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早期胃癌の診断が一段落した1970年代半ば,依然として最悪の予後を示したいわゆる“スキルス”の早期診断への挑戦が始まった.佐野ら1)は病理組織学的に同じscirrhousと診断されるⅡc進行型とびまん性癌を予後の点から区別し,また,びまん性癌の粘膜下浸潤部の時相をコラーゲン線維の生化学的研究から浸潤期,水腫期,硬化期に分けた.当時,水腫期のびまん性癌は“柔らかいスキルス”と呼ばれ"スキルス"の早期診断に連なるものと考えられた.そして,佐野はスキルスの発生部位(原発部)として浅い潰瘍の合併した粘膜内癌(Ⅱc)と考え,その分布は胃体部,大彎部に多いと報告した.
中村ら2)3),望月4)は胃硬癌をBorrmann4型癌とlinitis plastica型癌(以後,LP癌と略す)に分け,それぞれの特徴を文献的な面からも明らかにした.そして,中村は典型的なLP癌の肉眼像の特徴を原発部位は小彎を除いた胃体部に多く,胃のほぼ全体に,粘膜下層以下をびまん性に拡がり,粘膜ひだの蛇行と太まりが広範囲に認められるものとし,X線所見上はleather bottle状を呈するものとした.そして,この典型的なLP癌に比して癌の粘膜下層以下への浸潤が胃の1/4以上に達しているが,胃内腔の狭小化はいまだ来していないものをlatent-linitis plastica,また,癌の粘膜下層以下への浸潤がいまだ胃の1/4以下にとどまっているものをprelinitis plasticaと呼んだ5).この2つの型は経過観察例からみてLP癌のより早期の型として提唱されたものと思われる.したがって,胃の“pre-linitis plastica”癌と言うと,中村の定義したこの型を指すことになる.この型の典型的と考えられる〔症例1〕を掲げる.
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