耳鼻咽喉科・頭頸部外科 76巻11号 (2004年10月)

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 咽頭に発生する血管腫は稀な疾患である1)。今回われわれは,上咽頭から下咽頭にかけて広範に発生した血管腫の1例を経験したので報告する。

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I.はじめに

 気道分泌液は(1)上皮を介したイオントランスポートによる水やイオンの移行,(2)血液成分や組織液の移行,(3)気道上皮の杯細胞と固有層の粘膜下腺(粘液細胞と漿液細胞)から分泌される分泌液から構成されている。粘液細胞からは主として粘液糖蛋白(ムチン)が,漿液細胞からはリゾチーム,ラクトフェリン,分泌型IgAなどが分泌される。

 粘液層(mucous blanket)はゲル層である外層粘液とゾル層である線毛間液からなり,(1)吸気の加温,加湿,(2)粘膜の保護,(3)有毒ガスの中和と希釈などの物理的作用とともに,生体防御の第一線として,(4)異物を捕捉し排除する粘液線毛輸送機能や,(5)各種の炎症メディエーターや遊走した炎症細胞などの生体反応の場となっている1,2)

 正常状態の分泌液は少量であるが,刺激や炎症が加わるとそれに反応して粘液産生の増加がみられ,杯細胞や粘膜下腺の増生が生じる。過剰な粘液産生は粘液線毛輸送機能の破綻や炎症の遷延化,慢性化の原因となるとともに,鼻漏や耳漏,喀痰となって患者を苦しめる。

 本稿では,こうした気道炎症における粘液過分泌の機序とその制御について,粘液の構造や役割も含めて,われわれの研究を中心に概説したい。

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I.はじめに

 小脳橋角部腫瘍は難聴をきたすことが多く,手術により蝸牛神経機能を温存することも容易ではない。今回,術前に失聴した髄膜腫症例に対し腫瘍摘出術を施行したところ,術後に聴力が改善し正常聴力となった症例を経験したので報告する。

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I.はじめに

 Botryomycosisは血管拡張性肉芽腫とも呼ばれ,特徴的な病理組織像から診断される。直径10mmまでの鮮紅色ドーム状腫瘤または有茎性腫瘤を形成し,外的刺激により容易に出血する。好発部位は手指,顔面,頸部であるが,耳鼻咽喉科領域での報告は少ない1,2)

 今回われわれは,耳輪脚に生じたbotryomycosisと外耳道入口部に生じたbotryomycosisの2症例を経験したので報告する。

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I.はじめに

 鼻涙管閉塞は高齢者に多く,感染や外傷,鼻腔内の炎症などによって生じる。流涙を主訴として眼科を受診し抗生剤点眼,鼻涙管ブジーなどで保存的に治療されることが多い。涙囊や鼻涙管に発生する癌は稀であり,初期症状は鼻涙管閉塞症状のみの場合が多く,早期には鼻涙管閉塞症と診断され発見が遅れる場合が多い。われわれが検索した限りでは,涙囊癌は世界で約300例の報告がある1~3)。これに比べ,鼻涙管原発の悪性腫瘍は6例の報告のみであり,極めて稀である。組織型も扁平上皮癌,腺癌,リンパ上皮腫など様々である4,5)

 今回,鼻涙管に生じた低分化腺癌を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 ポリープ様声帯とは,声帯膜様部の全長にわたりび漫性に浮腫を生じるものとされている1)。40歳以上の喫煙者に多く,その臨床症状は嗄声,咳,痰,咽喉頭異常感などが主である。呼吸困難は比較的少ないとされているが,米川ら1)は149例中9例に呼吸困難を認めたと報告している。ただし,急性呼吸困難により緊急気管切開が必要になった症例は極めて稀で,われわれが渉猟し得た範囲では4例の報告を認めるのみである2~5)

 今回われわれは,ポリープ様声帯により急性呼吸困難をきたした症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 Castleman病は,胸腺腫に類似した縦隔リンパ節の過形成として1954年にCastlemanら1)により最初に報告された疾患である。その後Kellerら2)が,組織学的に本疾患をhyaline-vascular type(HV型),plasma cell type(PC型)と混合型に分類した。好発部位は縦隔であるが,ときに頸部に発生することがある。

 今回われわれは,頸部に発生したHV型のCastleman病の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 ガス壊疽とはガス産生を伴う壊疽性の軟部組織感染症で,しばしば致死的な疾患である。外傷などを契機に四肢に発症することが多く,頭頸部領域に発生することは稀で,発症率は年間0.1人/10万人以下1)である。

 今回,扁桃周囲炎に続発した頸胸部非クロストリジウム性ガス壊疽の症例を経験し,治療に難渋したため若干の文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 慢性腎不全患者の長期透析例においては,しばしば二次性副甲状腺機能亢進症をきたすことが知られている1~6)

 今回われわれは,頸部腫脹,紫斑,気道狭窄で発症した慢性腎不全患者の深頸部血腫に対して血腫除去術を行い,病理学的検査で過形成副甲状腺が出血の原因と考えられた症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

⑩術後性頰部囊腫の手術 荒木 倫利
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I.はじめに

 術後性頰部囊腫はCaldwell-Luc手術を初めとした上顎洞根本手術術後に発生する貯留囊腫として知られる。副鼻腔手術後に発生する副鼻腔囊胞はあらゆる副鼻腔に発生し得るが,多くは上顎に生じるため現在は一般に術後性上顎囊胞の名称が用いられる1)。術後に発生する囊胞は上顎に限らないが,頻度が高いこと,また日本では囊胞の発生原因として手術に起因する場合が多いことから,独立して取り上げられることが多い。

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I.はじめに

 経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy:以下,PEITと略す)は,1981年Bean1)が腎囊胞の治療として報告して以来,肝,子宮などの囊胞性疾患や肝癌などの悪性腫瘍などで広く用いられている2,3)。頭頸部領域では既に甲状腺囊胞において用いられており,2002年4月からは保険適用となった4)。頭頸部には,甲状腺以外にも正中頸囊胞,側頸囊胞などの囊胞性疾患があり,これらの囊胞性疾患の治療は従来手術的治療が中心であった。手術治療は頸部に外切開が必要であり,審美的な面から手術治療を敬遠する症例も少なくない。また,全身麻酔での手術治療は,入院期間や費用の面でも大きな負担となる(表1)。頸部囊胞性疾患に対するPEITの報告は家根ら5),宮原ら6)が最近報告しているが,渉猟し得た限りまとまった報告は家根ら5)の8例の報告のみであった。また,正中頸囊胞にPEITを施行した報告はない。

 今回筆者らは,正中頸囊胞,側頸囊胞などの頸部囊胞性疾患症例のうち手術治療を希望しない症例に対してPEITを施行し,良好な結果を得たので報告する。

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I.はじめに

 聴覚障害,特に感音系難聴と蝸牛病変との関連性を検索するための基本的かつ効率的な方法として,1921年にGuild1)により創始され,導入された“graphic cochlear reconstruction method”(蝸牛の二次元的グラフ再構成図法と邦訳してみた)が最も有名である。その後Schuknecht2)により,本法の有用性と良好な再現性が再確認され,実験動物だけでなくヒト蝸牛病変評価にも敷衍・適用できることを示した1953年以降,Schuknechtを初めとする多くの側頭骨病理研究者によって現在も応用されてきている。

 この方法は,当初はコルチ器病変の評価に用いられたが,その後は蝸牛管内の他の多くの組織細胞成分やラセン神経節細胞(蝸牛ニューロン)の評価にも応用された。さらには,これらの得られた蝸牛病変の実態をオージオグラムなど生前の機能障害の状況と対応し図表化した“audio-cytocochleogram”の作成も行われて,一見して各蝸牛病変の実態を把握できるようになってきているが,これには蝸牛内の空間的な解剖学的周波数スケール(anatomic frequency scale)が確立したことがこのような蝸牛病変のグラフ図示化を可能にしたものといえる(次々ページの表1参照)。これらに関する詳しい論述はSchuknecht HF:Pathology of the Ear(2nd Edition,1993)3)に記載されてはいるものの,筆者の知る限りでは,本邦においてはこのような蝸牛グラフ再構成図法の実際や,cytocochleogram作成法に関する具体的な説明や記載は見当たらないようなので,以下にその概要を述べてみたい。

鏡下咡語

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1.はじめに

 世の中には,納得のゆかない既成概念が結構多く存在する。医学医療の分野においても同様である。それらは,不注意な混同や一寸した早合点の思い込みなどによって成り立っていることが多い。本稿では,医療の中で,かねがね筆者が疑問に思っている,いわゆるFNAの頭頸部腫瘍診断への応用を話題として取り上げて考えてみたい。稿を進めるにあたり,まず,本題に対する筆者のスタンスを明確にしておきたい。筆者は,頭頸部腫瘍の診断に対するFNA施行に否定的である。ちなみに,その根拠となるいわば医療哲学は,筆者の医学医療の経験過程,つまり筆者が臨床病理医として剖検(autopsy)を含めた病理形態学的診断に携った体験に基づく。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
76巻11号 (2004年10月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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