呼と循ゼミナール
虚血心における局所心筋動態—実験的研究(その2)
久萬田 俊明
1
,
松崎 益徳
1
,
楠川 禮造
1
1山口大学第2内科
pp.293
発行日 1980年3月15日
Published Date 1980/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203537
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前述したように,冠動脈結紮後,虚血部心筋は収縮力を速やかに減じ駆出期を通じて伸展(passive stretch)されるようになる。駆出後,即ち大動脈弁が閉鎖した後,伸展されていた虚血部は心内圧の急激な下降とともに急速に短縮し,左室圧が最小となる付近で再び急に伸展され始める。その後のslow flling periodでは虚血部はきわめて緩徐に伸展される1,2)。この駆出後に起る虚血部の短縮は実験例でも臨床例(虚血性心疾患患者)でも観察されているが,虚血部のactiveな収縮が遅延(delay)してcontractionを起しているのか,あるいは心内圧の下降に伴って生じた単なるpassiveな短縮にすぎないのか,その成因は不明である。いずれにせよ駆出後(等容弛緩期およびそれを越える時期)の心筋短縮またはdelayedcontractionが全身への送血に関与せぬことは明らかであり,「虚血心では左室最小容量が必ずしも駆出の終りを意味しない」という点で左室pump機能を評価する際に重要である。
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