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編集後記
細井 董三
pp.978
発行日 2000年6月25日
Published Date 2000/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104750
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胃癌の中でも最も予後不良なlinitis plastica型癌の初期病変としてのpre-linitis plastica型癌について,臨床,病理,細胞増殖活性,遺伝子変異,などのそれぞれの立場からその実像に迫り,あらためて早期診断の目標を明確にするのが本書の企画の目的である.著者は各自の専門的立場からpre-linitisplastica型癌に対する定義と概念に関する理論を展開しているが,中村理論があまりにも大きな存在のため,あえてその範囲を越えない展開にとどめようとするあまり,その実像を鮮明に浮き彫りにするまでには至らなかった感がある.また胃癌の遺伝子変異の解析が進んでいる現状は理解されたが,pre-linitis plastica状態における特異的な遺伝子変異はいまのところ解明されていない模様で,今後の課題として残されているようである.一方,細胞増殖活性や粘液形質に関する検討からは胃底腺領域のⅡc-like型あるいはMénétrier型のsm massiveからmp癌がpre-hnitis plastica型癌として重要であるとの新たな知見は注目される.しかしそれが臨床側の理論と一致するか否か,そこに問題がありそうである.linitis plastica型癌の発育に関してはまだ未解決な部分が相当に残されており,今後再び,本誌にこのテーマが取り上げられることを期待する.
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