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あとがき
大山 学
pp.658
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205174
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他科と比べて皮膚科の診療は「予めインプットされている情報量」に左右されることが多いと言ったら言い過ぎであろうか.随分昔の話になるが,短期交換レジデントとして米国ペンシルベニア大学(以下,ペン大)医学部皮膚科学教室に留学させていただいたときに驚愕したのは,かの『Andrew's Diseases of the Skin』の筆頭著者である(その当時は単著であったように記憶している)William D. James教授の卓越した診断力であった.ペン大にはDuhring Conference(そう,ペン大の初代教授はあのDuhring先生です)という,診断困難な症例を集めたカンファレンスがあるのだが,James先生は,他の高名な先生方があまりコメントできないような症例を「これはXXXX年のJAADに掲載されていた○○にそっくりである!」などと涼しげにおっしゃってどんどん結論を出されていたのである.その知識の豊富さ,整理の仕方に驚愕したことを今でもはっきりと覚えている.その当時,「知ること≒診断能力」であると強く感じたことを思い出す.
先日,通勤途中の車の中で何気なくFMに耳を傾けていると,われわれには治安がきわめて不安定と伝えられている中東の都市の市民の生活の様子を現地レポーターが報告していた.日頃,日本の放送局が流す情報とは全く異なり,市民は平穏に暮らしており,実は若者は米国の文化が大好きであるとのことであった.それは日本で得られる情報に基づいて形成されたわれわれの認識と大きく異なるものであった.
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