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新春なので明るい話題で始めたいと思います.つい先日のこと,診察室に満面の笑みを浮かべて長らく私の外来に通ってくれている若い女性患者さんが入ってきました.「いいぞ.きっと随分と発毛したに違いない!」とこちらもついニコッとしました.すると座るなりいきなり,「先生! 私,合格しました!」と言うのです.聞いてみると,ある医学部に合格したのだとか.「それは良かったね.がんばった甲斐があった! それで,もちろん,ずっと皮膚科にかかってきたのだから将来は立派な皮膚科医になるのでしょう?」と訪ねたところ,地域枠での合格(だから普通より合格が早い)とのことで,将来進む診療科もある程度限定されているとのこと.内心少しだけ残念でしたが,それでも立派なことです.「おめでとう! ではせめて皮膚科の教科書は先生の書いたやつを使ってね(笑)」などと言ってから診察してみると,不思議なことに脱毛のほうも再発毛傾向がみられました.こうしてみると,やはり心身のバランスというのは疾患の病態に影響するようです.
私の外来に通院する若い患者さんには,幼少期に発症し重症のまま症状が固定してしまった方が多くいらっしゃいます.おそらく私たちの予想をはるかに超えて精神面,あるいは社会生活面でつらい経験をされたのでしょう.自分で何とかしたい,あるいは同じ悩みを抱えている人たちを助けたい,という思いが強いためか,医歯薬系への進学率が有意に高い印象をもっています.もう医学部を卒業し,初期研修を終え皮膚科医として活躍している元患者さんもいます.さらには,私が勤務しているから(が本当の理由であると嬉しいのですが…),本学に入学し,医師を目指しながら通院している医学生さんもいます.医育機関に勤務する者としてこれほど冥利に尽きることはありません.
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