症例ライブラリー —こんなことがないように—クスリのリスク
まとめ:誤薬を減らすために
水谷 光
1
Kou MIZUTANI
1
1市立貝塚病院 麻酔科・中央材料室
pp.250-251
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360320030250
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誤薬の危険性は,昔に比べると低くなった。われわれの先輩方が苦労を重ねて安全文化を築き上げてくれたおかげである。例えば,塩化カルシウムを単回静注するように塩化カリウムを単回静注する事件が後を絶たないので,黄色で着色するだけでなくシリンジに吸えない剤形になった。持続静注用の10%リドカインを2%リドカインと間違えて単回静注する事件も繰り返され,10%製剤は販売中止となった。亜酸化窒素を日常的に使っていた時代に,手術終了して100%酸素のつもりが100%亜酸化窒素を吸わせる事件もあった。当時,パルスオキシメータはなく,患者の血色が失せて灰色になるのを見て気づいたらしい。今は麻酔器のノブに仕掛けが必須化されて,このようなことはなくなった。イソフルラン用気化器にセボフルランを充塡することもできたが,今はキーフィラーのおかげで防ぐことができるうえに,呼気から自動的に麻酔薬の種類を判別してくれるようになった。また,1台の気化器しかオンにならないようになった。プレフィルドシリンジは,利便性だけでなく誤薬の防止にも役立っている。しかし,われわれがしてしまいそうな間違いはまだ残されている。本ライブラリーで提示された症例はその代表だが,ほかにも落とし穴はある。誤薬に注目した報告は近年も数多い1〜5)。
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