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編集後記
T. K.
pp.724
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101937
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東日本大震災から3か月が過ぎて,こころのケアの重要性が増している。精神疾患を持ち外来通院していた人たちは通う場所に不自由し,身内を亡くした人々が辛い思いをしながら毎日を過ごしていることを思うと胸が痛む。
7月号には,エディトリアル「災害精神医学の確固たる発展を目指して」を掲載し,大震災に関する論文を募集することになった。「巻頭言」は認知症の専門家の本間昭氏にお願いした。認知症の地域医療とケアの問題を整理していただいた。若年認知症患者の受け皿がないこと,成年後見制度が進まないこと,認知症の合併症対応が進んでいないことなどの指摘は重いものがある。宮川太平氏には「統合失調症の研究の歴史と意識野からみた症状発生の機序」という野心的な「展望」を書いていただいた。最近は注目されていないが,脳幹網様体から汎性視床投射系という生物学的基盤を中心にした意識野,ひいては自我意識について科学的に説明できると述べている。この自我意識は精神病理学でいう自己の確立に近いものと思われる。また,統合失調症では精神機能を統合し,コントロールする要に異常が存在すると考えなければ,症状のすべてを理解することは不可能であろうとも述べているが全く同感である。自然科学の分野が細分化し,深く進んで行くに伴って統合失調症の全体像や臨床からの視点が見失われがちになるので,このような展望は有意義である。
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