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新年度が始まり改まった気持ちでおられる方が多いと思う。巻頭言には加藤邦夫教授(高知大学)が地方大学の精神医学研究について述べている。新医師研修制度が施行されてから,地方大学においては2年間の臨床研修終了後,出身大学の医局に残る医師が少なく,大都会やその周辺の大学病院,有名総合病院で研修する医師が多い。大学教育,診療,研究の活動レベルを維持していくことはきわめて厳しくなってきている。この危機的状況を創造的な思考と工夫と実行力で切り抜け発展の礎にしてほしいと思う。展望には朝田隆教授がAlzheimer病の実践的研究について書いている。地域の中に入り込んで疫学,予防研究を行っているのは大変すばらしい。日本においてこのようなスケールの大きい研究が地道に進んでいることは喜ばしいことである。
本号には睡眠の特集が組まれている。睡眠学の発展は近年著しい。大川匡子教授が2005年に改変された睡眠障害国際診断分類の具体的な説明を行っている。清水徹男教授はうつ病と不眠との関係について疫学的,内分泌学的(CRH,HPA-axis),治療学的(断眠など)面から総説を書いており,不眠がこれまで以上にうつ病との関連が深く,うつ病の発病因子にもなっているという。小曽根基裕氏らは現代社会とリズム障害について論じ,交代勤務睡眠障害,時差症候群などの病態と対策が示されている。内山真教授はわが国の多数例の疫学研究から睡眠障害をとらえ直しており,新しい睡眠薬開発の動向を示している。三島和夫氏は高齢者,認知症患者の睡眠障害と治療上の留意点について,最新の知見を踏まえて論じている。また,千葉茂教授はせん妄と睡眠の関係について詳細に説明している。近年睡眠について種々の方法論を駆使して,病態および治療面の研究が大きく進歩した。うつ病,せん妄,ストレス,発達などと睡眠の関係をみても,睡眠の問題が精神医学の領域でますます重要になってきたことがわかる。睡眠学の領域は学際的であるが精神科医が大きな役割を担っていることを認識したい。
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