胸部外科 71巻5号 (2018年5月)

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自己免疫性疾患や間質性肺炎に対するステロイド,免疫抑制薬の長期投与例や,癌患者に対する化学療法に伴い日和見感染症である肺真菌症は増加傾向にある1).その中でも肺アスペルギルス症は深在性真菌症の中でも頻度が高く,外科的切除が必要となる機会も増加してきている.しかし,その病態は複雑で,診断・治療の困難さから治療のエビデンスが乏しいのが現状である2,3).慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary aspergillosis:CPA)の中でも,単純性肺アスペルギルス症(simple pulmonary aspergilloma:SPA)は唯一手術が第一選択である.慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis:CPPA)は,有害事象などの理由から抗真菌薬の投与が困難な症例,喀血血痰を繰り返す症例などで手術が行われてきた.しかし,広範囲の胸膜への強固な癒着,大量出血,手術時間が長時間に及ぶなど手術侵襲が高く,気管支断端瘻や感染など術後合併症のリスクが高いことから,手術は積極的には行われず,ガイドラインでもエビデンスは存在しない.しかし,CPPAの中でも手術治療により根治しうる症例を経験することがある.

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肺多形癌はまれな腫瘍で予後不良と報告され1),標準的治療も確立されていない.われわれは,術後再発した肺多形癌に対しdocetaxel(DTX)を含む抗癌薬投与とnivolumab投与で長期生存が得られている症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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原発性肺癌の約2~16%が空洞を形成するといわれており,なかでも薄壁空洞を呈する例は比較的まれとされている1~4).われわれは,3年間変化を認めなかった小囊胞陰影が突如増大し,その後経時的に囊胞壁が肥厚して薄壁空洞を呈した肺扁平上皮癌の1例を経験した.このように薄壁空洞を形成する肺癌の発症経過を追えた症例は貴重と考えたため,文献的考察を加えて報告する.

まい・てくにっく

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胸腺全摘術は従来から行われている胸骨縦切開と胸腔鏡下アプローチの2種類があり,筆者の場合,胸腺上極の処理はアプローチによりやや異なる.いずれの方法でも基本的には,胸腺上極も胸腺被膜でおおわれているので,できるだけこの被膜を温存しつつ頭側方向へ剝離をすすめることが確実かつ容易な剝離法となる.胸腺上極の組織内には下甲状腺動静脈が伴走していることがあり,胸腺を尾側へ牽引しながら剝離をすすめる過程で誤って離断すると,頸部組織内に断端が埋没してしまい出血の制御がむずかしくなることがあるので注意を要する.上極端の切離には絹糸による結紮やクリッピング,またはエネルギー・デバイスを用いて断端を確実に閉鎖することが肝要である.胸腔鏡下アプローチでは,術後の胸部X線像で頭側の切離レベルを確認するために,意図的にクリッピングすることもある.

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はじめに 僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する外科治療の第一選択は僧帽弁形成術であるが,術後再手術を要する原因はリウマチ性を除くとMRの再発がほとんどで,僧帽弁狭窄症(MS)はまれである.われわれは,非リウマチ性によるMRに対し僧帽弁形成術を行った12年後の心不全を伴うMSに対し,僧帽弁置換術を行った症例を経験したので報告する.

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はじめに 開心術に関連する中枢神経系合併症で,硬膜下血腫(SDH)はまれである.一方で感染性心内膜炎(IE)は脳合併症がしばしば問題となるが,IE術後SDHの報告は非常に少ない.われわれは,術前に出血性脳梗塞を合併したIEに対し,待機的開心術を行ったところ,術後SDHを発症したきわめてまれな症例を経験した.

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はじめに われわれは弓部大動脈瘤,解離性下行大動脈瘤および動脈管開存症(PDA)を合併した66歳の患者に対し,まず上行大動脈経由で胸部ステントグラフト挿入術(TEVAR)を施行し,引き続き全弓部人工血管置換術(total arch replacement:TAR)および動脈管閉鎖術を行って良好な結果を得たので報告する.

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はじめに 心大血管手術中の急性大動脈解離はカニューレ挿入,遮断を契機に生じ,ただちに対処を要し,処置を施しても救命できない場合がある.本例はB型解離慢性期に胸腹部領域の瘤拡大に対し人工血管置換を施行した.術中に逆行性解離を生じ,近位下行大動脈で偽腔が破裂した.縫合・圧迫で仮止血を行い,ステントグラフト(SG)を内挿し完全な止血を得た.透視装置がない手術室でエコーガイド下にSGの位置決めと展開を行い,良好な結果を得たので報告する.

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はじめに 遠位弓部の大動脈瘤に対する弓部大動脈人工血管置換術は,末梢側吻合部の位置が深い場合,手技としての難易度が高く,侵襲も大きいものとなる.末梢側吻合を容易にするための手段として左開胸を行う方法もあるが,正中切開に比較して周術期死亡率が上昇するとの報告1)もあり,可能であれば正中切開が望ましいと考えられる.近年では血管内治療の発展により,frozen elephant trunk (FET)を用いた弓部置換やdebranch手技を併用した胸部ステントグラフト挿入術(thoracic endovascular aortic repair :TEVAR)が行われ,より低侵襲に遠位弓部瘤治療が可能となってきている.しかしながら,特にFETではステント留置長が長くなるため,脊髄虚血による対麻痺リスクの上昇などが懸念されている.われわれは,人工血管Lupiae(テルモ社,東京)を用いた弓部置換術とTEVARにより,二期的に遠位弓部瘤治療を行い良好な成績を得た2例を経験したので報告する.

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はじめに 右側大動脈弓に伴うKommerell憩室は比較的まれな疾患である.鎖骨下動脈起始異常を合併しないKommerell憩室により食道狭窄症状を呈した症例を経験したので報告する.

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はじめに 感染性心内膜炎は細菌集簇による弁尖・弁輪部の破壊を生じ,しばしば弁形成術・弁置換術を必要とする疾患である.破壊された弁輪の脆弱な組織に人工弁を縫合する場合,これが術後縫合不全の原因の一つとなる.われわれは弁尖の破壊に加え大動脈弁下膿瘍を形成した患者に対し,自己心膜を用いて膿瘍腔閉鎖と弁輪形成を行った症例を経験したので報告する.

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はじめに 気管支動脈瘤は非常にまれであると報告されているが1~3),経過観察中に破裂して気管支内穿破から気道出血,あるいは縦隔内出血により重篤な状態に陥る場合がある.したがって,的確な診断と,瘤径・部位により適切な治療が重要である.われわれは,胸部不快感を主訴とした気管支動脈瘤を経験したので報告する.

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はじめに 静脈内平滑筋腫症(intravenous leiomyomatosis)は子宮に好発するまれな平滑筋腫であり,静脈血管腔内での平滑筋細胞の増殖を特徴とし,組織学的には良性腫瘍に分類される.しかしながら,まれに骨盤内から腸骨静脈,卵巣静脈,腎静脈を経由して連続性に下大静脈から心腔内へ進展し,三尖弁嵌頓や肺塞栓などの致死的合併症を起こす危険がある1~3).われわれは,巨大な子宮原発巣から複数の静脈経路で下大静脈/右心系へ進展した静脈内平滑筋腫症に対し,二期的手術を行ったので報告する.

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はじめに 高度な漏斗胸患者では胸骨正中切開が困難となる.われわれは,高度漏斗胸を伴う心房中隔欠損症(ASD)の1例を経験したので報告する.

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はじめに 縦隔内甲状腺腫は腫瘍全体あるいは50%以上が縦隔内に存在するものである1).2014年の日本胸部外科学会の報告では,本邦の縦隔腫瘍切除例4,685例中75例(1.6%)と少数である2).一方,緩徐に発育するため無症状の場合が多いが,巨大化すると気道を圧排し呼吸不全をきたす可能性がある.われわれは呼吸困難で発見され,緊急気道管理の後に手術を行った巨大縦隔内甲状腺腫の1手術例を経験した.

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はじめに 気管支動脈瘤はまれな疾患であり,縦隔型と肺内型に分類される.われわれは,気管支拡張症に伴う喀血を契機に偶然発見された縦隔型気管支動脈瘤(bronchial artery aneurysm:BAA)の1例を経験したので報告する.

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およそ10年前のある午後,食道癌手術担当の麻酔科医から緊急電話がかかった.「大至急きてくれ!」.

連載 行ってきました! 海外留学 (第44回)

米国ピッツバーグ大学 田根 慎也
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筆者は2015年11月より2年間,米国ピッツバーグ大学心肺移植外科教室に研究員として留学した.ピッツバーグは東海岸のペンシルベニア州にあり,ワシントンDC,ニューヨーク,ナイアガラの滝といった観光名所にも車でいける距離にある.また,ちょうど青森と同じ緯度にあり,冬の寒さはとても厳しいところである.かつては鉄鋼生産の中心地として栄えたが,1970年代のオイルショック,1980年代の安価な輸入鉄鋼が原因で,一時期人口減少が著しくなり衰退した.しかし近年,医療,ロボット工学などを中心とする学術都市として再生している.

連載 胸部外科発展の軌跡―パイオニアの原著と足跡を綴る (第29回)

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発症とともに拡大を続ける大動脈瘤は高齢者に多発し,周辺臓器の圧迫症状をきたすまでほとんど無症状で,診断・治療は遅れがちとなる.放置すれば大動脈瘤は拡大とともに破裂して致命的となるが,今日では手術成績が目を瞠る向上をみせ,その治療は著しく進展した1~3).

胸部外科医の散歩道

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定年を前にしてやっと気がついた二つのお話を紹介したいと思います.

基本情報

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胸部外科
71巻5号 (2018年5月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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