日本母子看護学会誌 3巻2号 (2009年10月発行)

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特別寄稿

思春期の性の諸問題と性教育のあり方齋藤　益子 3巻2号 , 2009年10月 , pp.1-6

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はじめに

　筆者は平成4年から小学校・高校での性教育に従事し、平成12年から大田区を中心に中学校での性に関する健康教育を行ってきた。そして平成18年度から東京都教員研修センターの事業として卒後10年以上の小・中・高校の教員を対象にした研修「健康教育Ⅱ」の企画・運営を担当し、日本思春期学会において「性教育のあり方検討委員会」の委員長を務め、性教育の推進とそのあり方について検討してきた。思春期は子どもから大人への移行期であるが、様々な問題に遭遇する時期でもある。今回、これらの検討の過程から考えた今日の思春期の性の諸問題と性教育のあり方について述べてみたい。

原著

女性の思う「子どもの意味」が対児感情に与える影響武田　江里子 , 弓削　美鈴 3巻2号 , 2009年10月 , pp.15-22

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目的

　女性の思う「子どもの意味」と社会特性（属性）および子どもに対する感情の関連を検証することである。

対象と方法

　住民基本台帳から無作為に選出した25歳以上の女性466名に自記式質問紙（調査項目：属性、「子どもの意味」、対児感情）を郵送し、有効な返信の得られた164名を対象とした。

結果

　若い年代では、子どもに個人的意味づけをし、年代があがるほど社会的意味づけをする傾向がみられた。対児感情は年代があがるほど接近得点が高く、回避得点・拮抗指数が低くなる傾向がみられた。「子どもの意味」と対児感情の関連は年代によって異なり、それぞれの年代の社会的環境の影響が考えられた。

結論

　若い年代では、子育てを通して自身の成長を明らかにしていくことが対児感情を高めることに繋がる可能性が示唆された。様々な年代が混在する家族に対する子育て支援の際は、年代による相違を考慮し支援することが必要であり、ひとつの価値観にこだわらず、流動性をもたせ広い視点からの支援が望まれる。

妊孕力の低下年齢の認識と妊娠決定尺度との関連山﨑　圭子 , 齋藤　益子 3巻2号 , 2009年10月 , pp.23-31

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目的

　本研究は、妊孕力の低下年齢の認識と、妊娠を決定する際の考慮理由から求めた妊娠決定尺度との関連について明らかにすることを目的としている。

対象と方法

　2007年7月から9月に妊婦健康診査を受けた初産婦175名を対象に、自記式の調査票を用いた郵送調査を実施した。妊娠を決定する際の考慮理由に対して、探索的に主因子法・プロマックス回転による因子分析を行い、「妊娠決定尺度」を作成し、尺度構成法で解析を行った。

結果

　対象者の平均年齢は30.0歳、就業者の割合は50.3％であった。妊孕力の低下年齢の正解率は53.7％で、40歳以降と回答しているものは25.1％であった。妊娠決定尺度として＜条件・環境＞＜社会的価値＞＜自己的価値＞＜家族観＞＜世代継承＞の5つの下位尺度が抽出された。妊孕力の低下年齢の知識の有無と妊娠決定尺度との間には統計的な関連は認められなかった。

結論

　初産婦は、妊孕力の低下年齢について正しく認識しておらず、妊孕力の低下年齢に関する知識は、妊娠・出産の決定に反映されていないことが明らかとなった。妊娠決定尺度の下位尺度得点で最も高かったのは＜自己的価値＞で、初産婦は妊娠・出産・育児の実現や、子どもそのものの存在に対して精神的に高い価値を持っていることが明らかとなった。また、下位尺度間の相関には、就労が影響していることが示唆された。

妊娠・産褥期の自殺及び自殺企図事例から学ぶ支援スタッフのかかわり中板　育美 , 佐野　信也 3巻2号 , 2009年10月 , pp.33-41

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目的

　妊娠・産褥期に精神科関連の諸問題を呈した女性への保健師の支援を振り返り、支援スタッフに求められる実効的な関与のあり方を検討する。

対象と方法

　保健師活動に精通した経験15年以上の保健師が、妊娠・産褥期の深刻な自殺企図事例に関与した保健師が所属する機関に出向いてインタビューを実施し（2007.9月〜2008.1月）、結果を多面的に分析した。

結果

　自殺既遂者7名、自殺企図後昏睡状態者1名の情報を得た。8例中7例はうつ病の既往や妊娠中の抑うつ症状を認め、6例が精神科受診をしていた。全例に自殺企図前に危機のサインが確認された。望まない妊娠が5例あり、不妊治療成功による出産が2例あった。妊娠・産褥期の家族等の支持体制が不十分な例が多く、そのほとんどに親族との強い葛藤関係があった。産後の実家への里帰りは4例が忌避したが、結果的には7例が不規則な里帰りになり、予定通りの産後にはならなかった。こうした家族背景が児に対する不適切な養育・虐待要因となっているものが5例であった。

結論

　1）妊娠・産褥期に現れる母の精神障害の特徴を理解し、特に精神疾患の既往を持つ場合や望まない妊娠・長期間里帰りの情報を得た場合は行政区を越えた関与を意識する。2）地域での家族支援を担う保健師は、産科、小児科、精神科との情報共有、治療環境の評価を行い子どもの安全な環境を保てるよう整備する。

基本情報

日本母子看護学会誌
3巻2号
(2009年10月発行)

電子版ISSN：2758-8092 印刷版ISSN：1882-2495 日本母子看護学会

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