胃と腸 9巻3号 (1974年3月)

今月の主題 内視鏡的ポリペクトミー

主題

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 消化管に発生したポリープについて,胃の腺腫性ポリープでは,癌を伴なう頻度は,はなはだ少ないものと近年の研究では考えられるようになった.しかし2cm以上のものになると癌化の頻度がかなり高くなることが知られている.また明らかに癌とは言えない異型組織を伴なうことも経験される1).これに対して大腸に発生した乳頭腫あるいは腺腫性ポリープでは,胃のものと,ややおもむきが異なり,異型増生を伴なうことが多く,かつ癌を伴なう頻度は胃のものより高率である.

 これらの消化管ポリープの治療は癌化を考慮して,従来,胃あるいは腸の切除または部分切除などの開腹手術がなされて来た.近年,内視鏡生検法の発達によって,これら消化管ポリープの手術適応の決定は容易になった.すなわち,これらの生検法によって得られた結果が良性であった場合,ポリープは手術することなく経過観察が行われる傾向になっている.しかしポリープとその癌化との問題が解明されない以上,生検法を併用した内視鏡による経過観察は必要であっても,これは患者にとってわずらわしいものであった.内視鏡にたずさわるものが,これらポリープの除去を生検手技により試みようと考えることは当然のことである.内視鏡は生検法の開発によって,性質診断の面に画期的な進歩をとげた.しかし治療面については未開発であった.そこで内視鏡による治療面の開拓について,まず胃ポリープの除去の可能性を検討した.胃ポリープの除去の可能性は,生検手技に熟達したものが,生検鉗子による除去を繰返すことによってはじめて可能であった.しかし大きいものや茎の太いものでは容易ではなかった.

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 最近数年間,胃内視鏡器械は胃生検の精度向上を目指して,著しくその精巧さを増してきている.それにつれて,胃生検技術を応用して,胃内において病変の病態生理の検査や処置ないし治療が試みられている.昭和44年常岡ら1)2)は胃生検用ファイバースコープを用い,鉗子孔にワイヤーループを通して胃ポリープの機械的な絞約切断法を発表した.この方法は内視鏡的治療法のパイオニアとして注目を集めた.近年,ポリープの内視鏡的切断に高周波電流を応用することにより,出血防止対策が一歩進んだため,大腸ポリープ3)を始めとして,消化管の内視鏡的ポリープに対する治療法4)が次第に広く試みられて来ている5)~8).しかし,現時点においては出血対策及び偶発症予防対策は充分であるといえない.一般にルーチン化されるためには更に出血防止対策9)が進歩しなければならない.

 なお著者は胃ポリペクトミーの言葉をポリープ切断の術式と解釈し,この方法によって,一定条件をそなえた異型上皮や隆起性胃癌をも対象にしうると考えている.

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 Colonofiberscopeが開発され1)2),深部大腸の内視鏡的観察が非観血的に容易に行ないうるようになるにしたがって,本邦でも大腸ポリープの診断頻度が飛躍的に増加してきている3).しかし,Colonofiberscopeの開発された初期には,診断されたポリープは外科的に開腹して切除するしか治療法はなかった.しかし,直腸およびS状結腸下部のポリープの切除ないし焼灼は,直腸S状結腸直達鏡を用いて古くから行なわれており,Jackman4)らは,直腸癌でさえも適応をえらんで行なえば焼灼という姑息的な治療でも良好な成績が得られると述べている.

 著者らは,この直達鏡を用いた切除ないし焼灼法,常岡5)らの開発した胃ファイバースコープを用いた胃ポリープの内視鏡的切除法等を参考として,Colonofiberscopeを用いて深部大腸ポリープの内視鏡的切除を検討してきた.最近では,高周波電流を用いることにより,容易に深部大腸ポリープの内視鏡的切除が可能となってきている.

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 崎田 本日は最近非常に問題になっております,polypectomyに関する座談会です.まずその内容ですが,最初に歴史,方法論,次いでpolypectomyのindication-polypectomyの安全性,そして最後に病理学的な問題という順序になると思います.まずpolypectomyを最初におやりになりました常岡先生に今日はわざわざ出ていただきましたので,常岡先生から歴史についてお話を始めていただきたいと思います.

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 「胃と腸」の編集会議において,本特集号の企画が論議されたとき,正直いって時期尚早という声もあったが,少なくとも内視鏡的ポリペクトミーの位置づけについて読者の諸先生に誤解をあたえないような配慮が要望された.

 その結果,かつて胃生検の特集号でそうしたように,アンケート集計が必要とされた.そのさいの必要事項として,内視鏡的ポリペクトミーの消極論者,反対論者の意見も忠実に反映するよう充分注意をはらう必要があることが強調された.

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内視鏡的ポリペクトミーは,器械の改良と相挨って,この2,3年急速に普及してきた,しかし,その適応などの面で残された問題が全くないわけではない.ここでは第一線で御活躍の方々に〈内視鏡的ポリペクトミーを考える〉として,御意見を述べて頂いた.(順不同)

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 近年,内視鏡は器械自体の進歩とともに,それを操作する技術の工夫がなされた結果,消化器病診断に大きな向上をもたらした.最近では,さらに飛躍して「内視鏡を利用した治療」へとその領域を拡大してきた.

 内視鏡直視下における消化管ポリペクトミーがその代表的なものの一つとしてとくに注目をあびている.本邦におけるファイバースコープ直視下のポリペクトミーの歴史を振り返ってみると,常岡,内田ら1)2)の発表を嚆矢としている.即ち生検鉗子を利用した押し切り法に始まって,ループワイヤーによる絞断法へ進んだ.さらに丹羽3)らによって高周波によるポリペクトミーの試みがなされた.われわれも緊急内視鏡検査時行なった出血胃の電気的緊急止血法4)5)から始まり,高周波応用によるポリペクトミー6)~8)へ進んだ.そのほか北大の並木らは潰瘍の局注法を応用してポリープの脱落を企てている.また,城所9)らの冷凍法によるポリープの自然脱落法も工夫されている.

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 消化管内視鏡検査の際,被検者の歯でスコープを損傷することを防ぐために,マウスピースを使用すべきであることは,当初より強調されていながら,つい忘れがちなものであった.

 スコープを被検者に挿入してから後,はじめて緊張の強い被検者であることなどがわかり,マウスピースの必要を強く感じることがあるが,このようなときに,従来のマウスピースでは,一度ファイバースコープを抜いてからでないと装着できなかった.そこで,このような不便をなくするために,従来のマウスピースの一部を切り開いて,2枚貝のように開閉できるようにしたマウスピースを考案したところ1),ファイバースコープを被検者に挿入した後からでも簡単にマウスピースを装着できるので,マウスピースの使用が苦にならなくなった.また十二指腸ファイバースコープや小腸ファイバースコープなどのように長いスコープの揚合には,横からでも装着できるこのマウスピースは特に便利である.

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 Gastrofiberscopeの歴史は未だ日が浅く,1957年HirschowitzらによりGastro-duodenal fiberscopeが初めて実用化されて以来,この分野での急速な進歩発展は目をみはらせるものがある.現在わが国においては直視下に病変を観察するにとどまらず,胃生検による組織診断への活躍あるいは薬剤の局所注射,というような治療面にまでその応用範囲は拡げられて来た.そして独り胃にとどまらず各種臓器に対して,また使用目的に応じて多数の器種が用いられている.ここに述べるGastrofiberscope for Treatment略してT. G. F.は1971年Olympus光学で開発され,その後改良を重ねられてきた.「胃内の処置を目的とした」試作品である.

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 比較的大きな隆起性病変の大部分は異型上皮巣で,これに分化型癌巣が混在し,これより遙かに小さい隆起性病変は微小胃癌Ⅱaで,その他に小隆起性病変3コが併存する多発性隆起性病変の1例を報告する.

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 患者:46歳 女

 主訴:空腹時上腹部痛

 家族歴,既往歴:ともに特記すべきことなし.

 現病歴:約2年前より主として空腹時に上腹部痛があり,最近になって痛みの回数が増してきたため本院を受診した.胃レ線および内視鏡検査を施行したところ,胃体上部に潰瘍が認められたので外来で加療を行ないながら経過観察しているうち,さらに第2回目の精密検査で胃体下部および幽門部にも後で述べるような病変が新らしく見つかり,入院の運びとなった.食欲は良好で体重減少もなく,便通は1日1行,規則的である.

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症 例

 患 者:瀬○ロ 71歳 ♂

 特記すべき主訴はなく,ドックのために入院した.

 家族歴:特記すべき事項なし.

 既往歴:5年前下血があり,胃潰瘍として治療を行っている.

胃と腸ノート

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 始めにこのシリーズの掲載にあたり絶大なる御協力を賜わった順天堂大学消化器内科早川尚男講師にこの頁を借り感謝の意を表します.

 さて,およそ20年前,村上1)らは潰瘍癌の肉眼的基本型或は特徴として図1のごとき8つの項目を設けて検討したことがある.その際8項目のうち2項目以上の性質を備えている場合にこの診断法が確実であるという結論をだした.

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欧文目次

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日頃の臨床体験で疑問を持ちながら,解決してくれる書物がない,というようなことはありませんか? 本欄は日常の診療や勉学上の疑問にお答えする場です.質問をどしどしお寄せ下さい.

(尚,質問の採否,回答者の選定につきましては,編集委員会にお任せ下さい)

編集後記 常岡 健二
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 本号の特集として,内視鏡的ポリペクトミーがとりあげられた.ポリペクトミーの対象としてはスコープの到達する所ならばどこでも可能になったが,主対象は胃と大腸になる.もともと,直腸やS状結腸下部のポリープに対しては従来の直達鏡を用いて切除ないし焼灼法が行なわれていたことであり,いまさらこれを胃や深部大腸に応用できるようになったとしても別に驚くにあたらない.むしろファイバースコープという有力な武器が与えられた恩恵を感謝する気持で一杯である.

 さて,ポリープを切除することの可否について,これが安全な方法で行なわれ,しかも患者の苦痛や負担が軽くてすむならば,むしろ積極的な方法として選ばれて然るべきであろう.従来のポリープの前癌変化としての意義が小さくなった今日,敢えて開腹手術を行なうことには躊躇するにしても,内視鏡的ポリペクトミーには抵抗は余りないものと思われる.

基本情報

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胃と腸
9巻3号 (1974年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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