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今年はアメリカ発の経済不況の波が押し寄せ,そのアメリカで改革を旗印にした新しい大統領が選出され,今後どのような変化が起きるか期待されている。日本では円高,株安の経済不況が強まっており,就業率の低下が予測され,就業障害者への波及が心配される。
さて,本年最後の12月号にはACT(assertive community treatment)包括型地域支援プログラムの特集を取り上げた。わが国の精神科医療は1987年の精神保健法,1995年の精神保健福祉法およびその後の改訂で約20年間に大きく変化した。厚生労働省は,2004年10月に精神保健福祉施策の改革ビジョン10年計画とグランドデザインを示した。そこでは(1)患者の病態に応じた精神病床の機能分化の促進と地域医療体制の整備,(2)入院患者の適切な処遇の確保,(3)精神医療の透明性の向上が示され,さらに具体的な項目が挙げられていた。本年から来年にかけて改革ビジョンの5年目以降の見直しの時期にあたり,専門家の意見を聞き,データを解析して,来年には後半5年に向けて精神科医療の今後の方向を示そうとしている。精神科病床の機能分化は徐々に進められているが,地域医療については設備面ではグループホームなどの居住施設の整備がきわめて不十分であり,ソフト面では,訪問看護,訪問診療などで,多職種によるケアも一部で始まっているがいまだ混沌とした状況である。地域でのケアにどのような形があるのか,まず患者や家族が必要とするケアはどんなものかという視点が大切になる。厚生労動省は諸外国を参考にして数年前にACT-Jを立ち上げ試行を行ってきた。そこで,地域医療の最も中心的なモデルになると考えられているACTについて実際に施行している方,訪問診療を行っている方,行政面で関与しておられる方,ACTに詳しい方などにお願いして執筆していただいた。
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