臨床整形外科 2巻6号 (1967年6月)

シンポジウム 腰痛

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はしがき

 腰痛,坐骨神経痛を主訴として,当科に40年6月から41年7月までの一年間に来院した患者の数は外来患者総数6691名のうち1657名,実に24.7%です.実際に腰痛Lumbagoといつても腰痛を訴える姿は多種多様であり,腰痛症という言葉で診断することはゆるされない内容をもつています.腰痛というのは,共通した症状であり,われわれはあくまでもそのよつてきたる根源をたづね考える態度を持たねばなりません.これは坐骨神経痛Ischiasという言葉においてもあてはまることであり,かかる診断名は無いはずです.そこで腰痛を起す原因について要約して考えてみますと①構築性の起因によるもの,要するに半椎体,脊椎披裂などの脊柱の奇型とか脚長差による骨盤の傾斜の存在などによるものです.②筋,筋膜性の起因によるもの,筋肉,筋膜の断裂,出血などによる変化によつて起るもの,また時に膠原病性のこともあります.③椎間板障害,椎間内障によるもの,これは本日の主題とするところです.④外傷性の起因,骨折,脱臼などによつて生じるもの,⑤炎症性起因,例えば脊椎カリエス,脊椎炎などです.

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はじめに

 腰痛に関する問題は,古くから多くの研究が行なわれている.しかしながら未だに難解な問題が多い.それは,その原因が非常に多方面にわたり,また複雑を極めているためである.昨年11月第26回日本臨床外科学会に取りあげられた「腰痛」のシンポジウムでも,千葉大整形外科の鈴木教授は椎間板性の腰痛を,京都府大整形外科の諸富教授は,筋,筋膜性の腰痛を,阪大麻酔科の恩地教授は不安定性の腰痛症について述べられ,一つ一つその原因について究明が行なわれた.その際に私は「脊椎後方構成要素に関する腰痛」という大変解り難いようなテーマを担当した.その意味は,私が腰痛の大きな原因の一つとして考えているところの腰部の深いところに存在する腰神経後枝内側枝(medial branch of lumbar posteriorprimary division)によつて惹起されるであろうと考えられる腰痛を取りあげたもので,その神経の走行および支配領域を観察すると,脊椎の後方を構成している各種の要素の変化によつて影響されるところが大きいと考えられるので,このようなテーマを掲げた次第である.

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はじめに

 腰痛を訴えて医家を訪れる患者は非常に多く,わが教室における統計をみても,実に全外来患者の約20%が腰痛を主訴として来院している.しかし,一口に腰痛と称しても,その原因は多種多様であり,さらにその部位も脊椎,椎間板,さらには筋肉,筋膜などを含む軟部組織などに由来するものなど様々である.その上,最近盛んになつてきたいわゆる心身症による腰痛もかなり認められる.これらの腰痛の治療に当つては,もちろんその原因となつている疾患および部位を確実に掴み,適切な治療を行うことが必要なことはいうまでもないが,今回はこれら腰痛のうちでも軟部組織,ことに筋,筋膜部における変化に基く筋・々膜性腰痛症に関して,病理,診断の大略をのべ,さらにその治療についても述べることにする.

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はじめに

 腰痛を論ずるに当つて一番困る問題は,客観的な診断手段として,レントゲンだけしかないことである.第2項でのべるように,非常に多くの原因によつて腰痛がおこりうるにかかわらず,診断手段としてレントゲンだけしかないことが,腰痛の診断に当つて,独断と先入主にとらわれうる危険を多くはらませる結果となつた.そこでまず,疼痛感受の一般的な問題について論じ,次に腰痛発生の一因子となりうるであろう安定椎と,そのレントゲン的診断についてのべてみる.

視座

ペルテス病 青池 勇雄
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 ペルテス病はあまり数多いものではないが,整形外科医にとつては興味の深い疾患である.

 そのわけはこの病気が発表されてから既に57年も経つというのに,今なお,原因についても,はたまた治療法についても満足すべき結論に到達していないからであつて,そのために依然として,この両面に対して研究がそれぞれ行なわれなければならないし,また多くの整形外科医はその研究に対して魅力を感じているものである.

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はじめに

 頸肩腕より手におよぶ疼痛を主徴とする神経・血管性障害のうちで,一部の症例はその直接の原因が前斜角筋にあることは1906年Murphyによつて示唆された.また,1927年Adson&Coffey1)は頸肋を伴つたこのような疾患に対して,前斜角筋を切離すことにより症状の緩解が起ることを実証した.1935年Ochsnerら10)はこのような神経・血管性障害を初めてScalenus anticus syndromeと呼び,その病像を明らかにするとともに,その成因に関しては,頸肋の存在は必ずしも必要ではなく,上腕神経叢がなんらかの原因により刺激され,そのために前斜角筋のspasmが起り,上腕神経叢および鎖骨下動脈が前斜角筋と第1肋骨(または頸肋など)との間で圧迫されることによるものであろうと述べた(第1図).それ以来,今日まで本症に関して数多くの報告がなされ,その病態のメカニズムや治療法はかなり明らかとなつてきた.

  しかし,増原ら9)も指摘しているように,前斜角筋と第1肋骨との間に鎖骨下動脈が圧迫されて,上肢に著明な血管症状をきたすことはむしろ稀ではないかという考え方もあり,また近藤8)や五島5)らは血管症状が証明されなかつた症例をも前斜角筋症候群として分類しており,本症がいわゆる広義の頸肩腕症候群のうちの一つの独立した疾患として位置づけられてきた意義が薄れた感すらある.

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はじめに

 外傷は別にして,日常おこなう整形外科的手術は,その対象になつている疾病に,たとえば,椎間板ヘルニア,股関節脱臼など,直接生命と関係のないものがほとんどである.したがつて,手術によつて出血をし,これに対して輸血をし,輸血反応をおこしたり,肝炎を併発したりすることは,手術によつて受ける利益と比較すると,あまりにも大きな犠牲といわざるをえない.癌に対する拡大根治手術をして,そのとき輸血をして,輸血反応をおこしたり,肝炎をおこしたりするのとは比較できない.整形外科手術に際して輸血を節減し,代用血漿(デキストラン)で出血を補うことを真剣に考慮してみる必要がうまれてきた.

 さらにそのうえ,整形外科手術の対象になる患者の多くは,心肺系に合併症を有さない,いわゆる一般状態のよいものが多く,生体のもつ代償余力に大きく依存することができる.この点では,心臓外科の手術の対象になる患者などとは,雲泥差である.開心術を必要としている患者などでは,ごくわずかの呼吸,循環の乱れも代償する力をもつていない.これに反し,整形外科の患者の多くは,酸素運搬体としての血液量の変化に対して,心拍出量の変化によつて対応する十分な予備力を持つている.

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はじめに

 いかなる疾患もそれを治療する場合,その原因を知ることができれば適確な治療方針を立てることが期待でき,また一歩進んで予防にまで立ち入ることができる.

 しかし,小児整形外科の領域で相遇する先天性疾患の多くは,その原因に関する学説が確定せず,止むをえず,その結果として表現された変形,または機能障害を対象として治療しなければならない状態である.

手術手技

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 解剖学的に,上腕骨骨体部といわれる部位は,M.pectoralis maj.の附着部上縁からsupracon—dylar ridgeまでであるが,臨床上からみると,末梢1/4の骨折は,年齢的にも幼少時に集中し,したがつて,発育に伴う変形への考慮も必要なため肘関節部骨折に含めて別個に取扱うべきである.

臨床経験

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はじめに

 上腕内反を来す疾患については1900年Riedingerの発表以来Angelleti,Bircher,Preisor,Ewald,Rocher,Hohmann,Frohlich,Branciforti-Goidanich,HollandBozdē ckらが,本邦では豊島,松本,池田,赤林,森川,藤原らが報告している.上腕内反は諸家によりいろいろな分類法が発表されていて,Weilは症候性上腕内反,先天性上腕内反,特発性上腕内反の三型に分類し,さらに詳細にはBranciforti-Goidanichが第1表の様に分類している.私は特発性上腕骨内反症と思われる一症例に,上腕骨切り術を行つて症状の改善をみたのでここに報告し,いささかの丈献的考察を加えてみたいと思う.

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緒論

 整形外科領域において筋肉疾患は,最近その研究の進歩にともなつて興味をもたれてきており,わが教室も数年来myoglobinの代謝を中心にして研究をすすめてきた.境界領域の疾患として,整形外科でも各種のmyo—pathyをみることが多い.中でも,進行性で高度の筋力低下を来す,進行性筋萎縮症(Progressive MuscularDystrophy以下PMD)は重要である.

 多発性筋炎(Polymyositis以下PM)は四肢の近位諸筋肉の筋力低下を主な症状としており,皮膚症状を欠くものでは,PMDときわめてよく似た臨床像を示して,鑑別が困難なことがある.

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 膝関節の造影は,Werndorff,Robinson(1905)により最初に試みられたが,その判読の難しさ,操作に時間を要するなどの理由から種々改良が試みられてきた.天児教授も2,3の試みをこれまでに紹介されてきたが1)2)3),この小論においてはこねまでの造影法の概観と著者の教室で使用している方法を紹介したい.

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 ここ数年来,在京の同学諸氏と談つて,それぞれ手許の症例を供覧しあつて,エックス線写真や病理組織像を討論しながら.いろいろの骨腫瘍についてその診断や治療のことを忌憚なく語り合おうではないかということで,毎月1回,主として東大整形外科の方々のお世話に甘えて,この集りはつづけられている.気楽なことがとりえのこのつどいは,かえつて実地上役立つことも多く,集る人々の評判はよく,お互いに少し楽しみでもある.

 幸い今回「臨床整形外科」の御好意によつて,その一端を録音していただくことができた.

基本情報

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臨床整形外科
2巻6号 (1967年6月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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