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編集後記
T. K.
pp.936
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101286
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8月は記録的な猛暑であるが,本号が刊行される頃は秋風を感じられる季節になっているかもしれない。本号においては,展望において針間博彦氏らによる「Shneiderの1級症状の診断的意義」が取り上げられている。Schneiderの「臨床精神病理学」に基づいて彼の統合失調症の概念および診断,1級症状の定義などを吟味し,DSM-IV, ICD-10などとの関連についても述べている。非常に有意義な内容の展望である。
ICD-10, DSM-IVの中にSchneiderの1級症状がほとんど取り入れられ,診断に大きな影響を与えていることは周知の事実である。そして,明確な規準に従って,初心者も経験者も非精神科医も使える診断に関する共通の言語として世界中で利用されるようになっている。しかし,臨床場面においては,ICD-10やDSM-IVは診断マニュアル化してきわめて表層的な使われ方になっている場合も多いのではなかろうか。症状の把握に重点が置かれ,状態像,全体像の把握,患者を理解しようとする過程がおろそかになっているように思える。症状把握の時点でマニュアルとの突き合わせが行われ,診断ができると一息ついてしまう。個々の症状把握とともに状態像,全体像の把握は連動して行われなければならない。また,生活史,病前性格,発病以来の経過なども病状を理解する手がかりになる。これらによって症状の持つ意味がわかってくる。これらの作業は患者の置かれている状態を把握し理解する過程であり,治療の第一歩になる。
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