胃と腸 9巻10号 (1974年10月)

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 膠原病における食道病変は,強皮症(PSS:progressive systemic sclerosis)において,最も報告が多くみられ,全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)においても,それに近い病変のあることが知られている.その多くは,平滑筋の機能異常または結合織増殖に一部基因する嚥下障害を主訴とし,X線的に食道の拡張,緊張低下,蠕動の減少あるいは消失,造影剤の通過時間の遅延および停滞が証明されている.

 一方,Sjögren症候群は,眼球乾燥(keratoconjunctivitis sicca),口腔内乾燥(xerostomia)のsicca syndromeに,膠原病の合併する疾患で,唾液分泌量減少による嚥下障害を訴えることが多いが,その食道病変については,国の内外を問わず,報告は皆無に等しい.

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 多発性早期胃癌の症例は,最近増加しており,しかもかなり高い頻度で術前診断されるようになってきている.私どもは,胃角上部のⅡa型早期胃癌の発見が動機になり,他に病変の存在をX線的,内視鏡的に検討を加え,胃角上部のⅡaに連らなって前壁にⅡc,角部後壁にⅡc,前庭部後壁大彎寄りに比較的小さなⅡc,それよりやや口側の前庭部大彎にⅡcを発見診断できた多発性早期胃癌と,前庭部小彎前壁および胃体部後壁に異型上皮を合併する1例を経験したので,ここに若干の考察を加えて報告する.

症例

 患 者:大○和○ ♂ 69歳

 主 訴:1年半位前より胃部不快感および空腹時心窩部痛を時々感じる.

 既往歴:2年前に肺結核.

 入院時所見:胸部X線写真にて右肺尖部に結核性硬化性陰影を指摘できる.血圧は150~90(右)でほぼ正常.血沈1時間値2,血液一般検査にて,赤血球数478×104,血色素量15.4g/dl,Ht 48%,白血球数7,400,生化学,肝機能検査は異常を認めない.腎機能検査,心電図も異常を認めない.X線精密検査2回終了翌日の白血球数は8,300と異常を認めていない.検便潜血反応は陽性で,胃液検査は無酸.

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 Zollinger-Ellison症候群(以下ZE症候群)とは難治性消化性潰瘍,胃液,酸過分泌ならびにgastrin secreting(non-insulin)islet cell tumourを有する疾病に与えられた症候群である.しかし臨床上ZE症候群を呈しながら腫瘍が膵や十二指腸に認められない場合があり,このような症例ではそのZE症候群の診断が確実であるならば胃全摘後,空腹時血中ガストリン・レベルそして酸分泌はすみやかに低下し正常値に復帰するといわれ,その本態は免疫螢光法にて証明される胃前庭部G細胞の増殖であろうとされている.これはPolakらが1972年に非常に興味深いケースとして報告したいわゆるZE症候群typeⅠであるが,このtypeⅠと思われる症例を最近経験したのでここに報告する.

症例

 患 者:○沢○一 男性 38歳 自由業

 主 訴:心窩部痛

 家族歴:特記すべきものはない.

 既往歴・現病歴:昭和42年9月,主訴,家族のすすめがあったが放置,自覚症は自然に消褪す.43年5月,主訴,体重減少,軟便,近医受診により十二指腸潰瘍の診断を受け治療にて症状寛解しそのまま再び放置す.45年4月,主訴,十二指腸潰瘍増悪を指摘され入院加療,当時膵外分泌能亢進,特に水,HCO-3conc.で著明であった.軽快一時退院.47年10月,再人院,この時はじめてImmunoassayにて異常なる高ガストリン血を証明した.胃液,酸過分泌,特に夜間基礎胃液分泌,BAO/MAO比からZE症候群を一応考慮した.膵シンチではspace occupying lesionsは不明,試験開腹をすすめるも嫌忌され軽快退院す.48年11月,突然激痛発作ありて来院,十二指腸潰瘍穿孔による急性腹膜炎の疑いにて入院,緊急手術す.

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 われわれは最近,胆石症の診断で入院し,同時に頑固な下痢と末梢血の好酸球増加とを併存した46歳の女性で,手術所見でDiffuse Eosinophilic Gastroenteritisの診断を得た珍らしい症例を経験したので,ここに報告する.本疾患は欧米では比較的多くみられており,Ureles et al.(1961)5)は,胃・腸に突発的に好酸球浸潤を来した疾患47例を集め,Class 1(Diffuse),Class 2(Circumscribed)の2つに分類し,さらにClass 1 25例を3つのGroupに分類している.本邦では,大野ら(1971)6)がUrelesの分類でClass 1のGroup Cに属するものを発表しているが,われわれの経験した症例はDiffuseでPolyentelic Typeであり,Class 1のGroup Aに属するもので,この群での報告はいまだ見られてい

ない.

症例

 患 者:46歳女

 主 訴:右季肋部痛,下痢.

 家族歴:同胞4名,子供1名,母親,昭和46年胃潰瘍で手術,他は皆健在,父親戦死.

 既往歴:14歳猩紅熱,20歳腸チフス,40歳急性虫垂炎,昭和48年4月“喘息性気管支炎”で治療を受ける.他に蕁麻疹等の既往なし.海外旅行もしてない.

 現病歴:昭和46年夏,腹部膨満,右季肋部痛,嘔気,嘔吐出現し,近医にてレントゲン検査で胆石を指摘された.その後同様の発作が何回か出現しているが,発熱,黄疸,下痢は伴っていなかった.昭和47年正月になって右季肋部痛が頻回あるも,嘔気,嘔吐などの症状はなく,この年に2~3回このような発作をみた.昭和48年4月になって,咳・疾が出現,近医にて喘息性気管支炎と診断された.4月20日頃(入院前1週間)より右季肋部,右下腹部,右背部に疹痛あり,嘔気・嘔吐の他水様の下痢(食後3時間位して出現,1日3~4回)をみるようになった.胆石症の診断で手術を目的として当院外科に紹介され,昭和48年4月26日入院した.なお,体重減少は認めていない.

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 化学療法の進歩により腸結核は次第に減少する傾向にあるが,今日でもしばしばその症例が報告されている.腸結核の大部分は下部腸管とくに回盲部にみられるのに対し,上部腸管なかでも十二指腸に発生することは稀であるが,我々は最近主に上部腸管すなわち十二指腸,空腸および回腸の一部にわたり多発性の結核性潰瘍を認めた1例を経験したので報告する.

症例

 患 者:三〇マ○ 56歳 女

 主 訴:腹痛および便秘.

 家族歴:父が67歳で吐血死.

 既往歴:26歳のとき肺炎に罹患.50歳のとき虫垂切除術をうける.

 現病歴:約3年前から軽い腹痛があったが最近次第に強くなり,全身倦怠感,食欲不振を自覚するようになった.嘔吐はない.便通は1日1行であるが固い便が少しずつ出るのみで排便の満足感がない.胃レ線検査を行なったところ十二指腸下行脚に軽い狭窄を認めたので(図1a,b)更に精査を行なった.

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 大腸に潰瘍を形成する疾患は数多くあり1)2)潰瘍性大腸炎との鑑別診断は困難な場合が多い.潰瘍性大腸炎の病型分類の1つに,病変の拡がりによる分類があり,定型的潰瘍性大腸炎(classical ulcerative colitis)と,いわゆる右側結腸炎(right-sided colitis),区域性結腸炎(segmental colitis)とに大別される.前者は直腸,S字状結腸に始まり上行性に進展していくものといわれており,後者は右側結腸に始まり,下行性に進展していくものといわれている.

 潰瘍性病変が右側結腸のみに認められる場合には,腸の炎症性疾患の中でもとくに潰瘍性大腸炎の1病型である右側結腸炎と,肉芽腫性大腸炎(granulomatous colitis),大腸Crohn病(Crohn's disease of the colon)との鑑別診断がしばしば問題となる.潰瘍性大腸炎のX線所見,内視鏡所見および生検,組織学的所見に関しての多くの報告はあるが,pathognomonicな所見はないとされている.

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 胃ポリープ,とくに腺腫性ポリープの病理形態像に関しては多くの研究があり,その発生機序は徐々に解明されつつあるが,いまだ不明の点が多い.われわれはすでにできあがった腺腫性ポリープについて臨床病理組織学的立揚から検討を行ない,腺腫性ポリープの性状ならびに分類について2,3の成績を得たので報告する.

研究対象および研究方法

 昭和32年1月より昭和45年12月までの14年間に信州大学第2外科で胃切除ないしポリープ切除を施行した腺腫性ポリープ40例,ポリープ数にして133個を研究対象とした.おのおのポリープについて,ヘマトキシリン・エオジン染色およびPAS-Heidenhain鉄ヘマトキシリン重染色による組織標本を作製し,組織学的検索を行なった.

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 N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)の経口投与により,ラットに高率に胃癌を作ることが可能となったことは,杉村らの報告にもあるように1)~3),胃癌の実験的研究に有力な材料を提供した.MNNGは強力な突然変異誘起物質であり4),その発癌性の証明はinvivo5)~7)およびin vitro8)においてなされている.

 実験胃癌の組織発生に関する研究は,MNNGの開発以前においても,その胃癌誘発率の低頻度にもめげず行なわれてきた.Howes and De oliveiraは,20-Methylcholanthrene(MC)に浸した糸をラット腺胃の粘膜と漿膜の間に縫い込み,腺胃における初期変化について観察した9).Grant and Ivyは,ほぼ同様の実験操作を行なったラットで,胃粘膜の異常な変化を詳細に報告した10).Stewart一派は,胃癌の判定規準を提唱し,precancerとcancerを区別したが11),さらにMCをマウスの腺胃に注射してその経過を追求し,胃癌は多発性に発生すること,初発巣はumbilicate lesion下の粘膜深層から起こることなどを示唆した12).次いでN,N'-2,7-fluorenylenevisacetamideの経口投与による胃癌発生を報告した13)

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 1960年代半ば以降,胃の隆起性病変に関する病理組織学的検索が進むにつれて,良性悪性の境界領域病変と考えられるいわゆる異型上皮という概念が登場し1)~8),臨床的にも種々の検討が行なわれるようになった.臨床細胞診の分野でも1970年頃から異型上皮の細胞像についての研究成果が盛んに発表されるようになり9)~18),異型上皮の組織診と細胞診が高い合致率を示したという報告もみられるようになった16)18)

 胃隆起性異型上皮由来の細胞パターンに関する諸家の報告をみると,核は長楕円形で細長く,大型核はみられない,核クロマチンは微細均等分布を示す,細胞は重積性著明で,散在傾向に乏しい等の点でほぼ一致している.

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 消化管のなかでは,小腸は最も長いにもかかわらず,小腸疾患に対する診断学的アプローチは他の消化管のそれに比べて,著しく遅れていることは事実である1).小腸の形態学的診断法としては,従来から腹部単純X線検査に始まり,経口的造影剤投与によるX線検査,血管造影法,String-Testあるいは腸紐,盲目的小腸生検などがその中心としてなされてきたが,その成果は必ずしも十分とはいえなかった2)

 近年小腸の内視鏡観察を日的に,経腹腸鏡の先駆的業績3)に続いて,小腸fiberscopeの開発がなされ,小腸疾患診断のための努力が報告されている4)

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 胃において急性に発生する病変の中で,臨床的に最近注目されているものに,高木ら1)の報告した胃幽門前庭部の急性対称性潰瘍と,唐沢ら2)の検討した出血性びらんがある.高木はこの急性対称性潰瘍も出血性びらんも胃前庭部の平滑筋痙攣が急激に,かつ異常に強く発生して血行障害を起したために生じたもので,発症要因の程度により,時に潰瘍を作り,時にびらんを生じるものと推定している.これらの疾患は急激に発症するので,発症直後に診療する機会の多い実地医家にとり殊に重要なものである.昭和42年7月から昭和48年12月までに,私共は急性対称性潰瘍と出血性びらんとを合せて25例経験した.この経験を基に,両病変の臨床的事項,X線及び内視鏡所見についてのべ,両者の関係について検討を加えてみたい.

症例

 〔症例1〕患者:17歳,男子高校生.

 前庭部の急性対称性潰瘍.特別の既往なし.

 現症歴:受験準備で精神的緊張と睡眠不足が続いたところ,昭和47年1月10日,突然嘔吐を伴って心窩部激痛が生じた,とう痛は激烈でオピアト注射で一時的に軽快したが,容易に治まらず,3日後に消失した.発症4日目に行った胃X線検査では,幽門前庭部は狭小で,胃壁は強直性を呈し,殊に幽門前部は一層狭小化し,恰も胃癌にみられる,いわゆるZapfen様の所見であった(図1).圧迫でうすい不整形のバリウム斑が認められたが,明瞭なニッシェとは断定できなかった.胃前庭部の粘膜ひだの肥厚がみられた.発生後7日目に行った内視鏡検査では,前庭部の前壁と後壁にそれぞれ2個ずつの白苔に覆われた浅い潰瘍が,小彎に平行して一部線状に連って認められたが,出血性びらん所見はみとめなかった(図2a).発症19日目のX線検査では前庭部の狭小,強直性は消失していた.発症26日後の内視鏡検査では,前庭部の前壁と後壁にわずかな瘢痕を認めるのみとなった(図2b).発症時急性膵炎を疑って検査した血清アミラーゼ値は372単位(somogyi)と上昇していたが,4目後に正常に復した.肝機能は正常であった,発症8日目の胃液検査は低酸を呈し,糞便潜血反応は陽性であった.

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 Melanosis coliの名称で呼ばれている結腸,直腸粘膜の褐色色素沈着に関する最初の記載はBillard(1825)またはCruveilhier(1829)によるといわれ,本邦でも服部(1915),田中(1941)の詳細な研究をはじめ,多数の報告をみるが,なお不明の点が多い.

 本症は偶然手術材料または剖検時発見される程度で,臨床症状を呈することもなく,病的意義がないため注目されていない.しかし,最近大腸ファイバースコープの普及に伴い,生体で発見する機会が増し,その報告例(田島ら1967,酒井ら1971,饒ら1972)も増加してき

た.

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 上部消化管出血の出血源探索のために,緊急または早期内視鏡検査の有用性が近年とみに強調されている1).ことに,upper GI endoscopeの開発とその積極的な利用は,食道静脈瘤以外の食道病変からの出血源の探索にわれわれの関心を向けさせている.最近われわれは,顕出血を主訴とした広汎な急性ビラン性食道炎を経験し,食道色素撒布法を広用した内視鏡的経過観察から,興味ある結果を得たので,若干の考察を加えて報告する.

症例

 〔症例1〕患者:佐○木 ○ 61歳 男子

 元来,大酒家にて既往歴では6年前に十二指腸潰瘍の診断を受けており,6ヵ月前には少量の吐血を認めたという.家族歴にも特記すべきことはない.現病歴としては,昭和48年3月13日夜,突発した心窩部痛と約50mlのコーヒー様残渣物を吐出し,翌14日早朝にもほぼ同量の再吐血を認め入院した.

胃と腸ノート

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〔症例4〕S. M. 51歳(♂)

 Ⅱa+Ⅱc型様.Ul-Ⅲ-Ca(pm).

 この例は隆起性病変をともなった潰瘍を母地とすると思われる興味ある症例である.

 図1は肉眼写真である,幅のある比較的深い三角形をした陥凹に向って太い皺襞があつまり,特にその後壁および小彎方向からの皺襞の断端は棍棒状に断裂している.また幽門側全域をとりかこむ太い腸詰め様の皺襞はあたかも万里長城型を呈し,幽門洞部と胃角部を画然と境している.いわゆるⅡa+Ⅱc型を呈してはいるが,もはや早期癌の範疇に入れられる所見ではない.

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 鉗子生検後に著明な粘膜下の血腫と思われるものが生じて,びっくりした経験を有する方は少なくないかもしれない.われわれもファイバースコープ生検法初期の時代に手術直前の患者に生検を施行し,開腹後著明な血腫を認めた2例を経験したことがある.その後,絶えてこのような偶発例には遭遇しなかったが,最近胃穹窿部の鉗子生検により著明な粘膜下血腫を生じた2例を経験したので改めて注意を喚起する意味でここに取り上げてみた.

 患者は48歳の家婦で,主訴は心窩部痛と,腹部膨満感,既往歴・家族歴にも特記すべきことなく,外来の胃レ線検査でも特に異常を指摘されていない.また,出血時間凝固時間,プロトロンビン時間,血小板数も異常なく,胃炎精査のため内視鏡検査を施行した.使用機種はFGS-BL,鉗子は食道生検用の孔開き鉗子を使用.胃粘膜所見は中等度萎縮性胃炎で急性炎症の所見はなく,萎縮境界は明瞭で閉鎖型Ⅲを呈していた.噴門側胃炎検討のためスコープを反転し,図1のような所見を得,同部(食道胃接合部より約2cm穹窿部側)より鉗子生検を施行した.

大腸の癌と憩室 小林 世美
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 最近続いて大腸の憩室と癌が同部位に合併する2例を経験した.2例共S状結腸に憩室症があり,そのすぐ肛門側に隆起型の癌を認めている.日本人には,S状結腸憩室の頻度は非常に低く,これだけでも短期間に2例経験するのは珍らしい.大腸の憩室と癌は,欧米では頻度が高い.どちらも低残渣食を摂取し,便秘しがちな人々に多いといわれる.憩室の発生機序は,S状結腸に発生する後天性のものでは,残渣の少い食餌をとると,S状結腸内容が乏しく,その結果腸管の内圧が高まり,収縮輪を強く発生せしめ,憩室の発生へと導く.大腸の癌は低残渣食をとる人々では,腸管内容の通過が緩慢となり,Carcinogenが長く大腸粘膜に作用する結果発生しやすくなるといわれている.以上のことより,この両疾患の合併は至極当然のことに思われる.この2例を略述し,少し文献的考察を加えよう.

 第1例は,61歳女子,主訴は血便.昭和48年7月頃より時折便に血液を混ずるようになった.8月31日の大腸X-P(写真)では,S状結腸の多数の憩室と,そのすぐ直腸よりに隆起性病変(矢印)を認め,癌と診断した.9月11日の大腸ファイバースコープ検査では,肛門より13cmに隆起性病変を認め,同時に行った生検で,癌と診断された.10月11日腹会陰切除が行われ,癌は漿膜に達していたが,リンパ節転移はなく,その後の経過良好である.

一冊の本

Atlas der Enteroskopie 竹本 忠良
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 たいへん高価な本である.252頁のそう厚くもない本を3万円以上だして買うとなるとずいぶんこたえる.まあカラーがこれだけ多い図譜だから仕方ないと,勇を鼓して求めたわけである.

 こと消化管内視鏡の本となると商売柄読まないわけにはゆかない.西ドイツでも日本でも内視鏡専門書となると,講読者の層がきわめて限定されるので,いきおい本の単価が高くなることは共通した事情であろう.

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欧文目次

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 消化管内視鏡診断学大系全10巻が近々医学書院の手によって集大成されるときいていたが,今回その第1回配本として,第9巻小腸の部が刊行された.本巻の編集責任者は,癌研の高木国夫博士であるが,それぞれの項の執筆者も,実際の衝に当っている若手の研究者で占められており,このことが本大系の一大特色といえよう.消化管内視鏡の学問的地位が確立されたのも,ここ10年位のことであり,それもこれも日本の若い研究者達の精進の賜物であったろうと思っている.

 第9巻は,B5判,230頁,カラー写真161葉のほか多数の挿図を用

いて,理解を容易ならしめている.本巻の第1章は十二指腸,第2章は空腸,第3章は回腸に分れているが,大部分の頁は十二指腸の内視鏡検査法によって費されている.まず十二指腸内視鏡の開発や器械改善の歴史の項を読んでみて,その苦心のあとが偲ばれて心あたたまる想いがした.ついでファイバースコープの挿入法やそれによる検査法の手技については初心者にも判りやすく親切な解説がなされている.また潰瘍,腫瘍,炎症,憩室など,各種十二指腸疾患の内視鏡所見が,多数の美しい写真を示しながら説明されていて,十二指腸内視鏡の威力がうかがわれる.しかし,十二指腸内視鏡が学問的に最も大きな貢献をしているのは,十二指腸乳頭の形態をとらえ,内視鏡的にその解剖を明確になしえたことと,さらに乳頭部からの膵管および胆管造影を可能になしえたことではなかろうか,これによって,胆道疾患や膵疾患の診断を一歩前進せしめた意義は大きい.本書においては,これらの知見もその道のパイオニア達により明快に記載されている.

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 Colonic Neoplasma and Paraproteinemia; Report of a Case: P. M. Bulton, B. M. Kaufman and R. W. Fortt. (Dis. Col. Rect. 16: 59, 1973)

 65歳男.25年にわたって排便時鮮血下血,肛門周囲の不快感を主訴に来院.便通正常で体重減少なし.検査上Ⅲ度の痔核で他に異常認めず.直腸鏡検査と痔核切除のために入院.直腸鏡は25cmまで異常を認めず,痔核切除し回復も良好だった.検査上異常は赤沈亢進と血清電気泳動でγ-グロブリン部位に異常帯が存在し,免疫電気泳動でIgM 1,150mg/dl(正常45~180)という高値を示した.骨髄血液像正常,骨X線像正常.

編集後記 城所 仂
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 症例・研究特集号のあとがきを書くにあたり,論文内容を一読してみた.

 このような形での特集号は年2回発行されているが,珍しい症例報告や独創的な研究論文が集められており大変興味深く読むことができた.

基本情報

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胃と腸
9巻10号 (1974年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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