The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 54巻1号 (2017年1月)

特集 先端機器とリハビリテーション

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 近年ロボティクス,電気・磁気刺激,高性能なセンシング技術などを応用した先端機器が続々とリハビリテーションの世界へ登場してきている.リハビリテーションにおいてそれら先端機器がどのような可能性を秘めているのか,いずれ“tipping point”を超え,“disruptive technology”と評価されるような革新的変化をリハビリテーションにもたらすのか,興味と期待にあふれている.本特集では,先端機器の開発や活用について最前線で取り組まれている先生方に,現在地そして進むべき未来をお示しいただいた.本特集が,リハビリテーションの未来を切り開くための一助となることを期待したい.

▷ 担当:大高洋平,企画:編集委員会

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要旨

片麻痺上肢のリハビリテーション(以下,リハ)にロボットが広く利用されることが期待されている.ロボットは運動学習則のうち,特に強化学習に有利なツールであるが,日常生活活動(ADL)の転移(汎化)は十分でない.主な上肢リハ支援ロボットを比較検討した結果,企業による安定供給とランダム比較試験によるエビデンスの点で,Amadeo®,ArmeoPower®,InMotion ARM®,Bi-Manu-Track®,ReoGo®の5機種が有力である.一方,上肢ロボットリハ全体の効果は証明されているが,運動学習の観点から課題や制御そのものについての議論は不足している.今後,Human-Robot Interaction(HRI)分類などを利用した解析,ADLへの転移,企業の姿勢などが課題である.

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要旨

歩行練習アシスト(GEAR)は,脳卒中片麻痺患者が効率よく歩行を学習することを支援するロボットである.長下肢ロボットの膝関節モータが適切なタイミングで膝関節の屈曲・伸展を行うことにより,練習初期から最小介助で,過剰な代償動作なしに最終歩容類似の多数歩練習が可能となる.GEARの特徴は高フィードバック性と精緻な調整性であり,これらを適切に用いることにより運動学習を促すことができる.練習支援ロボットを効果的に利用するためには,運動学習の視点が重要である.適応を正しく判断し,適切なパラメータ調整やフィードバックの選択を行うことで,高い効果が得られると考えられる.

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要旨

新医療機器を健康保険適用とするためには,治験で効能・効果と安全性を検証し,医療機器製造販売承認を受ける必要性がある.HAL医療用下肢タイプは,医師主導治験において,希少神経筋8疾患を対象として,歩行運動療法の短期有効性と安全性が検証され,2016年9月から健康保険で使用可能となった.HAL使用の歩行運動療法(サイバニクス治療)は随意運動意図を装着者から生体電位として読み取りerrorless学習を達成するニューロリハビリテーションである.添付文書,適正使用ガイド,安全使用講習などを受けた医療従事者により長期有効性を含む使用成績調査が行われている.適応拡大治験が実施されており,今後複合療法も期待される.

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要旨

ウォークエイド®(以下,WA)は表面電極型の機能的電気刺激装置の1つであり,内蔵された傾きセンサーを用いて,遊脚期を中心に電気刺激を行い足関節を背屈させる.

慢性期脳卒中患者で下垂足を呈する患者に対し歩行能力が向上する(脳卒中ガイドライン2015・グレードB)といわれているが,わが国での無作為比較研究はこれまで行われていない.

われわれはこれまでの探索的臨床研究に基づき,慢性期脳卒中片麻痺患者で歩行が自立した患者を対象とし,WAを用いた歩行訓練を行うことで足関節機能や歩行能力が向上する可能性があると考えている.現在,多施設の無作為前向き比較研究を通常歩行訓練と比較して実施中である.

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要旨

筆者は,20年ほど前に,慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターにて,手関節装具を併用し,微細な随意筋電を信号源として,電気刺激で手指伸展をアシストするIVESを開発した.その後,前記センターと,国立病院機構村山医療センターで,神経科学研究や臨床的エビデンスを積み上げながら,約1,000万円かけて改良してきた.IVES装置は,知財マネジメント,医療機器としての製品化・薬機法承認・事業化をすでに2008年に達成した,純国産リハビリテーション医療機器のパイオニアであり,現在,年間約400台販売され,保険診療の中で広く活用されている.本稿においては,純国産医療機器開発の成功事例として,IVES装置の開発経緯や歴史,今後の展望について紹介する.

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要旨

微小重力により,宇宙飛行士の筋骨格系は著しい廃用性変化をきたす.火星探査では狭い宇宙船内での運動が必要となるが,従来の宇宙飛行士用の訓練装置は大型で使用が困難である.ハイブリッドトレーニング装置は,運動時に動作を妨げる拮抗筋を電気刺激して得られる筋収縮を運動抵抗とし,小型で自身の体内で運動抵抗を発生させることから,このような制約が大きい環境下での使用が可能である.

2009年,国際宇宙ステーション利用研究に採択され,本装置を1名の宇宙飛行士の非利き腕に装着し,週3回4週間,計12回のトレーニングを行い,廃用予防改善効果を検証した.同時に5年間の産学協同研究により,下肢用トレーニング装置が市販された.

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要旨

安全にバランス機能を測定するため,動的座位によるバランス計測装置を開発した.本装置は、座面反力(重心動揺)を検出する計測装置と,モータの回転により座面を側方傾斜させ一定の周期で座面を振動させる外乱刺激装置で構成される.3軸力学センサを用い,座面の圧力と圧力中心点を算出することが可能である.座位で計測を行うことで安全であり,下肢の影響を受けないため体幹バランス能力の評価にも使用できると考えている.現在までに行った基礎実験やフィールドワークでの活動,および本装置を用いた介入試験の結果と有用性,今後の活動について概説する.

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 新年おめでとうございます.昨年6月に理事長を拝名して初めての新春を迎え,改めて責任の重さを痛感しております.

 大正時代後期の小児の「療育」を源流とした日本のリハビリテーション医学・医療では,第2次世界大戦中は切断を中心とした青年が対象となりました.戦後の復興期には労働災害や交通事故による脊髄損傷など成人が,高度成長期を経て現在では高齢者が大きな比重を占めるに至っています.

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はじめに

 国立がん研究センターが公表した最新のがん5年生存率の全国推計値は,62.1%である(2006年〜2008年集計)1).5年生存率は毎回集計のたびに高くなっており,これはがんと診断されてからその後生きて生活していく人の数が増えているということを示している.

 “がんと共存”していく現代において,近年,がんを治す(短期的な合併症発症や死亡率低下)という視点に加えて,機能障害,心理面へのアプローチや日常生活,社会への復帰といった長期的・患者中心的な視点ももたれるようになってきた.

 そのような中で,がんそのものやがん治療によって生じるさまざまな障害に対してアプローチするリハビリテーション(以下,リハ)の重要性も広く認識されるようになってきた.リハでは,機能改善やADL向上,症状緩和,心理的サポートなどを図ることによって患者QOLの向上を目指すが,それだけでなく,身体機能を改善することで治療選択肢が広がったり,生存期間が延長したりという可能性についても示唆されている.

 がん医療の一つの柱として,リハが重要な役割をもつ場面は多いが,その中でエビデンスやシステムの確立など,注目されているトピックス,“cancer prehabilitation”と骨転移について,今後の課題も含めてまとめる.

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はじめに

 リオ2016オリンピック・パラリンピック競技大会が閉幕し,いよいよ2020年の東京開催に向けて,国内各地のスポーツ振興に関わるさまざまな計画が進んでいる.障がい者スポーツを取り巻く環境も大きく変わり,競技力強化対策だけでなく,多くの人々にとって身近な地域スポーツの一つとなることが期待されている.障がい者スポーツを「知る」,「体験する」機会が増えることは,障がい者と寄り添いながら共に生きる社会について考えるきっかけとなり,さらに,障がい者らにとって社会参加に向けた自立,自律への一歩を踏み出す後押しになると思われる.文部科学省による地域における障がい者スポーツの普及促進に関する中間整理では,障がい児のスポーツ活動推進を一方策とし,幼小児期から障がいの有無にかかわらず共にスポーツを楽しむことのできる環境を整備することを挙げている1).施設や指導者の問題もあるが,医療従事者が障がい児へのスポーツ導入を積極的に行うことも重要である.今回,障がい児の視点から障がい者スポーツ普及に向けた課題を挙げ,リハビリテーション科医の役割について検討する.

連載 参加してためになる国際会議・第1回【新連載】

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▶ 会議の概要

 リハビリテーション(以下,リハ)全般に関連する最大の国際会議.研究テーマをClinical Physical and Rehabilitation Medicine Sciences, Biosciences in Rehabilitation, Biomedical Rehabilitation Sciences and Engineering, Integrative Rehabilitation Sciences, Human Functioning Sciencesの5つの大きなカテゴリに分け,臨床研究をはじめとして生物科学,生体医学,生体工学,システム,診断,評価,教育などさまざまな分野ごとの基調講演,教育講演,シンポジウム,ワークショップなどが行われる.一般の参加者もポスターまたは口演形式で研究発表を行う.

 ISPRMは1999年にIRMA(International Rehabilitation Medicine Association)とIFPMR(International Federation of Physical Medicine and Rehabilitation)の統合により組織された.2014年からは毎年開催となり,世界をアジアオセアニア,ヨーロッパ中東アフリカ,南北アメリカの3つの地域に区分し,各地域で3年ごとに順に開催される.日本では前身であるIRMAが1997年に京都で開催されて以降開催されたことはなかったが,2015年のベルリンでの各国代表者会議において,2019年神戸での開催が決定した.世界中のリハ関連職種が参加し,例年5日間開催され延べ3,000名ほどの参加者がある.

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要旨

【目的】人工股関節全置換術(THA)にはさまざまな進入法があり,それぞれの手技の長短は明らかとされていない.そこで本研究では,anterolateral supine approach(AL-S)と小切開THAであるposterior approach(PA)との進入法の違いによる術後早期の身体機能の差異を明らかにすることを目的とした.

【方法】対象は初回THAのうち片側性変形性股関節症とし,これらをAL-S群とPA群に分けた.手術はすべて同一の術者が行い,術後は両群ともに同一のクリニカルパスを使用してリハビリテーションを実施した.検討項目は,筋力,関節可動域(ROM),移動能力,疼痛とした.

【結果】股関節外転,外旋,伸展筋力,および股関節伸展可動域においてAL-S群のほうがPA群より回復が早かった.その他の項目に関して差は認められなかった.

【結論】AL-SとPAとの進入法において,筋侵襲の違いによって,身体機能の差が生じており,これらを改善させるために進入法の特徴に合わせたリハビリテーションプログラムを確立することが必要である.

リハニュース【Topics】

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 ニューロリハビリテーション(以下,ニューロリハ)は,神経科学的な知見を基礎とする臨床医学の一領域である.神経科学(neuroscience)は,1980年代の後半から大きな発展を遂げており,多くの興味深い知見が得られているにもかかわらず,それが臨床医学に十分に活かされているとはいえない時代がつい最近まで続いていた.その1つの理由は,臨床医学の多くの分野はその基礎を病理学に置いており,脆弱因子→病理学的変化→発症といういわゆる古典医学的な発想からの展開で疾病への対応がなされ,また各領域の医師のトレーニングも,それに根ざしているからである.例えば筆者が長年専門としてきた小児を対象としたリハビリテーション(以下,小児リハ)の領域では,その基礎となる神経系の発達の理解は,神経科学的な知見という神経病理とは明らかに異なる知識が必要となる.そのことを知らずに小児リハの道を選んだ当初は,臨床で周産期に問題があった子供さんのフォローアップをしていても,目の前で進んでいる正常発達と異常発達の違いは,どういった神経科学的な基盤で進んでいるのかが理解できず,悩み続ける時期が長く続いた.

 要するに,周産期の脳の障害を引き起こすようなイベントがあっても,正常な運動発達を遂げるお子さんとそうでないお子さんがいることがなぜなのか,原始反射の残存や過敏性などの徴候があって将来的な運動の障害が予想されていても,それがどのような神経科学的な機序で異常な運動の増強につながっていくのかということなどを理解できていなかったのである.悩み続ける私にわずかな光を与えてくれたのは,Njiokiktjien著のPediatric Behavioural Neurology1)という書籍であった.これはたまたまNeuro Developmental Treatment(NDT)の8週間コースに参加するために1988年,ロンドンに滞在しているときに現地の書店で見つけたものだったが,当時の最新刊で,シナプス形成に根ざした神経系の発達が2歳までに非常にドラスティックな経過をたどることを解説してあり,私が臨床でみていた事象の理解を驚異的に進めることにつながった.

リハニュース【リハ医への期待】

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 日本作業療法士協会は2016年9月25日をもって,協会設立50周年を迎えることができた.これもひとえに日本リハビリテーション医学会をはじめ,患者さん,関係機関,関係団体様のご支援ご鞭撻のおかげと衷心より感謝している.また,今回はこのような貴重な機会をいただき心より感謝をする次第である.

 さて,最近の日本リハビリテーション医学会についての感想を述べる.それを一言で表現すると「日本リハビリテーション医学会は変わった」ということである.具体的には,第50回学術集会(水間正澄大会長)でのシンポジウム,第51回学術集会(才藤栄一大会長)でのリハビリテーション専門職への発表機会の拡充,第53回学術集会(久保俊一大会長)でのシンポジウムとさらなる発表機会の推進,そして日本リハビリテーション医学会への特任理事への招聘等々の取り組みである.その背景は存じえないが,チームを組む職種として感謝に堪えない.あらためて衷心より敬意を表したい.

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 第75回日本脳神経外科学会学術総会が2016年9月29日(木)〜10月1日(土)に,「進化する脳神経外科とぼくらの羅針盤」をテーマとして,福岡国際会議場ほかで開催されました.最近の神経科学の進歩や技術の革新,わが国の医療の現状を大海原に例え,荒波を航海していくことを目標として斬新な試みが導入されていました.

 最大の目玉は,「専攻医」「現役」「シニア」と年代別に「羅針盤セッション」が用意されたことです.「シニア」の先生方には苦笑された方もおられましたが,おおむね新たな試みとして好印象であったように思います.ほかに,一昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生の文化講演,「関連学会よりの誘い」として,日本リハビリテーション医学会をはじめ,日本老年医学会,日本認知症学会など他の関連学会からのメッセージ発信など,盛りだくさんなプログラムが用意されていました.

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The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
54巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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