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気道炎症における粘液過分泌とその制御
Mucus Hypersecretion in Airway Inflammation
清水 猛史
1
Takeshi Shimizu
1
1滋賀医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.757-763
発行日 2004年10月20日
Published Date 2004/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100665
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I.はじめに
気道分泌液は(1)上皮を介したイオントランスポートによる水やイオンの移行,(2)血液成分や組織液の移行,(3)気道上皮の杯細胞と固有層の粘膜下腺(粘液細胞と漿液細胞)から分泌される分泌液から構成されている。粘液細胞からは主として粘液糖蛋白(ムチン)が,漿液細胞からはリゾチーム,ラクトフェリン,分泌型IgAなどが分泌される。
粘液層(mucous blanket)はゲル層である外層粘液とゾル層である線毛間液からなり,(1)吸気の加温,加湿,(2)粘膜の保護,(3)有毒ガスの中和と希釈などの物理的作用とともに,生体防御の第一線として,(4)異物を捕捉し排除する粘液線毛輸送機能や,(5)各種の炎症メディエーターや遊走した炎症細胞などの生体反応の場となっている1,2)。
正常状態の分泌液は少量であるが,刺激や炎症が加わるとそれに反応して粘液産生の増加がみられ,杯細胞や粘膜下腺の増生が生じる。過剰な粘液産生は粘液線毛輸送機能の破綻や炎症の遷延化,慢性化の原因となるとともに,鼻漏や耳漏,喀痰となって患者を苦しめる。
本稿では,こうした気道炎症における粘液過分泌の機序とその制御について,粘液の構造や役割も含めて,われわれの研究を中心に概説したい。
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