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書評「消化管内視鏡診断学大系9 小腸」
槇 哲夫
1,2
1東北大学
2東北労災病院
pp.1254
発行日 1974年10月25日
Published Date 1974/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111806
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消化管内視鏡診断学大系全10巻が近々医学書院の手によって集大成されるときいていたが,今回その第1回配本として,第9巻小腸の部が刊行された.本巻の編集責任者は,癌研の高木国夫博士であるが,それぞれの項の執筆者も,実際の衝に当っている若手の研究者で占められており,このことが本大系の一大特色といえよう.消化管内視鏡の学問的地位が確立されたのも,ここ10年位のことであり,それもこれも日本の若い研究者達の精進の賜物であったろうと思っている.
第9巻は,B5判,230頁,カラー写真161葉のほか多数の挿図を用
いて,理解を容易ならしめている.本巻の第1章は十二指腸,第2章は空腸,第3章は回腸に分れているが,大部分の頁は十二指腸の内視鏡検査法によって費されている.まず十二指腸内視鏡の開発や器械改善の歴史の項を読んでみて,その苦心のあとが偲ばれて心あたたまる想いがした.ついでファイバースコープの挿入法やそれによる検査法の手技については初心者にも判りやすく親切な解説がなされている.また潰瘍,腫瘍,炎症,憩室など,各種十二指腸疾患の内視鏡所見が,多数の美しい写真を示しながら説明されていて,十二指腸内視鏡の威力がうかがわれる.しかし,十二指腸内視鏡が学問的に最も大きな貢献をしているのは,十二指腸乳頭の形態をとらえ,内視鏡的にその解剖を明確になしえたことと,さらに乳頭部からの膵管および胆管造影を可能になしえたことではなかろうか,これによって,胆道疾患や膵疾患の診断を一歩前進せしめた意義は大きい.本書においては,これらの知見もその道のパイオニア達により明快に記載されている.
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