい制度ですが,保険組合や税金により賄われることになります。
しかしどうしてこんなに医薬品が高額なのでしょうか。これには日本の栄光の歴史が影響しているようです。わが国は1970年代の石油危機を乗り切り,経済大国となりました(1979年にはヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が出版されています)。そして,1980年代前半の円安ドル高を背景に日本企業は国際競争力を強め,日本は継続的な米国債購入をして世界最大の債権国となりました。こうして1980年代前半に日本のひとり勝ちが明らかになると,米国は日本への輸出を拡大させるため円安の是正を要求し,1985年にプラザ合意が結ばれました。結果的に,円高が進み日本では円高不況となり,日銀が金融緩和を行った結果,投機先が不動産となりバブル景気となりました。日本企業は円高を背景に米国企業や不動産の買収を進め,米国内では「日本脅威論」が起こり,ジャパンバッシングが高まり,米国内では円安是正とともに日本市場の開放を要求する声が高まっていきました。
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