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I.はじめに
聴覚障害,特に感音系難聴と蝸牛病変との関連性を検索するための基本的かつ効率的な方法として,1921年にGuild1)により創始され,導入された“graphic cochlear reconstruction method”(蝸牛の二次元的グラフ再構成図法と邦訳してみた)が最も有名である。その後Schuknecht2)により,本法の有用性と良好な再現性が再確認され,実験動物だけでなくヒト蝸牛病変評価にも敷衍・適用できることを示した1953年以降,Schuknechtを初めとする多くの側頭骨病理研究者によって現在も応用されてきている。
この方法は,当初はコルチ器病変の評価に用いられたが,その後は蝸牛管内の他の多くの組織細胞成分やラセン神経節細胞(蝸牛ニューロン)の評価にも応用された。さらには,これらの得られた蝸牛病変の実態をオージオグラムなど生前の機能障害の状況と対応し図表化した“audio-cytocochleogram”の作成も行われて,一見して各蝸牛病変の実態を把握できるようになってきているが,これには蝸牛内の空間的な解剖学的周波数スケール(anatomic frequency scale)が確立したことがこのような蝸牛病変のグラフ図示化を可能にしたものといえる(次々ページの表1参照)。これらに関する詳しい論述はSchuknecht HF:Pathology of the Ear(2nd Edition,1993)3)に記載されてはいるものの,筆者の知る限りでは,本邦においてはこのような蝸牛グラフ再構成図法の実際や,cytocochleogram作成法に関する具体的な説明や記載は見当たらないようなので,以下にその概要を述べてみたい。
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