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あとがき
大山 学
pp.188
発行日 2024年2月1日
Published Date 2024/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412207214
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「いくさ」には戦う双方にそれなりの理由があり第三者がどちらに大義があるのかということを正確に判断することはしばしば難しいと言えましょう.今,中東で起きている争いも長い歴史の流れのなかで生じたものであり,私たちが正しくコメントできるようなものではないのだと思っています.紛れもない事実は,何の罪もない人々が巻き込まれ,傷つき,悲しんでいるということでしょう.そうした状況のなか,奮闘する医療従事者の姿が報道されています.電源が落ちたなかで救命のためスマホの光を頼りに手術する医師,爆撃の合間に負傷者を搬送する看護師などの姿を目にすると同じ医療従事者として誇らしく,感動し,感謝の気持ちを抱きます.彼らにとって,診療や救命はもはや「仕事」の域を超え,「人としてするべきもの」なのでしょう.「医は仁術」という言葉が自然と思い浮かびます.
一方,医療従事者である私たちにとって,医療行為が「仕事」であり「業務」であるのも事実です.それを嫌がうえでも実感するのが,この島国で今騒がれている「医師の働き方改革」でしょう.そもそも私たちの業務は常に自発的に知識・技量をアップデートしなくては成り立つのが難しい(少なくとも第一線にはいられない)という側面があります.また,医学は先人たちの経験を後進が引き継ぎ,たゆまぬ改良を加え発展してきた学問体系です.医育なくして医学なし,研鑽なくして良医なしです.そもそも不可分のものを法規的に定義し定量せよと言われても無理があるのではと思います.もはや「医は仁術」の気概を維持するのが難しくなりつつあるようにも見えてきてしまいます.
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