連載 ケアフルな一冊『少年に奪われた人生』
罪とは……
坂田 三允
1
1群馬県立精神医療センター
pp.69
発行日 2003年11月15日
Published Date 2003/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900645
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
長崎で起こった12歳の少年の幼児殺害事件は,改正されたばかりの少年法の意味を再度問うことになるのだろうか。私には詳しいことはわからないが,20Ol年に改正された少年法では,逆送致できる年齢が16歳から14歳に引き下げられることの是非がしきりに論議されたと記憶している。少年法が「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行なう」ことを目的としていることはいうまでもない。それはすなわち加害少年を保護するということであり,家裁で審判された少年事件に関しては,被害者および遺族といえども一切の情報から遮断されてしまう。なぜ自分が,あるいは自分の愛する者が被害者にならなければならなかったのか,そしてその加害者がその後どうなったのかについても知ることはない。
本書は,そのような少年法の壁と闘っている少年犯罪の被害者の方たちの声を丹念に拾い集めたルポルタージュである。その紹介文によれば,著者は「当事者に伴走しながら綿密な取材と調査をもとに社会矛盾をえぐるルポルタージュを手がけている」ノンフィクションライターであるという。ここで取り上げられているのは,必ずしも有名な事件ばかりではない。新聞の全国版ではベタ記事にもならなかったようなものもある。しかし,それがどのような事件であっても,読み進むにつれて,「司法」というものに対する苛立ちと怒りがこみ上げてきた。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.