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編集後記
田尻 久雄
pp.134
発行日 2006年1月25日
Published Date 2006/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104314
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種々の処置具・機器・技術の開発改良により,ESDの一括切除率が向上し,偶発症の頻度と関連する問題もある一定の傾向を示している.しかし,ESDの難易度は高く,井上も同一病変を“従来の開腹手術"“内視鏡外科手術"との治療を比較想定して,“ESD"が最も難易度が高いと述べている.また“ESD"の全国的普及とともに早期胃癌治療における問題点も明らかにされてきている.すなわち,ガイドライン外の病変に対してどこまで適応拡大が可能か,術前診断能ならびに偶発症の現状,切除困難例の特徴,長期成績などである.本主題では,これらの問題点の現状と今後の課題が解析されており,読者の期待に十分応えられる内容になっていると思われる.学会,研究会の雰囲気では,ややもすると華々しいESDの手技に注目が集まりやすいが,臨床医として重要なことは本主題で問われていることにある.
最も多くのESD症例を集積している国立がんセンター中央病院の池原,後藤田らは,“判定不能例のうちESD後に経過観察となった1例が遠隔転移再発のため胃癌死となっている.十分な病理学的評価が困難な症例においてはより根治性の高い追加外科切除が必要である"と述べ,安易な経過観察は適切な外科手術時期を逃し,直接生命予後を左右する危険性があると警鐘を鳴らしている.非治癒切除例ではさらに厳しく対応されるべきである.
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