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卒前・卒後教育に奮闘中の執筆陣による,新鮮で整理された内容
精神医学は,ライフステージに沿って,人間の精神機能の失調である精神疾患を修復し,精神的な幸福の実現をめざす医学である。精神疾患は,一般人口における有病率が高く,その多くが人生早期に始まるため,疾病による社会的・経済的負担の主要因であり,ガン・生活習慣病と並ぶ三大国民病である。この克服をめざす精神医学は,その重要性にもかかわらず,日本の医学における位置付けは必ずしも高くなかった。しかし,卒後臨床研修制度の改革に伴い,すべての(来年度からは大多数の)医師が精神科研修を行うようになったことは大変喜ばしいことである。『標準精神医学(第4版)』は,この要請に応えるものであり,現役の大学講座担当者を中心として,今まさに精神医学の卒前・卒後教育に奮闘している執筆陣による,新鮮で整理された内容は,これまでの日本の精神医学教科書になかった大きな特徴である。将来精神医学の道をめざすかどうかにかかわらず,すべての医学生・研修医に精神医学の素養を身につけてもらうことは,全人的な医療を行える医療人の育成という卒前・卒後臨床教育にとって極めて重要なミッションであり,それに対する執筆陣の静かで熱い情熱が感じられる。
総論には,編者らの精神医学に対するバランスのとれた見識が述べられており,精神医学の教育に携わる立場の方々にもぜひ読んでいただき,明日からの教育活動に役立てていただきたい内容である。各論では,目を通していただければわかるように,どの章も,基本的知識から新しい知見まで,大変よくまとまっており,学ぶ側にとっては非常にわかりやすい。また,教える側にとっても,自分の普段使っている講義資料をブラッシュアップするのに役立つであろう。こうしてみると,本書のタイトルの「標準」には,バランスのとれた内容をわかりやすく述べ,日本の精神医学の卒前・卒後教育を,学ぶ側の身につける内容も,教える側の伝える内容も,標準化していきたいという,編者らの強い意図が込められているといえる。
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