JIM 11巻3号 (2001年3月発行)

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特集　今のままで良いか―日常診療でのコミュニケーション技法

Editorial・医療の成功と失敗飯島　克巳 11巻3号 , 2001年3月 , pp.201

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　42歳のパートタイマーの主婦Pさんが，総合病院の内科を初診した．外来は混雑していた．1時間待って，彼女の番になった．数日前から38度台の発熱，のどの痛み，全身のけだるさが続いていた．半年前から排便後に出血を伴うようになっている"痔"についても相談したかった．父が60歳で直腸癌のために亡くなっているからだ．今日も，パートの仕事を休んだ，診察室に呼び入れられた．S先生は，忙しそうに机に向かって何かを書いていた．

　「どうなさいました？」と，先生は作業をすすめながら尋ねた．発熱と痛み，けだるさについて述べると，やっとこちらへ向き直り，鼻水，咳，痰について矢継ぎ早に質問した．のどと胸を診察し終わると次のような説明があった．そして診察は終わった．「カゼですね．エンショウをおさめる薬と，熱冷ましをさしあげましょう」「何かあったら，またおいでください」

医療の場でのコミュニケーション技法―その基本と落とし穴飯島　克巳 11巻3号 , 2001年3月 , pp.202-209

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Question　＆　Ansvver

　Q：医療の場でのコミュニケーション技法における主要な機能とは？

　A：診療の全過程のなかで発揮される次の5つの機能のこと，①診療以前の対等な人間関係の構築，②医師一患者間の治療関係の構築，③患者の問題の評価，④患者の問題への対処，⑤治療そのものとしてのコミュニケーション技法の発揮．

与えられた診療時間内でのコミュニケーション技法佐々木　將人 11巻3号 , 2001年3月 , pp.210-216

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Question　＆　Answer

　Q：制限時間内での医療面接のポイントは？

　A：患者さんの来診理由に照準を合わせながら，医師としての判断をすり合わせていくこと．

回診時のコミュニケーション川本　龍一 11巻3号 , 2001年3月 , pp.217-219

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Question　＆　Answer

　Q：回診時のコミュニケーションの重要点は？

　A：入院に伴う環境の変化や患者の病期に応じて，自分の態度や医師一患者関係の変化を考える．

面談室でのコミュニケーション斎藤　清二 11巻3号 , 2001年3月 , pp.220-223

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Question　＆　Answer

　Q：患者さんや家族との面接を有効にするための最も大切なポイントは？

　A：言語的な内容（content）よりも，雰囲気（context＝文脈）の作り方がコミュニケーションの有効性を決定する．

乳幼児患者（家族）とのコミュニケーション技法早川　浩 11巻3号 , 2001年3月 , pp.224-226

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Question　＆　Answer

　Q：乳幼児とコミュニケーションをとるコツは？

　A：優しい笑顔と態度で話しかけ，まず仲良くなることが肝要である．

思春期患者（家族）とのコミュニケーション技法冨田　和巳 11巻3号 , 2001年3月 , pp.227-229

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Question　＆　Answer

　Q：思春期の患者の難しい点は？

　A：医療を受けたがらない，語彙が少ない，権威や大人に反発したい気持ちを認識しておく．

痴呆患者（家族）とのコミュニケーション技法須貝　佑一 11巻3号 , 2001年3月 , pp.230-232

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Question　＆　Answer

　Q：痴呆患者本人に病名を告知すべきか？

　A：原則として説明しない，判断力が低下している状態では，論理的な説明は有害になることもある．

在宅ケアでのコミュニケーション技法宮森　正 11巻3号 , 2001年3月 , pp.233-235

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Question　＆　Answer

　Q：往診の利点と医療者として注意しなければならないことは？

　A：往診では，病歴，社会歴，家屋環境，家族関係をより実情に即して観察できるが，患者・家族から医療者も観察されていることを忘れないことである．

Breaking the Bad News―深刻な医学的事実を伝える岡安　大仁 11巻3号 , 2001年3月 , pp.236-238

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Question　＆　Answer

　Q：BBNの際に最低限配慮すべきことは？

　A：時間を十分にとり，資料を準備し，環境を整えたうえで，正直に，わかりやすく，短く，同情をこめて伝える．

医師自身が自分の偏りを自覚する―袋小路から速やかに脱却する飯島　克巳 11巻3号 , 2001年3月 , pp.239-241

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Question　＆　Answer

　Q：自己自覚（self-awareness）を深めるための訓練法とは？

　A：次のような訓練法が有効，①患者からのフィードバックを誘発・奨励，②指導者からの直接的なフィードバック，③視聴覚機器を用いての自己評価，他者による評価，④標準化されたテストによる評価（YG性格テスト，エゴグラム，タイプA評価票など），⑥Balint seminarの開催，これへの参加．

医療におけるコミュニケーション技法の訓練・学習法松村　真司 11巻3号 , 2001年3月 , pp.242-244

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Question　＆　Answer

　Q：コミュニケーション技法の学習に必要な要素は？

　A：モチベーション，知識獲得のための教材，実践教育への参力口とフィードバック，学習をする仲間．ただし，コミュニケーション技法とコミュニケーション能力はイコールではない．

医療におけるコミュニケーションについての研究手法橋本　英樹 11巻3号 , 2001年3月 , pp.245-248

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Question　＆　Answer

　Q：会話研究を進めるにはまずなにをしたらよいか？

　A：まず医師以外の社会科学系の協力研究者を探して，医療関係者だけでやろうとしないこと．

私の失敗体験／伝えたいコツ飯島　克巳 , 佐々木　將人 , 斎藤　清二 , 早川　浩 , 冨田　和巳 , 須貝　佑一 , 宮森　正 , 岡安　大仁 , 松村　真司 11巻3号 , 2001年3月 , pp.250-253

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未熟さが露呈した，"狼少年"への時間外診療

　01：00，当直室の電話が鳴った．肺炎の患者を入院させ，1時間ほど眠りについたばかりだった．「先生，患者さんです．時間外によく来るCさんです」．事務当直のKさんの声だ．（Cさんには参るな！また，カゼでの受診か）．急患室に行ってみると，彼がベッドに横になっていた．

　「どうしました？」と尋ねた．（ぶっきらぼうで不機嫌そうな声だったと思う）．「4～5日前から，胃がむかむかしていたんだけど，今日は背中が痛い」．（どうして，この夜中に受診するんだ．一通り診察して，また明日受診してもらおう．どうせたいしたことはないだろう）．「それでは，おなかを診ましょう」と述べて診察した．右季肋部に軽度の圧痛を認めた．心配ないこと，座薬の処方を考えている旨を伝えたところ，「苦しいから」と強く入院を要求し続けた．結局，私が折れて入院となった．背中の痛みは，徐々に強くなった．明け方のレントゲンと超音波の検査で，十二指腸潰瘍の後腹膜への穿孔が強く疑われた．緊急にヘリコプターで大病院へ転送され，その日のうちに手術を受けた．やはり，疑いどおりの診断だった．

診療室の雰囲気づくりとコミュニケーショングッズ―いいじまクリニックにて，2001年2月6日「JIM』編集室 11巻3号 , 2001年3月 , pp.254-255

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　図1　待合室でのメッセージ機能　リラックスできるような温かい雰囲気とし，治療室での活動を補完し，確実にする資料を用意する．できればお持ち帰り可能なものを．

　図2　壁面の活用　クリニック運営の哲学が反映されたインテリアを.手づくりは"人と人との交流"を親密なものにする.定期的にリフレッシュして,hospitalityを心がける.

外来で見逃された症例―あなたの診断は？・30

抗生剤の点滴で改善しない腎盂炎清水　裕美 , 鈴木　彩 , 生坂　政臣 , 亀谷　学 11巻3号 , 2001年3月 , pp.197,280

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　症例：41歳，女性．前日から，排尿困難と排尿時痛を伴う右側腹部痛と悪寒，発熱が出現したために当科を受診．過去に腎盂炎を数回経験している．身体診察では体温39℃，血圧102／50mmHg，心拍数85回／分．著明な右肋骨脊椎角叩打痛を認めた．検査所見ではWBC15,000／μl,CRP6.1mg／dl，クレアチニン0.9mg／dl，尿素窒素11mg／dl，尿沈査にWBC30～40／HPF，細菌3＋，亜硝酸塩1＋を認めた．初診時の腹部超音波検査結果を示す（図1）．

漢方的発想を生かした治療学・3

膠原病・慢性関節リウマチ磯部　秀之 , 丁　宗鐵 11巻3号 , 2001年3月 , pp.257-261

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　◆難治性の疾患ではあるが，漢方的発想を生かし，個体差や病態の変化を重視したきめ細かな治療を心がける．漢方治療をうまく活用することで，西洋薬の減量や副作用の軽減，随伴症状の改善などがしばしば可能である．また，漢方治療により，本来の正常な免疫能を賦活することで，病気の経過や予後の改善も期待される．

プライマリケア医のための「みみ・はな・のど」・2

花粉症の患者指導・7つの鉄則―花粉症患者のアンケートから藤村　聡 , 福井　次矢 , 駿地　眞由美 , 榎本　雅夫 11巻3号 , 2001年3月 , pp.262-264

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　花粉症は日本では昭和38年に初めて報告された疾患であるが，わずか40年足らずの間に増加の一途をたどり，いまや国民全体の有病率は約17％，患者数は2000万人近くにまで増加した．花粉症を含むアレルギー性鼻炎に関する医療費もうなぎのぼりに上昇して，近年の試算では1265億円，国民医療費の約0.5％に相当し，市販薬を含めると国民1人当たり年間13,000円の医療費を支払っていることになる^1）．

　患者数の増加により，花粉症患者は耳鼻科医のみならず，かかりつけの医師を受診することも多く，花粉症診療はプライマリケア医の守備範囲になってきたといっても過言ではない．プライマリケア医の重要な任務として，疾患の医学的な管理とともに，患者教育がある．明らかに特定の抗原が原因となっているアレルギー性疾患（気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎）については，いかに抗原の曝露から回避できるかを患者に指導する必要がある．

かかりつけ医のための家庭医療学・3

世界の国々における家庭医療葛西　龍樹 11巻3号 , 2001年3月 , pp.265-269

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◆ポイント◆

　1．WONCA　（世界庭医機構）が世界の家庭医療を知る最良の資源．

　2．世界の国々の経験から家庭医療発展の促進因子と阻害因子を学ぶ．

　3．世界の家庭医が日本の家庭医療をどう見ているかを知ることも重要．

　4．世界から学んだことを具体的な実践に結びつける．

　5．グローバルな視点を持ち世界に貢献することも視野に入れたい．

研修医読本―臨床の秘伝・奥義を学ぶ・15

頭痛やめまいの原因が頸椎の異常にある小山　素麿 11巻3号 , 2001年3月 , pp.270-272

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教訓・鉄則

1）慢性の頭痛や耳鼻科的に原因がない「めまい」の患者を診た時に，脳の疾患のみを考えないようにしてください．

2）頭部のX線撮影をみる時には，少なくとも環椎，軸椎まで，頭部にこだわらず画面全体を観察し，疑わしい時は頸部7方向のX線単純撮影も指示してください．

3）頸部の側面撮影は必ず前屈，中立，後屈の動態撮影を指示する習慣をつけてください．開口位も同様に必須の検査です．

特別寄稿

医学におけるサイエンスとアート日野原　重明 11巻3号 , 2001年3月 , pp.273-278

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医学とは？大学とは？

　医学は純粋な自然科学だと思っている人がいるとしたら，それは間違いです．医学は自然科学を駆使し，かつ応用したサイエンスなのです．医学とは，自然科学の発達―物理学，化学，生物学などの研究の成果をもらって，それを目の前の患者に適用するサイエンスであります．ですから，医学の基礎的な研究は，医師以外の研究者に医学的なテーマを提供して取り組んでもらうことが可能です．私たちはなるべく幅広く，学際的に，医学というサイエンスにアプローチしていく態度が必要だということをまず述べておきたいと思います．

　さて，大学は何のために存在するのでしょうか．みなさんにおいては，この基本的なことが問われないまま，すでに形をなしている大学に入学し，そこで学んだ後には卒業証書をもらって卒業していかれるのです．

JIM臨床画像コレクション

スギ花粉とヒノキ科花粉榎本　雅夫 , 藤村　聡 , 瀬野　悟史 11巻3号 , 2001年3月 , pp.280

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　スギ花粉症の季節になった．日本人の約17％が花粉症を有するが，血液検査での抗体陽性者はさらに多く．2000年に和歌山県下の自然集団を対象に行ったスギ特異的IgE抗体の検査では34.4％（n＝1383）が陽性であった．同じ対象の1985年の陽性率18.4％と比較すると，その増加には驚くものがある．

　和歌山県で2年前に撮影した杉の木からスギ花粉が飛散する状況を表紙写真・上に示した．また，写真下の左にスギ花粉，右にヒノキ花粉をゲンチアナ・バイオレットで染色した光学顕微鏡写真を示した，どちらの花粉も約30～40μmで，花粉内容物が透けて見える．

基本情報

JIM
11巻3号
(2001年3月発行)

電子版ISSN：1882-1197 印刷版ISSN：0917-138X 医学書院

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