胃と腸 42巻3号 (2007年3月)

今月の主題 大腸鋸歯状病変の発育進展と診断・取り扱い

序説

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歴史的流れ

 鋸歯状腺腫とは,1990年にLongacreとFenoglio-Preiser1)によって命名された serrated adenoma(SA)の和訳であり,過形成性ポリープに類似した鋸歯状腺管構造をもち,かつ腺腫に類似した細胞異型をもつことを特徴としている.

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 筆者らは大腸鋸歯状病変を鋸歯状腺腫(SA),過形成性ポリープ(HP),異型過形成性ポリープ(AHP)に分類・診断している.診断基準は主所見(粘膜中層~表層の核偽重層)と2つの副所見(好酸性細胞質,腺管分岐)の組み合わせから成るが,核偽重層と腺管分岐は鋸歯状病変の細胞増殖動態の異常を,好酸性細胞質は杯細胞の分化異常を表現している.欧米では鋸歯状病変をserrated polypと総称し,hyperplastic polyp(HP),sessile serrated adenoma(SSA),traditional serrated adenoma(TSA)に3分しているが,それらは筆者らのHP,AHP,SAにほぼ相当する.大腸鋸歯状病変の病理診断では,筆者らのAHP(欧米のSSA)の位置づけ(腫瘍か非腫瘍か)を明確にすることが最重要課題と考えられる.

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 内視鏡的に切除された大腸隆起性病変から,Longacreらの定義に従い,組織学的にserrated adenoma 93病変を選出し,その組織学的特徴について検索した.対照病変として,hyperplastic polyp,tubular adenomaを用いた.増殖細胞の検討から,hyperplastic polypに比してserrated adenomaでは腺底部から粘膜表層部への増殖細胞の変移がみられ,組織学的に,腺底部のみならず粘膜表層部にも核の腫大・密在がみられることがその特徴であった.

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 鋸歯状ポリープ(SP)には,過形成性ポリープ(HP)/化生性ポリープ(MP),鋸歯状腺腫(SA),および鋸歯状腺腫内癌(Ca in SA)あるいは由来癌(SA-deriv Ca)が含まれる.SAに関しては,Longacre and Fenoglioによってまとめられたものがわれわれの頭に入力されているが,最近,米国・カナダの研究者より,hyperplastic polyposis(HPP)の研究をもとに,発癌のリスクのあるHP類似病変として,無茎性鋸歯状ポリープ(SSP)/無茎性鋸歯状腺腫(SSA)なる概念が提出され注目されている.また,HPとの組織学的鑑別点も提案されている.本稿では,米国・カナダの研究者が用いているSPの分類を示し,筆者の立場からコメントを加えた.SSP/SSAには内容に幅がありそうなので,わが国できちんとした診断基準を作るべきであると思った.次いで,筆者の基準でSA成分が含まれていると判断した108個の表在性病変について,SAの臨床病理学的特徴を示した.癌合併率は8%であった.大きなSA,特に右側結腸の扁平(IIa様)なSAは注意する必要がある.さらに,SAを通してのSPの発育進展経路を考察した.最後に,SPの癌化には,従来のadenoma-carcinoma sequenceとは異なる,いわばserrated pathwayが存在し,これにはBRAF遺伝子の変異やhypermethylationがからんでいることを紹介した.

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 鋸歯状腺腫は正常大腸腺管構造を模倣した腫瘍であることを以前報告した.形態学的に2種類の腫瘍細胞が鋸歯状腺腫にはみられ,1つは正常腺管表層部に類似する終末分化細胞で,他の1つは正常腺管下層部に類似する腺管下層部細胞である.正常腺管上層部と下層部で特異的に発現する蛋白が,終末分化細胞と腺管下層部細胞にも同じように発現するか免疫染色で調べた結果,鋸歯状腺腫の終末分化細胞は正常腺管上層部と,腺管下層細胞は正常腺管下層部と同じ発現を示した.終末分化の異常発現という概念を導入することにより,過形成性ポリープや鋸歯状腺腫また管状腺腫との関係が一元的に説明可能であることを示した.鋸歯状腺腫は2種類の細胞が組み合わさって独特の形態を示す腺腫で,増殖と分化の解析の良いモデルとなる病変である.

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 癌を合併した鋸歯状腺腫(SA)14病変および癌を合併した過形成性ポリープ(HP)11病変について,臨床病理学的に検討した.発生部位は癌合併SAの64%,癌合併HPの80%が盲腸~横行結腸であり,右側結腸に多くみられ,病変の大きさは両者ともに平均16mmであった.肉眼形態は癌合併SAは有茎性隆起が多く,癌合併HPでは無茎性隆起が多かった.癌の多くは粘膜内に限局する高分化腺癌で,SA成分やHP成分より構成割合の少ない病変が多く認められた.免疫組織学的にcytokeratin(CK)7は,癌合併SAにおけるSAで35.7%,癌部で50%に陽性であり,癌合併HPではHPで27.3%,癌部では36.4%が陽性であった.特に癌合併SAにおける癌部の50%はCK7+/CK20+であった.癌を合併するSAおよびHPにおけるCK7の発現頻度は癌病巣で最も高く,次いでSA,HPという傾向がみられた.粘液形質の発現については混合型(胃腺窩上皮型+腸型)粘液形質の発現(MUC5AC+/MUC2+)を示すものが,癌合併SAにおけるSAで78.6%,癌部は42.9%,癌合併HPのHPは全病変で,その癌部では90.9%を占めた.癌合併SA病変において胃型粘液形質を発現する頻度は高く,癌合併HP病変においてはその多くがHP,癌成分ともに胃型粘液形質を発現していた.以上より,SAおよびHPに合併する癌は,通常の大腸癌とは異なる,併存病変に類似した免疫組織学的特徴を有するものがあり,SAおよびHPは一部の大腸癌の前駆病変であることが示唆された.

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 大腸鋸歯状腺腫の腺腫全体における頻度は0.9~4.9%,大腸鋸歯状腺腫の担癌率(1.5~19.2%)は管状腺腫と同等ないしはそれ以下という報告が多く,これらの数字からは大腸鋸歯状腺腫由来癌の大腸癌全体における頻度は2.5~5%程度と推測される.そして,鋸歯状腺腫内癌の報告はほとんどが早期癌(高分化型腺癌)の症例で,それらは男性に多く,直腸・S状結腸が好発部位であった.一方,大腸鋸歯状腺腫由来癌を腺腫成分の有無にかかわらず"serrated carcinoma"という言葉で包括した概念がMäkinenらのグループから報告されているが,"serrated carcinoma"の頻度は7.5%(鋸歯状腺腫成分を伴うものは5.8%)と記載されている.そして,これらは臨床的には,女性に多く,右側結腸発生優位であり,組織学的には,(1)癌腺管の鋸歯状構造,(2)浸潤性発育,(3)粘液癌(粘液湖出現)が高頻度,(4)浸潤先進部での低分化傾向,(5)壊死に乏しい,(6)免疫組織化学染色で胃型形質を発現するという特徴があり,分子生物学的にも大腸癌の一亜型であると考えられている.以上より鋸歯状病変由来癌の頻度は10%以下程度であると思われるが,鋸歯状腺腫内癌(早期癌)と"serrated carcinoma"(進行癌)では臨床的特徴(性差と発生部位)に乖離があることは,その早期病変ないしは前駆病変の進行が速いため見逃していることを反映している可能性がある.今後の課題としては,鋸歯状病変由来大腸癌の発生から発育進展様式を解明することと,その亜前駆病変としてのsessile serrated polyp/adenomaのこの発癌経路における意義の再検討である.

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 過去7年間に当センターにて経験したserrated adenomaの臨床的特徴および内視鏡所見について検討した.同期間に12,302病変に対して内視鏡切除が施行され,病理組織学的に95病変(0.77%)がserrated adenomaであった.男女比は1.26で,全95病変中56病変(58.9%)が直腸,S状結腸に存在し,隆起型病変が81病変(85.3%)を占めていた.拡大観察による検討ではIIIH型pitの一致率が26.8%,IVH型pitの一致率は50.0%であった.また,SAの担癌率は9.5%であった.現時点での臨床的取り扱いは,腺腫に準じた取り扱いで差し支えないものと考えられる.

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 当診療部で内視鏡的切除を施行した大腸鋸歯状腺腫(serrated adenoma;SA)499病変を対象に,肉眼型(隆起型328病変,表面型171病変)別に内視鏡所見を比較検討した.平均腫瘍径は,表面型SAが隆起型SAより有意に大きかった.通常内視鏡像では,隆起型SAは発赤調で顆粒結節状および分葉状,表面型SAは褪色調で表面が平滑な所見が特徴的であった.拡大観察では,隆起型SAはIIILまたはIV型pit patternを呈することが多かったのに対し,表面型SAはすべてII型(95%はII型単独)を呈していた.NBI拡大観察では,隆起型SAは微小血管径が均一型,微小血管模様整が66.7%,表面型SAは微小血管径と微小血管模様がすべて不明瞭であった.また,表面型SAは過形成性病変の内視鏡像と類似しており,両者を厳密に鑑別診断することは困難であると考えられた.

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私はこう考える

 大腸鋸歯状腺腫(serrated adenoma;SA)の取り扱いは従来の腺腫に準じた対処で十分である.

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 LongacreとFenoglio-Priserによりserrated adenoma(SA)の概念が提唱され1),一般的になった.しかし,SAの病理組織診断には病理医間で差異があり2),臨床的な取り扱いも必ずしも統一されていないのが現状であると思われる.

 また,最近はserrated polyp3)としてhyperplastic polyp(HP)を含む鋸歯状腺管構造を呈する病変を総括したり,large hyperplastic polyp4)などの用語も使われている.SAが注目されてきた背景にはmalignant potentialがあり,病巣内に癌を伴う病変があることである1).また同じ鋸歯状の腺管構造を呈し,SAの鑑別対象となるHPについても,遺伝子の検討によりHPからSAへ発育する可能性が指摘され5),HP-SA-cancer sequenceとの考え方もある.平坦な過形成性ポリープの中に,周囲にSAを伴う癌が存在する症例6)を見ると,このHP→SA→cancerのsequenceが実感される.しかし,従来より小さな病変におけるHP,SAの診断は困難なことが多く7),腺腫(tubular adenoma;TA)でも5mm以下の病変は経過観察とする日常診療において,SA,HPをどのように取り扱うかは意見が分かれると思われる.

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大腸鋸歯状病変の概念に対する考え方

 大腸鋸歯状腺腫という用語が生まれてから15年が過ぎ,その概念もかなり定着したかに見える.一方で,いまだに組織診断基準が病理医によってかなり異なる領域でもある.最初の報告では担癌率が約10%とされ,通常の腺腫より高い癌化率であるとする報告が多かったため,一気に注目を集めるに至った.鋸歯状腺腫の発生母地としては,過形成性ポリープ由来という考え方と,そうではないとする考え方があり,その発生や変化に関して様々な推測がなされている.当初報告されていたほど高い癌化率とは思えないが,serrated adenoma-carcinoma sequenceが存在することは間違いなかろう.

 通常,腺腫は将来癌化の可能性があるため治療の対象となるが,過形成性ポリープは非腫瘍であり治療の対象とはならない.ところが,hyperplastic polyposisにおいて高率に大腸癌が発生すること,明らかな癌の一部に鋸歯状構造を伴う病変が散見されること,鋸歯状構造を持った病変の中で比較的高率に遺伝子変化が認められること,などから,hyperplastic polyp-carcinoma sequenceの存在も否定できなくなってきた.さらにsessile serrated polyp,large hyperplastic polyp,mixed polypなど,中間的な病変の存在が提唱され,種々の呼称が存在し,概念の解釈や病理診断基準に混乱が生じている.

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大腸鋸歯状病変の分類と特徴

 大腸の鋸歯状病変の病理組織分類とその定義には種々の意見があり,混沌としていまだ統一されていないのが現状である1).ここでは筆者なりに臨床的に応用しやすいよう整理した分類(Table 1)について解説する.

 過形成性ポリープ(hyperplastic polyp;HP)は組織学的にほとんど異型を伴わない鋸歯状病変(一般のHP)のことを指す.左側大腸に好発し,表面隆起型(IIa)あるいは無茎性隆起型(Is)を呈する小さな病変が多い.異型を伴う過形成性ポリープ(atypical hyperplastic polyp;AHP)は組織学的には腺底部腺管の鋸歯状変化,腺管の分岐や水平方向への変形,腺管の拡張などの異型を認めるが明らかな腫瘍とは診断できない病変でsessile serrated polypの中の非腫瘍性病変に相当する.右側大腸のIIaあるいはIsを呈する1cm以上の病変に多く,hyperplastic polyposis2)3)の中の1cm以上の病変やlarge hyperplastic polyp4)5)の多くはこの範疇に入ると考えられる.鋸歯状腺腫(serrated adenoma;SA)は組織学的に鋸歯状病変の中に明らかな腫瘍腺管の存在する病変でtraditional typeとsessile typeに分けられるがsessile typeはsessile serrated polypの中の腫瘍性病変に相当する.traditional type,sessile typeいずれも(1)鋸歯状構造(を呈する)腺腫のみで構成されるもの,(2)HP(traditional typeの場合)あるいはAHP(sessile typeの場合)に鋸歯状構造腺腫と通常型(管状,管状絨毛,絨毛)腺腫のいずれもまたはいずれかが混在するもの,(3)鋸歯状構造腺腫と通常型腺腫の混在するものに分けられる.また,癌併存率はsessile typeのほうがtraditional typeよりも高いが,それでも通常型腺腫の癌依存率より低いか同等と報告されている1)6).traditional typeは左側大腸に好発し,有茎性隆起型(Ip)または亜有茎性隆起型(Isp)を呈する病変が多いのに対しsessile typeは右側大腸に好発し,IIaまたはIsを呈する病変が多い.

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大腸鋸歯状病変とは

 従来,腺管構造が鋸歯状を呈する病変は病理組織学的には過形成性ポリープ(hyperplastic polyp;HP)として取り扱われ,非腫瘍性で悪性化することのない無害な病変とされていた.ところが,HPの形態学的特徴である腺管の鋸歯状構造を呈しながら個々の細胞レベルでみると腺腫同様の細胞異型を示す病変やその一部が癌化した病変が報告されるようになり,今日ではこのような病変は通常の腺腫(traditional adenoma;TA)同様に腫瘍性病変として取り扱われ鋸歯状腺腫(serrated adenoma;SA)と呼ばれている1).なお,SAの中にはHPまたはTAのcomponentを伴う病変(mixed polyp;MP)も少なからず存在し,HP→SA(→TA)→癌という新たな大腸癌の発癌経路も明らかになってきている2).さらに,最近ではHPそのものが増大し直接癌化したと推測される早期癌も報告されるようになり3)4),両者を合わせたHPからの発癌経路(serrated pathway)が注目されている.このため,このような病理組織学的に病巣内に鋸歯状の腺管構造を有する病変は,今日では一括して鋸歯状病変(serrated polyp;SP)と総称され4),その臨床病理学的取り扱いが問題となってきている.

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 症例は61歳,女性.大腸X線検査ではS状結腸に結節集簇様・平盤状の隆起を認めた.内視鏡検査では,全体に白色調の扁平な隆起で表面に,発赤,出血,陥凹はなく中央部にやや丈の高い結節状の部分を認めた.拡大内視鏡では,表面は細顆粒状で,II型に類似したpitが認められた.生検で serrated adenoma(SA)と診断,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行.切除標本は,35×32mmの丈の低い,類円形,白色調の結節集簇様病変であった.実体顕微鏡観察では,病変全体は星芒状のII型 pit,やや丈の高い部位はシダの葉様III型pitの部分より構成され,病変中央部には,VI型と考えられる部位が認められた.病理組織診断では,全体に腺管は鋸歯状で,基底膜に接した腺底部では核の大型化,多層化もみられSAと診断した.また病変中央付近の径3mmの表面粗ぞう部で,核が粗大化し腺管の構造異型も著しい粘膜内癌を認めた.Ki-67(MIB-1)染色では癌部,腺底部に一致し陽性細胞が認められた.p53染色では癌の部分のみがびまん性に陽性となった.本例は表面型SAに合併した粘膜内癌と考えられた.

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 症例は76歳,女性.上行結腸癌術前の大腸内視鏡検査にて直腸に20mm大の扁平隆起性病変を認め,large hyperplastic polypとして経過観察となった.15か月後に,内視鏡を再検したところ直腸扁平隆起性病変内に多発性の松毬状隆起が出現した.serrated adenoma in hyperplastic polypと診断し,内視鏡的粘膜下層剥離術にて一括切除した.病理組織学的には松毬状隆起部は鋸歯状腺腫,扁平隆起部は管状腺腫の像を呈していた.しかし,扁平隆起部においても,増殖帯より表層は鋸歯状腺腫類似の乳頭状発育を呈する特殊な腺腫であった.免疫組織化学的には鋸歯状腺腫と管状腺腫の表層部がvillin陽性となり,全体が吸収上皮に分化する性格を有するまれな病変と考えられた.

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 今でこそ国際学会での発表では苦労しなくなったものの,London生活の約1年半はこと英語に関しては,針の筵に座っているようなものだった.初めのころ滞在していた,英国外科学会に隣接された王立外科学会員になるための受験生用宿舎では,朝食・夕食付きであった.食事はまことにまずく塩味が薄いなと思っても,"塩を取ってくれ"の一言が言い出せず1か月が経ったら,猛烈な全身倦怠感に襲われた.米国で日本人からお土産にもらった塩昆布をムシャムシャと食べたら,たちまち治ったので低塩症候群だったに違いない.ここでgo to the loo(トイレに行く)とかkeep your fingers crossed(good luck)などの口語を習った.英語は米語に比べてフラットに聞えるが,それでもアクセントがないと全く通じないことも体験した.30分もディスカッションした後に"Oh, ca´tegory!"と言われて大ショック.私のカテゴリーというフラットな日本式発音は全く理解されていなかったのである.有名なピカデリーサーカスもフラットに発音したのでは全く通じず,地下鉄の乗車券売場で立ち往生したことがある.列からはずれて他の乗客が買うのをじっと注意していると,ピィ´ッカデリーという音が聞えた.これだと思って真似てみたらOK!

早期胃癌研究会

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 2006年11月の早期胃癌研究会は,11月15日(水)に日本教育会館一ツ橋ホールで開催された.司会は八巻悟郎(こころとからだの元氣プラザ消化器科)と清水誠治(大阪鉄道病院消化器内科)が担当した.第12回「白壁賞」受賞講演として,門馬久美子(都立駒込病院内視鏡科)が受賞論文である「中・下咽頭癌の通常内視鏡観察」について講演した.

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 2006年12月の早期胃癌研究会は,12月20日(水)に東商ホールで開催された.司会は小山恒男(佐久総合病院胃腸科)と田中信治(広島大学病院光学医療診療部)が担当した.画像診断レクチャーは清水誠治(大阪鉄道病院消化器内科)が「腸:注腸X線の視点」について講演した.

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 症例は49歳,女性.貧血精査目的の上部消化管内視鏡検査で,胃体部大彎に径10mm弱,境界が比較的明瞭で,発赤した過形成性ポリープ様の隆起性病変を認めた.生検にてカルチノイドと診断された.内視鏡で認められた胃体部粘膜の著明な萎縮像,血清ガストリン高値(1,900pg/ml)および抗胃壁細胞抗体陽性所見より,A型胃炎を背景に発生したI型胃カルチノイドと診断した.胃部分切除検体の病理組織検査では,カルチノイド細胞は大部分粘膜内に限局しており,病巣部表面にはびらんと胃小窩の過形成を認めた.既報告例との比較検討により,本症例の内視鏡像および組織像はI型カルチノイドの典型像と考えられた.

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 症例は68歳,男性.検診にて胃に異常を指摘され当科を受診した.胃X線および内視鏡所見では胃体下部後壁に約30mm大の0I型隆起性病変を認め,生検にて印環細胞癌と診断された.遡及的に1年9か月前の内視鏡所見を確認したところ,同部位には0IIc様病変が認められ,0IIc型から0I型へ形態変化を来したと推察された.幽門側胃切除術を施行した結果,病理組織学的に深達度SMの低分化型腺癌が主体であるリンパ球浸潤性髄様癌であった.また病変の表層は高分化型腺癌にて覆われていた.in situ hybridization法にてEpstein-Barr virus(EBV)陽性であり,EBV関連胃癌であった.

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欧文目次

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 本書は2006年に医学書院から出版された.監修は武藤徹一郎癌研究会有明病院院長と幕内雅敏東京大学大学院教授で,編者を含め158名の分担執筆から成っており,若手外科医の外科的素養を高める目的で企画,執筆された著書である.

 内容は外科学を学ぶために必要な基礎的知識(病理学,侵襲と生体反応,輸血,免疫学,代謝栄養学等),創傷に対する救命救急の基本的手技と必要な処置,胸部外科,腹部外科および内視鏡外科に関する基本的手技,そして種々の外科的疾患の病態と治療法から成っている.特に,外科的疾患としては消化管,肝胆膵,脾臓・門脈,イレウス,乳腺,呼吸器,心臓大血管,頭頸部体表,内分泌外科,小児外科に分類され,それぞれの分野の代表的疾患について概念,病理・病態生理,臨床所見,検査所見,診断,治療,予防に関して簡潔明瞭に記載されている.図およびイラストが多く取り入れられ,病態および治療法が一目でわかるように配慮され,特に掲載されているカラー図は明瞭で見やすい.

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 International Consensus Guidelines for Management of Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms(IPMN)and Mucinous Cystic Neoplasms(MCN)of the Pancreas(Pancreatology 6 : 17-32, 2006)の日本語翻訳版が出版された.粘液産生膵癌として本邦から発信され,その後,粘液産生膵腫瘍,“いわゆる”粘液産生膵腫瘍,膵管内乳頭腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)など,様々な用語で呼ばれた疾患が“IPMN”として世界的に共通の疾患名で呼称されるようになり,また“MCN”が“IPMN”とは違う疾患群であることがきちんと整理された意義は極めて大きい.さらに本書では,英文からは読み取り難い微妙なニュアンスを見事に日本語で表現し,理解を深めるために画像を追加した絶妙な構成には,国内委員として参加させていただいた者として,あらためて訳者の田中教授に敬意を表する次第である.

 本書の特徴は,設問に対して回答する形式を採用しているため,飽きることなく熟読しやすい.また,途中で疑問が浮かび,読み返しが必要な場合にも,読みたい部分を設問から探すことができる.さらに,後半には英文報告がそのまま掲載されているため,英語による表記や表現の勉強にも非常に役に立つ.

編集後記 岩下 明徳
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 大腸の鋸歯状腺腫という概念が,LongacreとFenoglio-Preiser(1990年)により提唱されてから17年,本誌(33巻6号,1998年)で「鋸歯状腺腫(serrated adenoma)とその周辺」というタイトルにて特集されてから9年が経過しました.以来,鋸歯状腺腔構造を示す大腸のポリープは病理組織学的に鋸歯状腺腫(SA:腫瘍)と過形成性ポリープ(HP:非腫瘍)に大別されてきました.しかし,時に両者の鑑別に難渋する病変に遭遇することも事実で,このような病変に対して,日本の病理医は atypical HP,immature HP,HP with young epithelium,large HPなどと呼んで診断してきたのが現状だろうと思います.

 最近,欧米でこのような病変に対し無茎性鋸歯状ポリープ(sessile serrated polyp;SSP)/無茎性鋸歯状腺腫(SSA)なる概念が提唱され注目されています.加えて,HPとSAにはmicrosatellite instability(MSI)という共通した遺伝子異常が存在すること,両者とMSIが関与する非遺伝性大腸癌(MSI大腸癌)との連続的な組織発生・発育進展(serrated neoplastic pathway)の可能性が高いこと,HPにも病理組織形態学的にいくつかの亜型があり,その一部がMSI大腸癌の前癌病変であろうと推定されること,などが明らかにされています.このような最近の疾患概念や遺伝子学的研究の著しい進歩を背景に欧米では,鋸歯状腺腔構造を示すポリープを腫瘍・非腫瘍と2大カテゴリー化するのではなく,それらを一括してserrated polypとし,その中に病理組織学的特徴からいくつかの亜型を置く組織分類が提唱されています.しかし,承知のごとくすべての日本の病理医が欧米の診断基準に従っているわけではなく,またそれらの病理医間にも大腸鋸歯状病変の分類・診断基準に差があるのが現状です.

基本情報

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胃と腸
42巻3号 (2007年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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