耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89巻12号 (2017年11月)

特集 知っておきたい難治性副鼻腔疾患の診療

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POINT

●急性鼻副鼻腔炎,副鼻腔真菌症に関しては多くのエビデンスのもとに診療ガイドラインが示されている。

●内視鏡下副鼻腔手術の発展により,慢性副鼻腔炎の治療に対してのみならず,多くの鼻副鼻腔疾患や頭蓋底疾患に対して内視鏡手術の適応が拡大している。

●急性鼻副鼻腔炎に対するネブライザー療法の手引きが刊行され,ネブライザー療法に関する具体的な実施方法がわかりやすく記載されている。

●好酸球性副鼻腔炎に関する診断基準が示され,侵襲的検査を行わずに好酸球性副鼻腔炎を診断できるようになった。

好酸球性副鼻腔炎 出島 健司
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POINT

●重症の好酸球性副鼻腔炎は,難治性である。

●特に,50歳未満・好酸球増多・アスピリン過敏の3項目が難治性のトリアスである。

●重症例では重症好酸球性中耳炎や頭蓋内合併症をきたすことがあり,注意が必要である。

●術後再発には,経口もしくは点鼻用ステロイド薬が有用で,長期の使用では隔日投与とする。

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POINT

●副鼻腔真菌症の病型には,急性浸潤型,慢性浸潤型,寄生型(真菌球症),アレルギー性真菌性副鼻腔炎があり,海外ではさらに肉芽腫性浸潤型に分類される。

●真菌は系統学的には細菌よりもヒトに近く,抗真菌薬の開発を困難にしている。

●浸潤型真菌症に対する治療は,急性・慢性ともに手術による病変の除去(デブリッドメント)と原因真菌に感受性を有する抗真菌薬の投与が基本となる。

●アレルギー性真菌性副鼻腔炎に対する治療は,副腎皮質ステロイド薬を中心とする抗炎症療法,手術およびアレルゲン免疫療法が考慮される。

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POINT

●鼻副鼻腔内反性乳頭腫は再発性が強く,悪性の原因としてHPVの関与が示唆されており,基底細胞に感染して病巣を形成するとされている。

●内視鏡検査は,診断ならびに再発の早期発見のために重要である。

●内視鏡手術が主流となっており,Swing法(EMMM)やEMLPを応用することで上顎洞前壁や前頭洞症例にも対応が可能である。

●腫瘍基部の処理が非常に重要で,骨増殖部をバーで削除する必要がある。

難治性前頭洞炎 児玉 悟
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POINT

●前頭洞は他の副鼻腔に比べ,自然口や排泄路の解剖が複雑であるため,症例に応じて解剖を理解する。

●前頭洞炎は粘膜の炎症のみならず骨の炎症を伴い難治性となり,また異物が原因となることもあるため,症例に応じて病態を理解する。

●前頭洞炎に対する手術は内視鏡下副鼻腔手術が一般的であり,初回手術における適切な術式の選択と正しい手術手技が大切である。

●前頭洞炎に対して鼻外手術が適切かつ必要な場合もある。

多発血管炎性肉芽腫症 岸部 幹 , 林 達哉
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POINT

●多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は,耳鼻咽喉科領域,特に鼻病変から初発することが多い。

●GPAの鼻・副鼻腔病変は,初期には症状,所見が非特異的なことが多く,慢性副鼻腔炎と診断されることが多い。

●難治性副鼻腔炎や難治性副鼻腔炎に他臓器の血管炎病変が合併した場合,GPAも念頭に置き診断・治療にあたる必要がある。

●GPAの治療は免疫抑制療法であり,長期にわたる場合が多いので,副作用に留意する。

●GPAは,いったん寛解しても再燃することがあり,長期の経過観察を要する。

原発性線毛運動不全症 竹内 万彦
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POINT

●内臓逆位を伴わない原発性線毛運動不全症では診断は困難なことが多く,診断されていない例も多い。

●持続する湿性咳嗽が最もよくみられる症状である。

●本症例の副鼻腔の特徴として,前頭洞と蝶形洞の形成不全が挙げられる。

●中耳病変は滲出性中耳炎である。

●PICADARスコアが高ければ本症である可能性は高くなる。

Review Article

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Summary

●鼻性NK/T細胞リンパ腫は鼻腔や咽頭に初発し,顔面正中部に沿って進行する破壊性のNK細胞もしくはγδT細胞由来の悪性リンパ腫である。不明熱やウイルス関連血液貪食症候群といった全身症状の合併を認める場合がある。

●鼻性NK/T細胞リンパ腫はEBウイルス関連疾患であり,EBウイルス潜伏感染2型を呈する。EBウイルス蛋白であるLMP1が,ケモカインやマイクロRNAを介して腫瘍の増殖や生存に寄与している。

●本疾患の診断には,CD56の免疫組織染色やin situハイブリダイゼーション法によるEBER染色が有用である。EBウイルスDNAは診断および病勢,予後を反映する鋭敏な腫瘍マーカーとなる。

●本疾患における治療の第一選択はMPVIC-P療法やDeVIC療法に代表される化学療法同時併用放射線治療であり,一定の効果が望まれる。今後の展望として,免疫療法や分子標的薬の臨床応用が期待される。

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はじめに

 耳下腺に発生する良性腫瘍の多くは多形腺腫などの上皮性腫瘍であり,脂肪腫のような間葉系腫瘍は比較的稀である。報告によれば,耳下腺脂肪腫が発生する頻度は全耳下腺腫瘍中1%前後とされている1)。今回われわれは右耳下部の無痛性腫瘤にて当科紹介となり,細胞診および画像所見より脂肪腫の疑いで手術となった症例を経験したので,文献的考察を含め報告する。

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はじめに

 咽頭の魚骨異物の患者は発症の日から翌日までに医療機関を受診することが多く,ほとんどの場合,(間接喉頭鏡)喉頭内視鏡で魚骨を確認できる。しかし加齢による咽頭知覚低下や,異物による咽頭や食道壁の粘膜への感染や損傷によって,重篤な合併症を生じることがある。今回われわれは,魚骨異物が原因で急性喉頭蓋炎に至った症例を経験したので報告する。

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はじめに

 甲状腺腫瘍による反回神経麻痺は,悪性腫瘍を示唆する所見である。一方で,その頻度は悪性腫瘍と比較すると低いが,甲状腺良性疾患による反回神経麻痺の報告もされている1,2)。今回われわれは,囊胞性結節内出血を契機に反回神経麻痺が出現し,穿刺による貯留液吸引後に反回神経麻痺が改善した腺腫様甲状腺腫の1例を経験したので,臨床経過ならびに文献的考察を含めて報告する。

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はじめに

 進行下咽頭がん,頸部食道がんに対する手術として,下咽頭喉頭頸部食道摘出術および遊離空腸による再建は現在,標準治療として確立されている。経過観察中の腸間膜リンパ節の腫大は少なからず認めるが,腸間膜リンパ節転移をきたした症例は稀であり,その対応法は確立していない。今回,われわれは異時的に多発した頭頸部がんに対する根治切除術および再建術術後に腸間膜リンパ節転移をきたし,リンパ節摘出を行った症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

あとがき 鴻 信義
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 金風の候,皆様いかがお過ごしですか? 本格的な冬はもうすぐそこまで来ています。この時期,銀杏落葉の美しい光景を詠んだ俳句はたくさんありますが,自分にとってあの独特の匂いや踏みしめながら歩く感覚は小学校の校庭や周囲の通学路の思い出です。落葉を拾い集めてその上で寝そべったりダイブしたり。自分の中では,わりと最近のことのようにも思えますが,実際はもう40年以上の時間が…。1年は早い!です。あっという間に感じます。

 さて,今月号では「知っておきたい難治性副鼻腔疾患の診療」を特集として掲載しました。ちょうど私が耳鼻咽喉科医師として駆け出しの1990年代に普及していった内視鏡下鼻副鼻腔手術やマクロライド少量長期投与療法によって,副鼻腔疾患,とくに慢性副鼻腔炎の治療成績は大きく向上しました。しかし一方で,好酸球性副鼻腔炎や前頭洞炎,乳頭腫といった治療にしばしば難渋する疾患はいまだ存在し,その数はむしろ増えてきている印象です。また,多発性血管炎性肉芽腫症や原発性線毛運動不全症は診断に至ること自体が難しい疾患で,長期的な管理が必須です。本特集がこれらの疾患の診断と治療のみならず,患者さんへのインフォームドコンセントのご参考になれば幸いです。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
89巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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