総説
涙道とドライアイ
井上 康
1
1医療法人眼科康誠会井上眼科 院長
pp.19-22
発行日 2021年5月10日
Published Date 2021/5/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0042.16.01_0019-0022
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涙液は涙腺から分泌された後,眼表面,上下の涙液メニスカスを経て涙点から始まる涙道を通じて排出される。涙液量は分泌量と排出量のバランスにより決定される。排出量は分泌量の増減に対しある程度の代償作用はあると考えられるが,その機能の低下もしくは分泌の亢進により流涙症を生じ,分泌量の低下により涙液減少型ドライアイを生じる。したがって,涙液量に関する限り,涙液減少型ドライアイと涙道閉塞に伴う流涙症は同一線上にある疾患と考えることができる(図1)1)。涙液減少型ドライアイの対極には涙道閉塞を含む導涙機能の喪失による流涙症が位置することになる。これらの間には涙液量の異常はないが,涙液層の不安定性もしくはマイボーム腺機能不全による油層異常のための涙液層破壊時間(tear film break-up time:BUT)短縮型ドライアイと診断される症例が存在する。一方で,中間に位置する症例ではわずかな導涙機能の低下や反射分泌による流涙を自覚することもあり,環境の変化などによってドライアイ,流涙症のいずれにも転じ得る可能性もある。ドライアイの診療においてはこれらを全体として評価するための知識を網羅することが必要とされる。筆者の専門は涙道手術,白内障を中心とした前眼部手術であり,ドライアイに関しては門外漢である。しかし,前記のような事情があるため涙道とドライアイの関係について長らく考える立場にあった。これまでの経験がドライアイ診療および流涙症診療の双方に役立つことを願っている。
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