臨床整形外科 8巻9号 (1973年9月)

カラーシリーズ

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 四肢に発生する神経性腫瘍の代表は神経鞘腫である.

 神経鞘腫は末梢神経のシュワン細胞より発生する腫瘍であるが,カラーの部では,腫瘍線維が種々の,通常用いられる特殊染色でどのような色で染まるかを示し,白黒の部では神経線維肉腫の組織を示した.

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 日本における先天股脱の歴史は,明治31年1898年に小川三之助氏が名古屋の中央医学会48回常会で第1例を報告し,さらに翌32年に東京で開催された第1回日本外科学会で2例を報告したに始まつている.しかしAdolf Lorenzはすでに,3年前の1895年に非観血的整復法に成功してから,当時,僅かに1例の報告のみに止まつていた日本との間には研究面において格段の差があつたというべきである.しかるに,今日では日本も諸外国に勝るとも劣らない発達を遂げてきたことは,われわれの先輩・同僚の大きな努力によるものといわねばならない.

  日本における先天股脱の治療法の発達史は大きく3つの時代に分けることができる.

論述

線維性組織球腫について 湯本 東吉
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 組織球の増殖を主体とする種々の腫瘍状増殖に対する考え方は最近著しく変つてきた6,30).とくに,Ozzelo, Stout, and Murray23)らの組織培養法による研究によつて腫瘍性組織球が線維芽細胞に転化することが確かめられてから,黄色腫を含めて,これらを総括しようとする見解が現われてきている.Stout and Lattes31)は組織球を主とする腫瘍状増殖に対して,線維性組織球腫として総括している.しかし,その組織像は種々様々で,報告者の見解に従つていろいろの名称で呼ばれていることも事実である.これらすべての腫瘍は,基本的には組織球の増殖よりなるが,銀線維や膠原線維の量・これらの線維の配列の仕方・泡沫細胞や脂質の有無・巨細胞,血管,血鉄素の有無などは著しく異なつている。 他方Enzinger5)を中心とするWHOの軟部組織腫瘍の組織学的定義と分類では,腫瘍と腫瘍状増殖を区別し,皮膚線維腫dermatofibromaと,隆起性皮膚線維肉腫dermatofibrosarcoma protuberansは前者に,その他は黄色腫グループとして一括して後者にいれられている.

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はじめに

 脊髄性小児麻痺(以下ポリオと略す)の発生は,ワクチンの開発・普及と共に激減を見たが,いわゆる麻痺の後遺症は今なお広く残存しており,整形外科的に充分な手がつくされているとはいい難い.特に青年期に至つた下肢麻痺患者は,体重の増加と共にその変形拘縮が著明となり,松葉杖歩行や補装具歩行等で恵まれぬ日々を送つているものが多い.

 これに対し,これら重い補助具を不用ならしめ,自分の脚だけでの歩行を可能にし,彼等に夢と希望をもたらす事は,整形外科医に残されている課題の一つといえよう.しかしながら,高度麻痺肢での自脚のみでの実用歩行の獲得は,実際上は仲々困難といえ,つい補助具にたよる傾向も強く,その解決は今後の問題といえる.

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はじめに

 変形性股関節症をはじめとして股関節結核,化膿性股関節炎,大腿骨頸部骨折,放置されたままの先天性股関節脱臼などの股関節疾患に対する機能再建手術には,古来より種々の術式が考えられてきたが,故Henry Milchが1943年にresectionangulation operation(以下R.A.O.と省略)を発表して以来,諸家によりその追試が行われてきた.例えば1949年にはBatchelorが同様の術式を発表しており,さらに1950年にはGrucaが同術式を股関節結核に対して施行している.またCharryは初期のMilchのごとく大腿骨頭ならびに頸部の切除と,骨切り術とのtwo-stageに分けて本術式を行い好成績をおさめている.

 われわれの教室でも昭和35年以来,主として変形性股関節症に対して本術式を採用してきたが,現在までにその数は73症例90関節になる.今回,直接検診しえたもののうち術後3年以上経過したもの33症例44関節について日整会案の臨床像評価により検討を加えた.なお,両側手術例の場合には成績の悪い側の股関節の点数を採用した.

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 腱損傷の再建は,多くの人々の努力により優れた成績が得られるようになつてきたが,現在でもなお手の外科における重要なテーマの一つであり,解決されなければならない問題を多く含んでいる.

 腱再建術後,予想外の癒着のために不満足な結果を残す症例にしばしば遭遇する.腱断裂修復後の癒着が問題となるのは主として屈筋腱であるが,癒着が著しくて滑動性の悪い場合に行なう腱剥離は,手の外科を扱う私たちにとつては便利な,救いとなる方法である.しかし,同時に安易に行なうことは注意しなければならない手術でもある.経験年数が乏しく,少数例に過ぎないが,今までに私たちの行なった症例をふり返ることは意義のあることと考え,この問題を中心にして現在の私たちの考えと方針を述べてみたい.

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Ⅴ.脊椎椎間板

 脊椎椎間板は,脊椎の連結ばかりでなく,弾性体として脊椎の運動あるいは荷重に対する緩衝体となり重要な役割を果している.その機能構造と変性は,整形外科領域において最も興味深い対象であり,特に,椎間板の機能を考える場合,その立体的な構築が最も重要な課題となるが,これまでに充分検索されたとはいいがたい.

 脊椎椎間板は,中心の髄核,それを同心円状に包む線維輪,そしてそれらを上下椎体と画している軟骨板の3つからなつている.髄核はムチン物質に富み,線維輪は主として膠原線維からなる線維軟骨で,軟骨板は硝子軟骨である.これらの3構成部分を走査型電子顕微鏡(以下SEMと略す)下に立体観察するために,著者が試料作製上工夫した点を要約すると,1)脊椎椎間板の水平あるいは垂直切断面を作製する,2)その切断試料を実体顕微鏡下に細析剥離する(ヒヤルロニダーゼ処理によつて基質を消化すると細析し易いことがある),3)切断標本において髄核部分は容易に抜き取ることができるなどである。固定は,グルタールアルデヒドによつているが,固定後あるいは乾燥後において,上記,1),2),3)の方法を試み,実体顕微鏡下で充分試料のチエックをする.試料の乾燥・蒸着は,これまでと同様に行い観察材料とする1)

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はじめに

 化膿性骨髄炎および関節炎は,数々の抗生物質の登場した今日にあつても,再発をくりかえして整形外科領域の難治性疾患の一つに数えられる.特に最近交通事故の増加に伴い,開放骨折から骨髄炎を併発して頻回の手術治療にも抵抗して再燃する症例も増え,患者の社会復帰を遅らせている.

 骨髄炎に対する治療法としては,従来種々の治療法が考案されてきたが,病巣掻爬排膿のみでは不十分であり再発することが多い.

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はじめに

 顕微鏡を使用してのmicrovascural anastomosisは1960年のJacobsonの報告以来,日々進歩をとげてきた.我々も1966年よりsmall vessel anastomosisの研究を続けてきた。

 良く知られているように,微小血管縫合の方法には,手縫いによる方法と,接着剤による方法とがあり,我々はこのどちらの研究も行つてきた,最近では手縫いによる方法で,0.5〜1.0mmの血管でもほぼ100%に近い成功率を得ている.この成功率増大の大きな要因は顕微鏡や器具の改良,発展もさることながら,最も重要なことは非常にすぐれたatraumatic needleの開発であろう.

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はじめに

 交通の激化,社会構造の複雑化に伴い,戦時とは違つた意味で,外傷が,われわれの領域においても大きな比重を占めてきた.時には従来全く,あるいは殆んどみられなかつたパターンの損傷に遭遇することもある.外傷性膝関節後方脱臼もこの一つで,われわれの渉猟し得た限りでは,斎藤らの口演以外には,本邦においてその報告をみない.四肢躯幹の大関節で通常最も外傷を被り易いと考えられる膝関節に,このような現実があることは,誠に興味深い.

 われわれは長期経過例も含めて,外傷性膝関節後方脱臼の6症例を経験したので,その発生機序を中心に吟味を加え,改めて本症の特微を浮き彫りにし,大方の参考に資する.

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 骨折片に金属釘あるいは,金属螺子を立てて,これを創外で固定して骨接合を行うという考えは19世紀に始まつたものである.

 LambotteとBoewerによつて考案された器械が作られ,少し遅れてOmbredanneも創外固定を発明した.わが国では,前田,木村,山岸式がよく知られているが,いずれも現在使用されずに歴史的なものとして文献であるのみである.放棄された主な原因は,金属材料の悪さと,抗生物質のない時代の金属釘からの感染であつたと推測されるが,また固定性の問題もあつたであろう.Greigensteinerは,2本のKirschner鋼線を上下骨片に入れて創外固定を試みているが,固定が弱く失敗している.

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 水溶性造影剤によるmyelographyは欧州諸国においては相当普及しているが,最近わが国においても無麻酔下での水溶性myelographyがmethylglucamineiothalamate(Conray)を使用して報告されて以来,その有用性が認識されつつある.神経学的検索の進んだ今日においてもmyelographyは治療の方針を決める上に重要な手段の一つであることからも,水溶性myelographyが普遍的な検査となるためには,手技および副作用予防に習熟,注意とともに,その造影所見の正しい把握が重要な条件となる.

 これまで本邦において,その使用経験として報告されているごとく,水溶性造影剤によるmyelographyはこれまでの油性造影剤の場合と異なり,硬膜終嚢像のみならず,馬尾神経においてそのレリーフを詳細に描出し,腰仙部椎間板ヘルニアを主とする,根神経症状を呈する腰痛性疾患の診断には極めて有力である.また注入された造影剤の排泄も速やかであり,反復検査も可能である.しかし開発初期の水溶性造影剤が示すとおり,神経組織,髄膜などに対する刺激作用は,現在使用されているものでも皆無とはいえず,また検査手技および術後管理の煩雑さを伴うという難点は免れていない.

基本情報

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臨床整形外科
8巻9号 (1973年9月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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