感染と抗菌薬 24巻3号 (2021年9月)

特集 ポストコロナのための感染症レビュー ―動き出す社会に備えて

◉新型コロナ最新レビュー

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我が国では2021年4月にアルファ株が流行のほとんどを占め,5月からデルタ株が出現,7月時点でアルファ株から置き換わりつつある。アルファ株に対するCOVID-19ワクチンの予防効果は従来株と同等であるが,デルタ株に対しては接種後の血清による中和活性が29~83%減少し,発症予防効果が低下する可能性が示唆されている。しかし,実社会でのmRNAワクチンによる発症予防効果は,アルファ株で93.4%,デルタ株で87.9%という報告もあり,やや低下するものの一定の効果は維持されると考える。

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新型コロナウイルス感染症では患者のリスクや重症度に応じた薬物療法が行われる。①軽症から酸素需要のない肺炎症例:2種類の中和抗体を組み合わせた抗体カクテル療法は発症7日以内の投与で重症化抑制効果を示す。②酸素需要のない肺炎症例:抗ウイルス薬のレムデシビル(RDV)が投与できる。③酸素需要のある肺炎症例:ステロイド薬のデキサメタゾンは生命予後改善効果を示す。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブはRDVとの併用で回復期間を短縮する。IL-6阻害薬のトシリズマブはメタ解析で生命予後改善効果が示された。

◉ポストコロナの微生物検査―新型コロナ検査の最新知見と検査体制の在り方

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断には,遺伝子検査や抗原検査で病原体を検出することが必要である。感染者の中には無症状者も多く,感染の拡散防止のために当初から検査数の増加が求められていた。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査機器や試薬は多くのものが承認されたが,デルタ株など感染力が強いとされる変異株についても検査体制の構築が望まれる。また,ワクチン接種が急速に進んでおり,抗体検査の意義,活用法に関して確立することも必要である。

◉ポストコロナに備えるべき日常感染症―動向・対策・治療の基本まで

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インフルエンザは,インフルエンザウイルスによる呼吸器感染症であり,ウイルス性呼吸器感染症の中で治療法が確立された数少ない感染症である。インフルエンザウイルス感染症に対する治療薬は長年ノイラミニダーゼ阻害薬のみであったが,近年新たな機序を有する治療薬が開発され,治療適応の問題だけでなく,それらの治療薬をどのように使い分けるかも重要な課題である。そこで,本稿では季節性インフルエンザ感染症の診断と治療を中心に,現在までのエビデンスを含めて解説したい。

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肺炎球菌とインフルエンザ菌は次の共通する特徴を有する。①主に市中感染症の原因菌となる,②非侵襲性感染症(市中肺炎や耳鼻科感染症など)と侵襲性感染症(髄膜炎や敗血症など)に分類される,③侵襲性感染症は感染症法に基づく五類全数把握疾患に分類されている,④侵襲性感染症の年齢分布のピークは5歳未満の小児と65歳以上の高齢者の二峰性である,⑤小児において結合型ワクチンが定期接種に導入されている,⑥薬剤耐性菌の増加が懸念されている。

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RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus:RSV)感染症,連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌:GAS)感染症,そしてマイコプラズマ肺炎はいずれも小児の代表的な市中感染症である。ウィズコロナ,ポストコロナ時代において,これらの感染症は小児の新型コロナウイルス感染症との鑑別が重要になる。これらは三者三様で,好発年齢,重症度,臨床症状や病態が異なるため,正確なillness script(病気のシナリオ)を知り,年齢と関連付け理解することがポイントである。いずれも年齢を問わず感染するが,発症するのはRSVでは乳幼児期,GASでは3歳以降学童期,肺炎マイコプラズマでは学童期以降の児である。

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COVID-19(Coronavirus Infectious Disease 2019)の流行により,それ以外の様々な感染症の流行は抑えられ,麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎も例外ではないが,COVID-19の収束後,再度の流行,あるいは大流行の可能性もあり,今のうちに備えておかなければならない。本稿の4種の感染症の共通点としては,ワクチンで制圧が可能な疾患(Vaccine Preventable Diseases:VPD)であることである。そのため,対策の基本はワクチン接種の普及であるが,日本国内ではそれぞれの感染症ごとでその疫学やワクチン接種状況が異なるため,今一度整理した上で,ポストコロナに備えた対策を取る必要がある。

⑤結核・多剤耐性結核 露口 一成
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結核とCOVID-19はいずれも呼吸器を主な罹患臓器とする感染症であるが,結核は空気感染,COVID-19は飛沫感染と接触感染がメインである。COVID-19のまん延により,受診の差し控えが生じ結核の発見率が低下している可能性,医療資源がCOVID-19に振り向けられ結核対策が切り下げられている可能性などがある。COVID-19が収束した後には,活動性結核の迅速な発見とDOTによる治療の確実な遂行,積極的な潜在性結核感染治療などを柱とする結核対策を着実に実行していくべきである。

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感染と抗菌薬
24巻3号 (2021年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-0969 ヴァン メディカル

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