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大腸の鋸歯状腺腫という概念が,LongacreとFenoglio-Preiser(1990年)により提唱されてから17年,本誌(33巻6号,1998年)で「鋸歯状腺腫(serrated adenoma)とその周辺」というタイトルにて特集されてから9年が経過しました.以来,鋸歯状腺腔構造を示す大腸のポリープは病理組織学的に鋸歯状腺腫(SA:腫瘍)と過形成性ポリープ(HP:非腫瘍)に大別されてきました.しかし,時に両者の鑑別に難渋する病変に遭遇することも事実で,このような病変に対して,日本の病理医は atypical HP,immature HP,HP with young epithelium,large HPなどと呼んで診断してきたのが現状だろうと思います.
最近,欧米でこのような病変に対し無茎性鋸歯状ポリープ(sessile serrated polyp;SSP)/無茎性鋸歯状腺腫(SSA)なる概念が提唱され注目されています.加えて,HPとSAにはmicrosatellite instability(MSI)という共通した遺伝子異常が存在すること,両者とMSIが関与する非遺伝性大腸癌(MSI大腸癌)との連続的な組織発生・発育進展(serrated neoplastic pathway)の可能性が高いこと,HPにも病理組織形態学的にいくつかの亜型があり,その一部がMSI大腸癌の前癌病変であろうと推定されること,などが明らかにされています.このような最近の疾患概念や遺伝子学的研究の著しい進歩を背景に欧米では,鋸歯状腺腔構造を示すポリープを腫瘍・非腫瘍と2大カテゴリー化するのではなく,それらを一括してserrated polypとし,その中に病理組織学的特徴からいくつかの亜型を置く組織分類が提唱されています.しかし,承知のごとくすべての日本の病理医が欧米の診断基準に従っているわけではなく,またそれらの病理医間にも大腸鋸歯状病変の分類・診断基準に差があるのが現状です.
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