精神看護 23巻1号 (2020年1月)

特集 患者さんと医療者の意向が異なる時のコミュニケーション技法 LEAP

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一見荒唐無稽な「妄想」であっても、患者さんにしてみればそれは「現実」であり、自分では病気ではないと思っています。

そのため精神科の患者さんは、時として医療者側の治療提示を拒否します。

医療者が無理矢理医療を導入しようとすると、患者さんとの間に溝が生まれ、誤解や無用な軋轢が生じて、時に物理的な衝突、暴力に発展してしまうことがあります。

特に入院時や行動制限の際にこうした衝突は発生します。

LEAPは、精神科医療において患者さんと医療者の意向が違っている時に、両者の溝を埋めるためのコミュニケーション技術です。

傾聴、共感をベースに信頼関係を構築しながら、一致できる点を見出し、そのうえで双方にとってより良い目標を設定し、協働を目指していきます。

すでに院内でLEAPの研修も行っているという山梨県立北病院のスタッフの方々に教えていただきます。

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1.幻聴や妄想への向き合い方

 基本のキ

患者さんの意向に沿わないことを勧める私たちの仕事

 いきなりですが、皆さんはこんな患者さんの担当になったことはありませんか?

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(編集部より)

今回特集に協力していただいた山梨県立北病院のスタッフの方々が、LEAPの解説動画を制作してくださいました。患者さん側に立ってこの動画を見ると、LEAPを使った面接、使わなかった面接では受けとるメッセージは全く違うものになることがよくわかります。文字解説とは異なるわかりやすさがあります。ぜひご覧ください。

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1.病識の有無を問題にするより、治療につながるほうが優先ではないか?

信頼関係を重視する文化がある病院です

 山梨県立北病院(以下、当院)の紹介をさせていただきたいと思います。当院はスーパー救急病棟を2つ持ちながら、身体拘束が極めて少ない病院として、以前に『精神看護』にも特集していただいたことがあります。この原稿を執筆している時点で全病棟見渡しても拘束されている患者さんはいらっしゃいません。当院の場合は「拘束をなくすぞー!」とか、意気込んで特別な取り組みをしてきたわけではありません。ただ単に昔から拘束をしてこなかったという文化がそのまま引き継がれているだけと思われます。

 そうした当院の背景を考えると、今回紹介させていただくLEAPのような、患者さんとの信頼関係を重視するという文化がもともと当院にはあったのかなと感じています。

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2019年7月27日、新大阪丸ビル新館において、「ドゥルーズから見えてくるもの、現象学から見えてくるもの」と題されたトークイベントが開催されました(主催:塩飽海賊団)。上の写真に示す気鋭の研究者たちが、自閉症、ジル・ドゥルーズ、現象学について話すという。うーん。よくわからないけれど、何かが起こりそうではないですか……。

そんなわけで録音機ひとつ持って出かけてみたら、興奮するような新しい話ばかりの1時間! 理解できた範囲でまとめると、大枠は次のような内容でした。

1.統合失調症をベースに物を考える時代は終わって、自閉症についての知が精神医療をリードする時代になった。

2.「わけのわからない人」として遠巻きに観察する視点から、「自分と似た人」として協働する視点が求められるようになった。

3.これらはいずれも当事者研究がもたらした、全く新しい論点である。

では、新春1月号にふさわしく、時代の先端を行く対話をご堪能ください。

レポート

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ECTほど、やる病院とやらない病院が極端に分かれる治療もないでしょう。

やらない病院のスタッフであれば、ECTを見たことがない人も多いと思います。

編集部はECTを受けたというあるマスコミ関係者と知り合い、その話のディテールがあまりに興味深かったので、レポートしていただくことにしました。

いつもECTが身近にある医療者もそうでない医療者も、「受ける側」にとってはそれがどういう経験なのかを知ることは意味があるはずです。

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 空間に忽然と現れた巨大の布の物体。さまざまな質感をもつカラフルな布たちを、大崎晴地さん(美術家)がミシンで縫い合わせたものだ。大きさは7メートル四方。3層構造になっている。常に身体のどこかが布と触れ合うこの作品を、大崎さんは「世界一柔らかい建築」と言う。

 1層目の上を歩く人もいるし、各布に空いた穴を見つけて布の中に潜る人もいる。歩くとそこに自分の空間が立ち上がる。光が差し込む。上下の空間にいる人と、布越しに触れ合う。声をかけ合う。この不可思議なトンネルの探索に、子どもも大人も時を忘れて夢中になる。(編集部)

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 精神科外来での看護がいかに大事なのかを伝えたい! これを伝える術がないために、もやもやとしたフラストレーションをかかえたまま働いている人は多いのではないだろうか。

 新患の場合は、患者さんとは全く初対面で、信頼関係も何もできていない状況だ。短時間しかなくてもここでいかに信頼関係を構築し、治療環境を作れるかが重要になる。私は「この人になら話していいかな」と安心感を持ってもらえるように看護師が存在していることが、一番重要だと思っている。

連載 渡邉貴史の、「なんでもつないじゃいます」コーナー・1【新連載】

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RUN伴は何をつないでいるのか

 「RUN伴」とは、「認知症の人にやさしいまちを目指す地域をつなぎ、社会を変える大きな力にする」をミッションに、これまで認知症と接点がなかった地域住民と、認知症の人や家族、医療福祉関係者がランニングでタスキをつなぎ、日本全国を縦断するイベントです(ホームページ:https://runtomo.org/)。新聞やメディアで目にしたことがある人や、実際に見たことがある人もいるかもしれません。特定非営利活動法人「認知症フレンドシップクラブ」が2007年から運営を始めました。

 認知症の人と出会うきっかけがないと、地域の人々は認知症の人にマイナスイメージを持ってしまいがちになりますが、ランニング活動を通して、認知症の人やその関係者と身近に接することで、全員が地域で暮らす大切な隣人であると実感できます。

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 ときどき職場で、会議の司会進行を任されることがある。が、何度やっても居心地が悪い。言葉をどこに置いたらよいかわからないのだ。

 場を仕切る立場なのだから、きちんとした決断力を持って結論を出し、テンポよく議事を進行しなければならない。司会の発言があいまいでは、会議はただの意見交換会になってしまうだろう。そういう意味では、裁判官のように1つ1つの言葉に重しをつけながら、この場の総意に形を与えていくのが司会の役目だと言える。

連載 {発達障害当事者マンガ}私が経験している世界・4

引っ越しを決めた話 白井 風子

連載 精神科に入職して初めて働く時に、やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと・5

私が患者さんから学んだ「精神科仕事術」

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■精神科の勉強の仕方

▷患者さんとのかかわりを通して学ぶことからスタートしよう

 他科での看護経験はあるけれど精神科で働くのは初めて、という人から、「最初に何を勉強したらいいですか」と尋ねられることがたびたびあります。そんな時私は、「まずは患者さんから学ぶといいと思います」と伝えています。精神科では、自分を知り、人を理解していくプロセスがどこまでいってもケアにつながっていると私は思います。精神科は「こうすればこうなる」という答えがない、とよく言われますが、そうではなく、患者さんの数だけ答えや選択肢があるということです。

 精神科で働く時に、やみくもに精神疾患や精神科看護の本を読んで知識を得ても、先入観が入ってしまい、そこに1人の人として存在している患者さんを捉えにくくなってしまうこともあります。精神科はそこに存在している患者さん自身が最高の教科書です。まずは患者さんとの1つ1つのかかわりを通して学ぶことに専念すればよいと思います。

連載 患者さんが「怒った」事例をアセスメントして今日からの精神科看護に活かしたい・3

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記録には現れないもの

 その日の病棟は比較的穏やかでしたが、それでも日常業務はけっこう忙しく、看護師のNさんはその時間の一連の仕事を終えてようやくナースステーションに戻ってきました。一息ついて、記録に取りかかろうというところにやってきたのがAさんでした。Aさんは20代の男性です。統合失調症で入院していました。

 AさんはナースステーションでNさんと話した後に、ホールの椅子を蹴散らしながら部屋へ戻って行きました。静かだった病棟が騒然となり、他のチームの看護師も駆けつけましたが、病棟の看護師だけでは興奮しているAさんを止めることができません。医師を呼び、他病棟からの応援を要請して、Aさんは隔離室に入ることになりました。

連載 MSEを穴埋め式問題で練習してみよう・9【最終回】

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観察したこと、会話したこと②

場面#2 術後4日目、長谷川式簡易知能検査の実施

 術後4日が経ち、Aさんの経過は良好で、概日リズムは乱れることなく、主観的・客観的な睡眠もよい状態でした。疼痛もコントロールされ、訓練室リハビリテーションが開始されていたため、長谷川式簡易知能検査(HDS-R)を実施しました。

連載 栄養精神医学・12【最終回】

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 精神疾患に、栄養面の問題に起因する心身の症状が重なり、治療や回復の妨げとなっている可能性がある。今回は、血糖調節障害、コレステロール欠乏、マグネシウム欠乏を取り上げる。

連載 編集部がすっごくオススメする映画「これ観たほうがいいですよ!」・2

『プリズン・サークル』 大嶋 栄子
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それは社会から隔絶された場所にあった

 刑務所と精神科病院は、とてもよく似た場所だ。どちらも、望んで行く場所ではないこと。自由が制限されること。そこから出るためには、できる限り本当のことは話さないほうがよく、周囲の人に心を許さないほうがいいとされてきたこと、などなど相似点が多い。

 昨年秋、この映画の舞台となった「島根あさひ社会復帰促進センター」★1という民間が運営する刑務所を訪問し、TC(セラピューティック・コミュニティ=治療共同体)★2ユニットのプログラムを見学する機会を得た。そこは広島空港から高速バスを乗り継ぎ、インターチェンジまで迎えに来てもらわないとたどり着けない場所だ。ずいぶん不便な所にあると驚きながら、これも多くの精神科病院と同じだなと思った。監督の坂上香さんがちょうど映画を撮影していた頃、レンタカーを飛ばして飛行場に駆け込んで間に合ったとか、途中の風景があまりに綺麗でカメラに収めたとか、思うように進まない撮影の現場で起こるアクシデントについてのぼやきを聞いたりSNSで見たりしていた。だから、自分がその場所に立った時に、初めてなのにここに帰ってきたような気がした。

連載 編集部がすっごくオススメする映画「これ観たほうがいいですよ!」・3

『家族を想うとき』 太田 美由紀
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 この映画の試写を観た日、帰宅ラッシュに巻き込まれ自宅にたどり着いてテレビをつけると、コンビニエンスストアのフランチャイズ・オーナーによる労働組合の記者会見が流れていた。経済産業省の調査では、コンビニオーナーの85%が「休みは週1日以下」と回答しており、「休暇は27年間一度もない」という訴えもあったという。27年間一度も休暇がない人は、その間、人生のほとんどをコンビニで働くことに費やしてきたことになる。同組合の最終的な目標は、「コンビニオーナー達が普通のサラリーマンと同じように休日が取れること」だという。つい数時間前にスクリーンの中で見た世界は、まさに現実を描いたものなのだと思い知らされた。

連載

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目次

次号予告・編集後記

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基本情報

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精神看護
23巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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