症例ライブラリー 多職種チームで術前状態を最適化せよ
まとめ:患者を治すのは誰か
水谷 光
1
Koh MIZUTANI
1
1市立貝塚病院 麻酔科・中央材料室
pp.872-873
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360320090872
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
患者の体力と精神力を術前に向上させておく意義
手術治療は,患者の健康を取り戻すために行われる。しかし多くの場合,手術治療の効果が得られるのは数週間から数か月後であり,術後急性期は手術侵襲のために非健康状態に陥る。その状態からの回復は,患者自身の術前の体力と精神力にかかっている。言い換えると,術後急性期において医療者,特に医師は患者の身体に悪いことばかりしている。キズを作るのは医師で,そのキズをくっつけるのは患者である。薬を投与し喉に管を突っ込むのは医師で,薬を排泄し,喉粘膜を回復させるのは患者である。
本症例ライブラリーでは「最適化」と表現したが,術前に準備するのはこの侵襲を癒す力である。話を単純化するために職種ごとに症例を提示してもらったが,実際には一人の患者に多職種がそれぞれの領域に介入するので,術前状態の最適化は相乗的な効果が期待できる。ASA-PS classⅢと評価した患者を術前1か月程度の介入でclassⅡに下げることは難しくとも,実際,術前の介入による予後の改善には目を見張るものがある。術前から患者の体力と精神力を向上させておくことは,術後回復に大いに貢献する。それは手術の低侵襲化が進んでも変わらない。
Copyright © 2025, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.