臨床整形外科 12巻10号 (1977年10月)

カラーシリーズ 人工関節の手術・9

蝶番型膝人工関節置換術 田中 清介
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 Shiers型(第1図),Walldius型,Guepar型は代表的な蝶番型人工膝関節である.人工関節の骨への定着を良くするために大腿骨と脛骨の骨髄腔に挿入するための髄内軸があり,さらに定着を強固にするために骨セメントが用いられる.

視座

先天股脱の治療に思う 岩原 寅猪
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 先天股脱の研究もずいぶん追い上げてきたものだというのがこの頃のわたくしの感じである.学会で,研究会で発表される研究成果をみても,それにともなう論議を聴いても,旧いLorenz法時代に育ちその後の変革期を生きてきたわたくしには感慨深いものがある.

 今から20年あるいは25年も昔のことであつたろうか,戦後の混乱がようやく落ち着きかけた頃のことであつた.乳幼児検診が取りあげられ,放射線被曝が問題になつたことがある.もちろん,それはまだLorenz法時代のことで,おむつカバー法がとりいれられてきた当時である.今にして思うとしかし,それはLorenz法の揺れ動き初めであつた.

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はじめに

 わが国の変形性股関節症は先天股脱ないしは臼蓋形成不全に由来する二次性のものが大部分を占める.したがつてその発生年齢が比較的若い点,また形態的特徴などから各種観血的治療法のうちでも骨切り術は重要な役割を演じている.

 われわれの教室では昭和31年以来,本症の各年代,各病期に対し適応と考えられるものに主として移動骨切り術を行ない,その成績もしばしば報告して来たが52,53),手術症例数は昭和50年8月現在292例,304関節に達した.近年従来適応と考えていたもののうち若年者の軽症は臼蓋形成術に,老年の重症は人工関節全置換術にその座をゆずる傾向にあるが,その中間に在って,前述のごとく依然として重要な治療法であることに変りはない.大腿骨転子間骨切り術の除痛効果は衆目の認めるところであるがその手術法の細目においては未だ一致をみないし,手術適応および効果持続期間も必ずしも明確でない.手術の目標としては1回の手術で一生を全うすることができるのが理想であるが,少なくとも人工関節適応年齢まで効果を持続し,バトンタッチできなければならない.いかなる条件下ではどの位の確率で少くとも何年間は効果が持続するかを知ることが切に望まれる.

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はじめに

 昭和32年から昭和51年11月までの19年間に経験した(千葉大学および川崎製鉄病院)腰部椎間板ヘルニアは719例であるが,20歳未満のヘルニアは56例(7.8%)である.諸外国における10歳代のヘルニアに関する報告をみると腰部椎間板ヘルニアが占める割合は,0.8%(Rugtveit28),1966)から3.8%(O�Connell26),1960)程度で稀なものとされているが,本邦ではこれに比べて著しくその比率は高い.これまでの報告では片岡ら14)(1968)の12.5%が最低で,最高は須田ら29)(1972)の22.3%を数える.

 元来,腰部椎間板ヘルニアは10歳以降にはじまる緩徐な退行性変化に運命づけられている椎間板とこれに加わる力学的負荷との相互作用が病因の主役をなしていることは一般的に認められている.10歳代とくに15歳以下にみるいわゆる若年性ヘルニアには何か異なつた要因があるであろうことも想像に難くない.外傷性因子の存在は報告者の大半がみとめるところであるが,すべてにみられる訳でもない.内因に関する検討もまた要求される.

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 上位頸椎外傷の報告の多くが環椎,軸椎の骨折に関するもので,骨傷を伴わない上位頸椎脱臼についても,殆んどが環軸関節の前方脱臼,回旋脱臼に限られている11,14,17).事実,共著者の1人小林18)の百余例の上位頸椎損傷の集計でも同様の傾向を示している(第1表).一方,環椎後頭関節脱臼はまことに少なく,その生存例にいたつては,欧米で僅かに3例を数えるのみであり8,10),本邦では未だその報告をみない.われわれは,すでに本外傷の死亡例を3例経験しているが,最近,本邦初例と思われる生存例を経験したので,同脱臼の臨床像の検討を行ない,受傷機転,治療および生存の可能性についての考察を加えて,ここに報告する.

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はじめに

 寛骨臼骨折や恥骨結合離開に対して手術的治療を行なうか,保存的な牽引療法に終始するかは議論の分れるところである.われわれも1970年まではこれらの外傷に対しては保存的治療を主として行なつてきたが,実をいえば手術的方法をよく知らなかつたし,余り関心もなかつたので保存的に処置してきたに過ぎないのであり,そしてその成績はあまり芳んばしいものではなかつた.

 筆者は1970年1年間のPrais大学Raymond—Poincare病院での勤務中に数多くの重度の寛骨臼骨折を含めた骨盤—股関節外傷の手術に参加し,Judet一派の手術術式とその分類法を習得するとともに,その当時すでに約380例に達していた手術症例の遠隔成績の優秀さを知り,帰国後これらの骨折に対して積極的に手術的治療を行なうように方針をきめたわけである.ここでは手術的治療すなわち観血的整復術と骨接合術について述べる.

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 膝の三大疾患および正常人について150膝の膝関節内圧と筋力,筋活動電位などについて検討した.

 1.変形性膝関節症の関節内圧曲線はいろいろで筋力のほかに関節液貯留などの因子にも修飾されている.

 2.慢性関節リウマチにおいては関節液貯留の因子も考慮されるべきであろうが,とくに筋力が弱く関節内圧の変動隔も小さい.

 3.膝半月損傷患者の多くのものは関節内圧,筋力,筋活動電位共に正常人の膝のそれらに類似している.

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はじめに

 脛骨顆間隆起骨折は,単なる関節内骨折ではなく,前十字靱帯剥離骨折である場合が多く,その治療にあたつては,膝関節の特殊な解剖,機能についての充分な認識が必要である.

 膝関節の運動は,矢状面における屈伸運動と,水平面における回旋運動の複合運動で,特異な骨格機構と,内,外側側副靱帯,前,後十字靱帯,内,外側半月等の構成体によって,巧妙に制御,誘導されている.これらの制御誘導機構は,いずれも単独で作用するわけではなく,お互いに同調して,他の関節に見られない独特な運動性と安定性を保つている.従つて,これらの骨格機構,靱帯,半月の一部に破綻が生じると,膝関節の異常運動や不安定性を生じ,外傷性膝関節炎,ひいては変形性膝関節症発生の誘因ともなって来る.

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 近年,整形外科領域において,頸髄症,頸髄腫瘍,脊髄血管奇型などの一診断法として椎骨動脈撮影を行なう機会が増加している.診断および外科的治療に際し,vertebral angiography(以下VAG)により椎骨動脈の走行をあらかじめ知ることは,これら諸疾患の治療方針の決定に重要である.当教室では過去4年間に,大腿動脈からのSeldinger法による35例の選択的VAGを施行し,特記すべき合併症を経験していなかつたが,最近VAG後のtemporary cortical blindness(以下T.C.B.)の2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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はじめに

 われわれは長い間脳性麻痺に起因する両下肢痙性麻痺と診断されてきた症例が,胸椎部に生じたcongenitaldermal sinusによる脊髄症状であることが判明し剔出術を行なつたので,その経過について報告する.

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いとぐち

 脊髄損傷患者においては,排尿障害はほぼ必発の症状であるといつても過言ではなく,時には尿路感染により死を招くこともあり,排尿状態の把握およびコントロールが,患者の治療・リハビリテーションの上で極めて重要な位置を占めることになる.ところで膀胱は,第1図に示すような神経支配を受けているが,このうちS2〜S4の髄節は同時に肛門括約筋も支配している.それ故,肛門括約筋の状態は,ある程度排尿機能を反映すると思われる.今回我々は,脊髄損傷患者の自排尿機能を明らかにすべく,肛門括約筋の筋電図所見と,患者の自排尿状態につき,その相関関係を調べ検討したので,若干の考察を加えて報告する.

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はじめに

 OsteochondromatosisはReichelの報告以来,その発生原因につき種々の説が出され,興味が持たれている.最近我々は比較的稀とされている股関節に発生した興味ある症例を経験した.2例とも多数の遊離体が存在し,1例においては,病的骨折を伴つた非常に珍しい症例であつた.他の1例は761個もの多数の関節内遊離体が存在し,手術後8年の経過を観察し得た.これら2症例を中心に検討し,若干の文献的考察を加えて報告する.

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緒 言

 スポーツマンで特別思い当る外傷もないのに下腿の疼痛を訴えて来院する患者が稀にみられる.その原因疾患も単なるアキレス腱痛よりentrapment neuropathy,疲労骨折,anterior tibial syndrome,medial tibial syn—dromeなど種々のものを挙げる事ができる.更にはドイツ語圏でいうInsertionstendopathie,Insertionsliga—mentpathie,Tendoperiostose,Fibroostoseなど種々の同義語を持つ一群の疾患も原因として挙げられる.このような同義語のおのおのはいずれも指すところがせまく,詳しくいうと適当でないとの意見もあるが,筋,腱,靱帯,腱膜などの附着部におけるBelastungとBelastbarkeitの平衡障害により起こつてくる一群の疼痛性疾患と考え,以下fibroostoseを用いる2,4,14,17).著者は下腿筋膜附着部または長趾屈筋起始部におけるfi—broostoseと考えられる7症例の経験をした.そのうち1年以上経過の追えた3例と,特殊な形の疲労骨折に続いて起こつたと考えられる1例につき報告し,いささかの考察を加えてみたい.以下文中の圧痛表示は患者の示す表情,反応を参考にして主観的に強(+++),中(++),弱(+)の三段階に分けて行なつた.

学会印象記

第13回先天股脱研究会 村瀬 鎮雄
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 第13回先天股脱研究会は,昭和52年5月28日,慈恵医大中央講堂において,会員430名が参加して開催された.今回は,第50回日整会総会直後にもかかわらず,テーマ「観血療法にみられる難航例の検討」,「R.B.整復不能例に対する処置」,話題提供に29題の演題が集まり,10時より7時まで熱心な討議が行なわれた.演題1〜4は山崎氏,5〜11は松葉氏,R.B.装着法は坂口氏,12〜28は池田氏と村瀬が司会をつとめた.

整骨放談

天平の仏たちの姿勢 伊藤 鉄夫
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 定年退官して40年間の疲労が一度に出たような気がする.この疲れた心を奈良の古仏たちがそつと癒してくれる.東大寺の三月堂(法華堂)は天平の古仏で有名である.この古仏たちはそれぞれ特有の姿勢を示している.姿勢の基本型式は脳幹網様体によつて統御されているが,除脳状態においてこれをよく観察することができる.除脳状態では,仰臥位で頸が正面を向いているときは,両上肢は屈曲位,両下肢は伸展位に固定されているが,頸の運動(緊張性頸反射)や空間における体位の変化(緊張性迷路反射)によつて四肢に一定の型にはまつた屈伸運動が誘発される.これらの反射は汎在性平衡反応general static reaction ofMagnus and de Kleynと呼ばれる姿勢反射であることは広く知られている.人のあらゆる運動はこの姿勢反射を基盤として行なわれる.古仏にみられる姿勢は頸の回転による典型的反射姿勢に一致している.緊張性頸反射では,頸を回転すると顎側の上下肢が伸展し,頭側の上下肢が屈曲する.また頸を前屈すると両上肢が屈曲し,両下肢が伸展する.

 三月堂の中央には本尊である不空羂索観音像があり,その両側に有名な日光菩薩と月光菩薩が,半ば眼を閉じ,静かに白い寂光を放つている.この3つの仏像は前方をながめ両上肢を軽く前方に出し,肘を屈曲し合掌して直立している.この姿勢は直立位における典型的基本姿勢である.

基本情報

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臨床整形外科
12巻10号 (1977年10月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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