境界領域
整形外科手術に伴う出血に対する代用血漿ならびに輸液の使用法について
恩地 裕
1
Yutaka ONJI
1
1大阪大学医学部麻酔科
pp.631-637
発行日 1967年6月25日
Published Date 1967/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904250
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はじめに
外傷は別にして,日常おこなう整形外科的手術は,その対象になつている疾病に,たとえば,椎間板ヘルニア,股関節脱臼など,直接生命と関係のないものがほとんどである.したがつて,手術によつて出血をし,これに対して輸血をし,輸血反応をおこしたり,肝炎を併発したりすることは,手術によつて受ける利益と比較すると,あまりにも大きな犠牲といわざるをえない.癌に対する拡大根治手術をして,そのとき輸血をして,輸血反応をおこしたり,肝炎をおこしたりするのとは比較できない.整形外科手術に際して輸血を節減し,代用血漿(デキストラン)で出血を補うことを真剣に考慮してみる必要がうまれてきた.
さらにそのうえ,整形外科手術の対象になる患者の多くは,心肺系に合併症を有さない,いわゆる一般状態のよいものが多く,生体のもつ代償余力に大きく依存することができる.この点では,心臓外科の手術の対象になる患者などとは,雲泥差である.開心術を必要としている患者などでは,ごくわずかの呼吸,循環の乱れも代償する力をもつていない.これに反し,整形外科の患者の多くは,酸素運搬体としての血液量の変化に対して,心拍出量の変化によつて対応する十分な予備力を持つている.
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