Frontiers in Dry Eye 16巻1号 (2021年5月)

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坪田 本日は,大学発のベンチャー企業を立ち上げ,新規ドライアイ治療薬創薬を目指す塩田先生をお招きし,これまでの研究成果や臨床応用の可能性についてお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。塩田 こちらこそ,よろしくお願いします。坪田 塩田先生はこれまで,下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide:PACAP)というペプチドが涙液分泌を促進することを明らかにされており,ドライアイの原因解明と創薬への展開が期待されているところです。そこでまずは,PACAPについての解説をお願いできますでしょうか。

寄稿文:COVID-19の影響 ―現状とこれからの診療について―

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新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は2021年1月現在,その猛威は衰えるところを知らずに感染拡大中である1)。2020年春の感染第1波においては,各国で都市封鎖(ロックダウン)が行われ,全世界の社会・経済が極めて大きな影響を受けたのみならず,医療も甚大な影響を受けた。世界中で電子媒体,紙媒体など合わせて膨大な数のCOVID-19と医療に関する情報が次から次に発信されている。眼科においても国内外の学会組織から感染拡大時の臨床における指針や対応策などが提言されており,臨床における知見などが続々と論文報告されている。眼科臨床においては,緊急症例以外すべての手術や外来診療が余儀なく中止,延期となった国や地域も多かった。緊急ではないため,あるいは感染を恐れて来院できなかったために,定期的な診察を受けることができなかった慢性眼科疾患の患者も多かった。「KEY WORDS」ドライアイ,ポストコロナ

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近年のIT技術革新により,さまざまなことをパソコンやスマートフォンで代用できるようになった。2008年度(平成20年度)の厚生労働省の調査によると,この10年間で1日にパソコンなどの画面をみて仕事[Visual display terminal(VDT)作業]をする人は約2倍になったという報告がある1)。VDT作業とドライアイの関係が密接であることは今までの我々の研究でも報告しており,VDT作業時間が8時間以上と長くなると,ドライアイの有病率が高くなることがわかってきた2)。2020年4月7日,安倍新型コロナウイルス感染症対策本部長(当時内閣総理大臣)が新型インフルエンザ等特別措置法第32条第1項に基づき緊急事態宣言を発令し,テレワークを導入および推奨した関係で現在もテレワークを維持している企業が多くある。本稿においては,「気づいて!涙液トラブル啓発委員会」(委員:堀裕一先生,猪俣武範先生,山口剛史先生,著者)で実施した新型コロナウイルス(コロナ)禍における緊急事態宣言下のテレワークが眼に与える影響をインターネット調査にて明らかにしたので報告する。方法として,株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシーに登録されている全国20〜69歳までの男女(各年代別に100名ずつ)合計1,000名(平均年齢44.7歳)に対して,2020年6月23〜25日にわたり調査結果を研究発表に使用すると同意取得の上,アンケートを実施した。集計時の結果は2020年6月1日時の総務省の人口推計母集団によりウェイトをかけ,統計解析を実施した(表1)。「KEY WORDS」コロナウイルス禍,ドライアイ,テレワーク,QOL,気づいて!涙液トラブル啓発委員会

総説

涙道とドライアイ 井上 康
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涙液は涙腺から分泌された後,眼表面,上下の涙液メニスカスを経て涙点から始まる涙道を通じて排出される。涙液量は分泌量と排出量のバランスにより決定される。排出量は分泌量の増減に対しある程度の代償作用はあると考えられるが,その機能の低下もしくは分泌の亢進により流涙症を生じ,分泌量の低下により涙液減少型ドライアイを生じる。したがって,涙液量に関する限り,涙液減少型ドライアイと涙道閉塞に伴う流涙症は同一線上にある疾患と考えることができる(図1)1)。涙液減少型ドライアイの対極には涙道閉塞を含む導涙機能の喪失による流涙症が位置することになる。これらの間には涙液量の異常はないが,涙液層の不安定性もしくはマイボーム腺機能不全による油層異常のための涙液層破壊時間(tear film break-up time:BUT)短縮型ドライアイと診断される症例が存在する。一方で,中間に位置する症例ではわずかな導涙機能の低下や反射分泌による流涙を自覚することもあり,環境の変化などによってドライアイ,流涙症のいずれにも転じ得る可能性もある。ドライアイの診療においてはこれらを全体として評価するための知識を網羅することが必要とされる。筆者の専門は涙道手術,白内障を中心とした前眼部手術であり,ドライアイに関しては門外漢である。しかし,前記のような事情があるため涙道とドライアイの関係について長らく考える立場にあった。これまでの経験がドライアイ診療および流涙症診療の双方に役立つことを願っている。

連載 涙が出る料理

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筆者が本稿を執筆しているのは,冬真っ盛りの師走。「冬はつとめて」と枕草子にはあるが,冬の早朝の京都で凛とした冷たい空気を感じる時季になると,筆者はある食べ物を思い出す。それは,おろしそばである。京都の銀閣寺道に鎰富弘(かぎとみひろ)(かぎ富)という蕎麦屋があり,筆者はその店のおろしそばが大好物で,子供の頃から30年以上通い続けていたのだが,非常に残念なことに2019年に閉店してしまった。かぎ富のおろしそばは,店で飲む生ビールのジョッキのようにきんと冷やした器に,冷たい手打ちのそばとつゆが入っており,その上に刻み葱,海苔,大根おろしがのっているというシンプルな一品である(図1)。大根おろしをつゆに溶き,それにそばをよくつけて勢いよくすすると,大根の鋭く軽やかな辛味が口の中に広がると同時に大根の瑞々しい香りが鼻に抜けて鼻の奥がツーンと痛くなり,じわりと涙がにじむ。筆者は涙を拭いながらも,大根の美味しさを口と鼻で堪能できる,このおろしそばが大好きであった。

TOPICS

第74回日本臨床眼科学会 前野 紗代
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・「症候性ドライアイ患者の点眼薬使用状況の解析:iPhoneアプリを用いた大規模臨床研究」赤崎安序,江口敦子,猪俣武範・「TS-1の眼障害発現時期に影響する因子:TS-1による眼障害スタディから」鎌尾知行,白石敦,山田昌和,TS-1スタディワーキンググループ

ドライアイベストリサーチアワード受賞論文解説

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2020年のドライアイリサーチアワードの選定は,この新型コロナウイルス禍のなかでもドライアイ研究は進んでいるのだという印象を改めて感じさせるもので,アワードへの申請の数も多く,またその高い研究内容も印象的であった。今回のベストアワード選定は,例年通りであれば日本臨床眼科学会の実際のセミナーのなかで研究者がその研究内容をプレゼンテーションし,それに対し数名の審査委員が投票で選ぶものであったが,2020年は臨床眼科学会自体がWEB開催であったこともあり,ベストアワード選定もWEBでの投票・選定となった。それにもかかわらず,研究発表もその弊害を感じさせない,いやいつもより臨場感は高いのではないかと思わせる3名のプレゼンテーションであった。そのなかで今回ご紹介するのは,2020年のドライアイリサーチアワードのベストアワードに選ばれた順天堂大学の猪俣武範先生である。

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ドライアイの症状は乾燥感のみならず,羞明,眼精疲労,視力低下など多岐にわたり,多様性と不均一性をもつ。そのため,不定愁訴とされ未治療のまま症状に苦しむドライアイ未診断者が多く存在する。本研究ではスマートフォンアプリケーション(スマホアプリ)によるクラウド型臨床研究を実施し,ドライアイ未診断者の特徴を解明した。4,454人の研究対象者のうち,53.8%(2,395人)がドライアイ未診断者として特定された。ドライアイ未診断者の特徴として,若年齢,男性,膠原病・精神疾患・眼手術歴の既往がないこと,コンタクトレンズ(CL)の装用経験がないことが明らかになった。スマホアプリによるドライアイ未診断者に対する早期の予防や介入に繋がる可能性がある。「KEY WORDS」モバイルヘルス,ビックデータ,ドライアイ,予防医療,予測医療,個別化医療

連載 ドライアイ外来最前線

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当院は多くの企業が集まる大阪市内有数のオフィス街にあり,患者さんはあらゆる世代の就労者が中心です。疾患別内訳では緑内障や網膜疾患が多数を占めていますが,問診で「VDT作業で眼が疲れる」と訴える患者さんが多く,調べてみるとドライアイを併発しているのはよくあることです。そこで患者さんには病状に応じて眼圧,視野,散瞳眼底検査などを行いますが,フルオレセン染色はほぼ全員に特に初診時は施行しています。口腔内乾燥などでシェーグレン症候群が疑われる場合にはシルマーテストも加えています。すると実際,ドライアイがみつかるケースは多く,受診者の約8割にドライアイの点眼薬を処方している現状です。近年のドライアイ診療は,点眼薬の選択肢が増えたことでブレイクアップパターン別の治療も可能となり,患者さんの症状改善に役立っていると実感しています。ジクアホソルナトリウム点眼液についていえば,点眼開始から2ヵ月ほどで涙液層破壊時間(tear film break-up time:BUT)が延長され,角膜の点状表層角膜症(superficial punctate keratopathy:SPK)が減少するなど肉眼的所見が改善し,半年以内には大半の患者さんが「調子がよくなった」といわれます。

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当院は1909(明治42)年に曽祖父が開業した眼科クリニックで,私で4代目院長となります。1世紀以上にわたって前橋の地に密着し,地域住民の眼の健康維持・増進に貢献してきました。そして2014年,私が4代目に就任したのを機に,前橋駅から徒歩5分の現在地に移転すると,埼玉県北部や栃木県足利市などから電車通院する患者さんが増え,待合室の顔触れはさらに多様となりつつあります。患者さんは全般的に高齢者が多い印象ですが,ドライアイの患者さんに限っていえば,いわゆる働き盛りの若年層も非常に多いです。さらに最近はスマートフォンやタブレット端末,ゲーム機器に触れる機会が増えた影響か,小学生でも「眼が乾く」と訴える患者さんの受診が目立ちます。実際,角膜を診ると傷を認めるケースも珍しくなく,今後IT化が進むにつれ,世代を超えてドライアイの患者さんは増えていくと思います。

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ドライアイ研究会会員数全国に706名(2021年3月現在)

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目次

奥付

基本情報

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Frontiers in Dry Eye
16巻1号 (2021年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-4263 メディカルレビュー社

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