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あとがき
大山 学
pp.792
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790100792
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この「あとがき」を執筆中の今,参議院選の真っ只中です.都心から離れた施設に勤務しているせいなのか,政治に元気がなくなっている昨今の情勢を反映してなのか,選挙演説や選挙カーもかつてほど見かけず今ひとつ盛り上がりに欠けていると感じるのは私だけでしょうか.物価高や少子化対策など候補者の主張にはさまざまなポイントがあると思いますが,やはり私たちの興味を引く論点は医療や福祉に関することでしょう.
私たちの専門領域においても,診療技術の進歩はめざましく,重症アトピー性皮膚炎のかゆみがたった数日でほぼなくなる,全身の乾癬が略治する,全頭性の円形脱毛症患者さんのウイッグがとれる,さらには,メラノーマの多発転移が消えてしまうといった自分が研修医の頃には想像すらできなかったことが現実のものとなっています.しかし,その代償として高額な医療費がついてまわり,今後高齢化,少子化がさらに進んで行くことを考えると,そう遠くない未来に今の医療制度が破綻することは目に見えています.その対策として行政が考えているのが,処方薬のOTC化のさらなる推進などをはじめとする医療制度改革であることはご存じのとおりです.諸問題がありながらも議論が進む,その流れは「待ったなし」の状態と言えるのかもしれません.今後,AIのさらなる進歩が予想されることなどを考えると,いわゆる「一般皮膚科」的な診療へのニーズは大きく落ち込む可能性があると言わざるを得ません.

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