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編集後記
T. K.
pp.102
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101564
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2010年第1号の「巻頭言」は日本精神科病院協会副会長の長尾卓夫氏に書いていただいた。日本の精神保健医療福祉行政は10年間の改革ビジョンに従って行われているが,中間年を過ぎて後半の5年間の方針を決めるために「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」が1年半近くかけて開催され,各方面の意見を集約し2009年9月に報告書が取りまとめられた。長尾氏は報告書に基づき,精神科病院の立場で述べている。精神障害者の地域居住に関する財政的支援が非常に乏しいために長期在院者を生んできたこと,今後は地域居住を進めるためには十分なマンパワーと財源の確保が必要であること,入院患者の高齢化,合併症の問題が起こっていること,認知症が増加し,病床の確保が必要になり,精神病床の一部を介護保険施設に転換するなどの可能性があるがそれだけでは間に合わないことなどに注目している。これからの精神医療の方向は財政的支援がないために歪むことがないよう,精神医学,精神医療の関係者が協力して努力していかなければならない。そのためには精神科七者懇談会松沢宣言(2009年11月7日)が述べているように「精神疾患基本法」の制定が急がれる。
統合失調症の認知機能障害が指摘されて久しいが,認知機能を増強する方法が考案され認知機能リハビリテーションと呼ばれている。「展望」にその実際について第一人者の池淵恵美氏らが詳しく述べており,読者にとって大いに参考になるであろう。
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