画像診断 43巻12号 (2023年9月発行)

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　腸炎・腹膜炎を読み解く ―病態と画像所見の対比

序説谷掛　雅人 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1081-1081

PDF(3181KB)

有料閲覧

文献概要を表示

「腹部救急疾患の画像診断は，他の分野に比べて遅れているのではないだろうか？」そう思うようになったのは，腹膜炎を小腸型感染性腸炎と2例続けて間違い，この鑑別点を調べていた時のことでした.

急性消化管疾患の画像所見とその病態谷掛　雅人 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1082-1092

PDF(2770KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 急性消化管疾患の多くの画像所見は非特異的であり，鑑別を進めるためには何が起こっているのか（病態）を考慮することが有用である．

● 均一に造影される壁肥厚は，充血状態と考えられる．腹膜炎，小腸型感染性腸炎，その他，血管透過性亢進状態で認められる．

● 層構造をもつ壁肥厚（target sign）は浮腫を反映，主に静脈性，炎症性といった機序によって生じる．どの機序によるものかを考えながら鑑別を進めるとよい．

● 菲薄化は腸管虚血，低酸素障害による腸管壁組織の脱落を反映している．

● 腸管気腫は良性と致死性があり，虚血所見の有無が鑑別点となる．急性上腸間膜動脈閉塞と非閉塞性腸管虚血では出現のタイミングが異なる．

腹膜の解剖と画像衣袋　健司 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1093-1105

PDF(5692KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 腹腔内は腹膜に覆われた大網・腸間膜などの脂肪で満たされている．互いの境界を画像で認識することは困難だが，支配血管など解剖学的知識でこれら脂肪の由来を推測することは可能だろう．

● 発生の過程で，膵十二指腸や上行・下行結腸間膜の臓側腹膜の一部は体壁の壁側腹膜と癒合して癒合筋膜となる．しかし，新たな厚い膜ができるのではなく，実態は血管に乏しい比較的疎な結合組織であり，外科的に切離しやすい部位でもある．

● 腹膜下脂肪層は脈管の交通路であり，腸間膜内には腸管の栄養血管である上腸間膜動脈が走行し，前上腹壁では門脈系と体循環系の連絡路となる．

● 腹膜の翻転部には，上は横隔膜下腔・下はDouglas窩まで，Morrison窩，傍十二指腸陥凹，上下傍結腸溝など様々な窪みがみられる．

画像診断医が知っておくべき感染性腸炎の臨床像大川　清孝 , 佐野　弘治 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1106-1114

PDF(2124KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 感染性腸炎の画像診断を行うには，その病態を理解しておくことが重要である．

● 感染性腸炎は，下痢の性状（水様便，血便，粘液便）と，悪心・嘔吐，発熱，腹痛，テネスムスなどの症状から，小腸型・大腸型・穿通型に分類すると，病態，原因微生物，症状，潜伏期，抗菌薬治療の必要性などを系統的に理解することが可能になる．

● 小腸型の罹患部位は十二指腸～空腸である．小腸型は微生物や毒素による腸管からの分泌亢進のために，大量の水様下痢を生じる．組織の破壊を伴わないため，発熱や腹痛はあっても軽度である．上部消化管症状である悪心・嘔吐を伴う．

● 大腸型の罹患部位は大腸または下部回腸である．微生物や毒素の組織侵襲による炎症のため滲出性下痢が生じる．組織の破壊を伴うため，発熱，腹痛，血便，粘液便，テネスムスなどの症状を呈する．

● 穿通型の罹患部位は回盲部である．消化器症状よりも発熱，菌血症などの全身症状が全面に出るため，穿通型と呼ばれる．発熱以外に，腹痛や下痢を来す．

感染性腸炎の画像診断 ―発症機序・病態を踏まえたアプローチ― 影山　咲子 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1115-1124

PDF(1840KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 感染性腸炎は，原因となる病原微生物により発症機序や病態が異なる．

● 下痢や全身症状などの臨床症状を考慮した，小腸型・大腸型・穿通型の分類は，発症機序や罹患腸管との親和性が高く，病原微生物をある程度推定できる．

● 画像所見は非特異的だが，罹患腸管の分布や壁肥厚の程度，リンパ節腫大の有無などが鑑別診断に有用である．

● 薬剤や免疫低下が関連する感染性腸炎では，食事歴や画像所見だけでなく，基礎疾患や薬剤使用歴の確認も診断に必要である．

感染性腸炎と鑑別を要する腸炎の画像診断中井　雄大 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1125-1141

PDF(3729KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 感染性腸炎と非感染性腸炎の画像所見にはオーバーラップが多い．

● どのような状況下での発症か，他部位に所見がないか，総合的な評価が重要である．

● 十二指腸や近位空腸の病変，全腸管に及ぶ病変，多巣性の病変，再発性の病変，消化管壁内出血を伴う病変，動静脈に閉塞がないにもかかわらず腸間膜の脂肪織濃度上昇や腹水が目立つ場合には，少し立ち止まって非感染性腸炎も考えてみたい．

非閉塞性腸管虚血（NOMI）の画像診断 ―壁内気腫のCT診断を中心として― 豊口　裕樹 , 紺野　義浩 , 平賀　利匡 , 菅井　康大 , 滝澤　一穂 , 柴田　亜希子 , 鹿戸　将史 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1142-1152

PDF(1456KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 壁内気腫は“良性”の気腫（腸管嚢胞様気腫症）との鑑別が必要であり，表のように鑑別する．

● 造影不良域の診断のコツは，造影されている腸管をみて「腸管は造影されています」と診断するのではなく，一部しかないかもしれない造影不良域をみつけ出すことである．

● “壊死かどうか”から入ると，混乱する．壊死かどうかは，NOMIと診断した上での，程度の問題である．

腹膜炎と鑑別診断の画像診断井上　明星 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1153-1163

PDF(4475KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 腹膜炎の画像所見として，血流の増加，血管透過性の亢進および組織液の増加を反映した平滑な腹膜肥厚，腹膜の造影効果亢進，脂肪織濃度上昇，不自然な腹水に加えて，消化管蠕動運動の低下が挙げられる．

● 画像検査の重要な役割は，腹膜炎の原因疾患の同定であるが，病変の広がりを診断することも大切である．

● 腹膜炎の鑑別診断には結核性腹膜炎，原発性あるいは続発性の腹膜腫瘍が含まれ，これらの疾患では腹膜は粒状，結節状の肥厚をきたし，網目状や網状の脂肪織濃度上昇を呈する．

● 特発性細菌性腹膜炎やA群溶血性連鎖球菌による原発性腹膜炎などでは，画像検査で原因を指摘できないため，腹水検査が診断に必須である．

骨盤内炎症性疾患（PID）の画像診断高濱　潤子 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1164-1174

PDF(4511KB)

有料閲覧

文献概要を表示

● 骨盤内炎症性疾患（PID）の画像所見は骨盤内脂肪織混濁や子宮周囲靱帯（仙骨子宮靱帯など）の肥厚像であり，非特異的である．

● 子宮内膜症はPIDのリスクとなり，内膜症性嚢胞に感染を合併した場合はしばしば診断が難しい．

すとらびすむす

メタバースの時代は来るのか？渡邉　嘉之 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1077-1077

PDF(1329KB)

有料閲覧

文献概要を表示

メタバースとは，インターネット上に構築された3次元の仮想空間とされ，仮想現実空間内で人々が交流したり，経済活動も行えるようになることが期待されている．

画像診断と病理

心臓限局性サルコイドーシス伊藤　絵 , 石田　正樹 , 佐久間　肇 , 伊熊　宏樹 , 森脇　啓至 , 今中－吉田　恭子 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1078-1079

PDF(1164KB)

有料閲覧

文献概要を表示

50歳台，男性．持続性心室頻拍にて入院．冠動脈造影では異常を認めなかった．

ここが知りたい！

画像診断2023年5月号特集「唾液腺・甲状腺をきわめる」田中　史根 , 加藤　博基 , 宮坂　祐輔 , 内匠　浩二 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1176-1179

PDF(3149KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Q1 悪性腫瘍群ではその不均一性のためか，ADC・TBF値のバラツキが強く，診断の難しさを物語っていると思いました．ADC，TBFのヒストグラムパラメータの中で，特に悪性腫瘍の診断に有用なものを教えてください．

Q2 Sjögren症候群，若年性反復性耳下腺炎，線維素性唾液管炎の導管拡張パターンは異なるとのことですが，所見が混在した場合はどのように鑑別したらよいでしょうか？

Q3 小唾液腺腫瘍において，腺様嚢胞癌と粘表皮癌の頻度が高いことをご教示いただきました．この組織型の違い（および粘表皮癌における悪性度の違い）によるマネジメントの違いや，それを踏まえて画像診断レポートに求められる役割について，知っておくべきことがあればご教示ください．

Q4 甲状腺偶発腫についてACRのwhite paperを提示されていましたが，相当な数に超音波検査を勧めることになってしまいそうです．年齢的な制限など，先生のお考えが知りたいです．また，超音波検査を勧めた場合，超音波検査ではどの程度の頻度で経過観察すべきなのでしょうか？あるいは，どのような所見があると細胞診に進むのでしょうか？

Picked-up Knowledge from Foreign Journals

PI-RADS以外もある！泌尿器領域のスコアリングシステム髙橋　哲 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1180-1182

PDF(4896KB)

有料閲覧

文献概要を表示

・MRI clear cell likelihood score①：有用性と読影者間一致率の検討

・MRI clear cell likelihood score②：多施設検討

・前立腺癌再発評価におけるPI-RRの有用性

・高画質でないとPI-RADS評価の精度が下がる

Case of the Month

Case of October 齋藤　亜矢子 , 久保　武 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1183-1183

PDF(382KB)

有料閲覧

文献概要を表示

70歳台，男性．現病歴：近医の定期採血で，肝胆道系酵素上昇を認めた．腹部超音波検査で胆管拡張と胆嚢腫大を指摘され，紹介受診した．

The Key to Case of August 太田　理恵 , 山下　直生 , 久保　武 , 山城　大泰 , 森井　奈央 , 金森　直美 , 住吉　真治 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1184-1186

PDF(8535KB)

有料閲覧

文献概要を表示

10歳台後半，女性．主訴：左乳房腫瘤．現病歴：上記を主訴に前医を受診．増大傾向にあるため，精査加療目的に当院紹介となった．

続General Radiology診断演習

Silent minority 子安　翔 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1187-1190

PDF(1853KB)

有料閲覧

文献概要を表示

50歳台，男性．検診異常の精査

読影レポートLesson

血管編「大動脈解離」縄田　晋太郎 , 小川　普久 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1192-1196

PDF(9166KB)

有料閲覧

文献概要を表示

大動脈解離とは，“大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し，大動脈の走行に沿ってある長さをもち2腔になった状態”と定義され，長さは少なくとも1～2cmとされる．

Refresher Course

新型コロナ後遺症の画像診断 ―循環器領域のコロナ後遺症について知る― 相川　忠夫 , 真鍋　徳子 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1198-1203

PDF(8274KB)

有料閲覧

文献概要を表示

新型コロナウイルス感染症が軽快した後にコロナ後遺症（罹患後症状）が続く患者が一定数存在するが，倦怠感や息切れ，胸痛，動悸など循環器疾患でみられる症状が続くこともよくある．しかし，その診断法は確立されていないため，一般的な検査で異常がなく不定愁訴として片付けられてしまうこともある．一方，感染前は無症候性であった循環器疾患が感染後に顕在化する場合があり，これらの病態の除外診断も重要である．本稿では，循環器領域のコロナ後遺症における画像診断の有用性について概説，症例提示する．

------------

目次 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1074-1075

PDF(131KB)

フリーアクセス

英文目次 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1076-1076

PDF(210KB)

フリーアクセス

編集顧問・編集委員 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1080-1080

PDF(277KB)

フリーアクセス

Information 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1175-1175

PDF(157KB)

フリーアクセス

写真一覧 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1204-1205

PDF(346KB)

フリーアクセス

Back Numbers 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1206-1207

PDF(395KB)

フリーアクセス

奥付 43巻12号 , 2023年9月 , pp.1208-1208

PDF(374KB)

フリーアクセス

基本情報

画像診断
43巻12号
(2023年9月発行)

電子版ISSN：2432-1281 印刷版ISSN：0285-0524 Gakken

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
2月24日～3月2日
)

第1位 The key to case of January 矢嶋諒,梅岡成章画像診断 45巻 3号 pp. 344-347 (2025年2月25日) Gakken
第2位 Case of March 池島健吾,加藤大翼,栗原泰之,藤野貴久画像診断 45巻 3号 pp. 343-343 (2025年2月25日) Gakken
第3位 1. 冠動脈CTのレポートの書き方　1. 冠動脈狭窄：冠動脈CTレポートの基本的な書き方富澤信夫画像診断 45巻 3号 pp. 254-255 (2025年2月25日) Gakken
第4位 1. 冠動脈CTのレポートの書き方　2. 冠動脈プラーク：CTによる冠動脈高リスクプラーク診断富澤信夫画像診断 45巻 3号 pp. 256-257 (2025年2月25日) Gakken
第5位 1. 冠動脈CTのレポートの書き方　3. 冠動脈石灰化：高度石灰化症例の評価富澤信夫画像診断 45巻 3号 pp. 258-259 (2025年2月25日) Gakken
第6位 1. 冠動脈CTのレポートの書き方　5. 冠動脈起始異常：注意すべき冠動脈走行の破格富澤信夫画像診断 45巻 3号 pp. 262-263 (2025年2月25日) Gakken
第7位 3. 心臓MRI：心筋症の鑑別のレポートの書き方　1. 肥大型心筋症：読影レポート尾田済太郎画像診断 45巻 3号 pp. 272-273 (2025年2月25日) Gakken
第8位 1. 冠動脈CTのレポートの書き方　4. 冠動脈中等度狭窄：シミュレーションによる虚血評価富澤信夫画像診断 45巻 3号 pp. 260-261 (2025年2月25日) Gakken
第9位 2. 不整脈治療のCTのレポートの書き方　1. 心房細動アブレーション術前CTの読影ポイント加藤真吾画像診断 45巻 3号 pp. 264-265 (2025年2月25日) Gakken
第10位 2. 不整脈治療のCTのレポートの書き方　2. 肺静脈の解剖学的変異：CTによる評価加藤真吾画像診断 45巻 3号 pp. 266-267 (2025年2月25日) Gakken

投稿規定