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本号の巻頭言で,加藤進昌教授が近年増え続けている成人自閉症スペクトラムの専門外来について述べておられるが,発達精神医学の必要性がますます高まっていると感じた。
平成19(2007)年12月に日本医師会館で精神科七者懇談会 卒後研修問題委員会と日本医師会が共催して「うつ病と自殺に医師はどう対応するのか―医師臨床研修並びに生涯研修における精神科の役割」というシンポジウムが開催された。「うつ病と自殺」「臨床研修制度」を2つのキーワードにした集まりであった。そのときの発表をまとめ,討論も加えて特集にした。現行の臨床研修制度における精神科研修の成果や問題点および自殺予防の対策について(関氏),うつ病に対する精神科プライマリー診療:研修医としての経験(牧野氏),内科指導医からみた精神科の役割(大和氏),生涯研修におけるうつ病診断と自殺防止(樋口氏),労災から見た自殺の問題(黒木氏),市民の視点から見たうつ病と自殺の問題(南氏)などの内容が話され,総合討論では熱心な意見交換があった。このときはまだ臨床研修制度の見直しの話などは出ていなかったが,その後大学病院,特に地方の大学病院から研修医が少なくなり,大学の医師派遣先の病院から医師を引き上げて,医師不足が顕著になったという話が強調された。そのため平成20(2008)年9月に,急に文部科学省と厚生労働省の合同で臨床研修制度あり方等検討会が組織され,6か月で結論を出した。超特急の審理と結論であった。2年の研修を実質1年にし,必修科目を内科(6か月),救急科(3か月),地域医療(1か月)だけにしてこれまでの精神科を含めた必修5科目の中から2科目を選択必修とする。早い段階から自分が将来選択する専門科を研修できるようにして,モチベーションを高め大学病院に研修医が集まるようにしたい,そして大学病院の医師派遣機能を回復したいという願いがこめられている。現行の臨床研修制度がプライマリ・ケアと全人的医療を行えるような医師の養成ということで始まったが,その研修内容の検討は2の次であった。精神科七者懇談会卒後研修問題委員会,日本精神科病院協会,日本精神神経学会が多方面から「うつ病診療など精神科プライマリ・ケアの必要性と全人的医療習得のために」精神科を必修科目に残すよう働きかけた。その結果到達目標(行動目標,経験目標)はそのまま維持され,経験目標の中にあるA疾患,すなわち統合失調症,気分障害,認知症については入院患者として受け持ってレポートを書くことが義務づけられている。このことは,これまでと同じように精神科で研修を行わざるを得ないということを意味している。現行の臨床研修制度で精神科が最後に必修科目として組み込まれたのと同じように,最後のところで踏みとどまった感じがある。今回の特集が気の抜けたサイダーのようにならなくてほっとしているところである。
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