胃と腸 32巻7号 (1997年6月)

今月の主題 感染性腸炎(腸結核を除く)

序説

感染性腸炎 中野 浩
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 昨年の大阪,堺市のO157病原性大腸菌による出血性大腸炎の局地性流行に始まる全国の散在性の発生は大きな関心を呼び,社会問題化した.そして,今年に入ってからも各地で小規模な集団発生が認められている.そこで,本誌では時期に合わせ早めにこの「感染性腸炎」の企画が成された.

 出血性大腸炎ということで医師間の質問にも会い,また,外来にもこの感染を心配した患者が多く訪れた.そこで,消化器疾患の診断,治療を専門とするわれわれの出番ということになるが,今まで,このような急性の感染性腸炎の経験と関心がなく,また,知識も乏しく恥ずかしい思いをした.

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要旨 感染性腸炎の最近の動向の中で,最も広く注目を集めている腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O157)感染症について概説した.1996年にわが国においては,病原性大腸菌O157による集団食中毒事例が22件発生し,散発事例も多数報告された.患者数の総計は1万人近くになり,12人の死者が出た.欧米においても,特に米国と英国では,集団事例が多発している.病原性大腸菌O157の特徴は,Vero毒素を産生することである.Vero毒素は,病原性大腸菌O157感染の際の出血性大腸炎,溶血性尿毒症症候群,脳症の原因毒素と考えられている.

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要旨 感染性小腸炎57例と非感染性小腸疾患57例のX線所見を比較検討した.アニサキス症は限局性の浮腫性狭窄像を形成し,56%に栂指圧痕像,32%にアニサキス虫体,29%に口側腸管拡張像を認めた.エルシニア腸炎は多発結節状の隆起とバリウム斑を伴う回腸末端炎の像を呈したのに対し,キャンピロバクター腸炎とビブリオ腸炎は比較的広範なびまん性の腸管浮腫像がみられた.糞線虫症とイソスポーラ症は病変の進展に伴い上部腸管皺襞の不規則な肥厚像(初期)から,皺襞輪郭の不明瞭化と粘膜のびまん性顆粒像(終末期)を呈した.急性感染症ではSLE,急性期の虚血性小腸炎,好酸球性腸炎,血管性紫斑病との鑑別が必要であったが,病変の罹患範囲,皺襞浮腫の程度,バリウム斑の有無などに着目すれば,ある程度鑑別は可能であった.慢性感染症では初期にはAL型アミロイドーシス,低蛋白血症を伴うSLEや好酸球性腸炎,終末期にはAA型アミロイドーシス,IPSIDとの鑑別が必要であったが,二重造影像における粘膜面の性状と分布が鑑別診断上重要であった.

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要旨 感染性腸炎132例の急性期の大腸内視鏡所見を検討した.キャンピロバクター腸炎では全大腸に発赤,びらんを散在性に認めることが多く,Bauhin弁上の潰瘍は高率にみられた.腸炎ビブリオ腸炎では大腸の罹患率は低く,Bauhin弁の腫大,びらん,終末回腸のびらんが高率にみられた.サルモネラ腸炎では直腸,下行結腸の罹患率は低く,散在する発赤,びらんが高率にみられた.エロモナス腸炎はS状結腸,ブドウ球菌腸炎は左側大腸に好発し,ともに内視鏡像に一定の傾向はなかった.びまん性,縦走性,アフタ性病変など他疾患と鑑別を要する病変もしばしばみられ,診断には便培養が必要であるが,罹患部位と内視鏡像の特徴からある程度の診断は推定できた.また,炎症性腸疾患に合併した例の診断にも多くは有用であった.

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要旨 STDによる腸炎として,アメーバ性大腸炎,AIDSに合併した大腸炎,クラミジア腸炎の画像診断について述べた.アメーバ性大腸炎ではたこいぼ所見が診断価値の最も高い所見であった.AIDSに合併したサイトメガロウイルス腸炎の2例を呈示した.1例は周囲に発赤を伴う大小様々な打ち抜き様潰瘍がみられた.他の1例はやや盛り上がったびらん,発赤を中心とした病変であった.クラミジア腸炎の2例を呈示した.1例は直腸のリンパ濾胞の著明な増生がみられた.他の1例は直腸・S状結腸と回盲部のアフタ様びらんがみられた.アメーバ性大腸炎の内視鏡診断は既に確立しているが,その他のSTDによる腸炎の画像診断についてはわが国での経験は非常に少なく,今後症例を集積して,画像診断を確立する必要があると考えられた.

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要旨 感染性腸炎77例の自験生検材料と文献を参考にし,起因病原体別の組織像の特徴を分析した.このうち,組織像で確診ないし疑診できるものは,サイトメガロウイルス腸炎,アメーバ赤痢,Clostridium difficile腸炎,エルシニア腸炎,腸管出血性大腸菌腸炎,腸チフス,アニサキス症であった.ブドウ球菌性腸炎,細菌性赤痢,サルモネラ腸炎,キャンピロバクター腸炎,腸管出血性大腸菌を除くその他の病原性大腸菌性腸炎や腸炎ビブリオ腸炎は非特異的急性炎の組織像(多核白血球と慢性炎症細胞浸潤)を示した.後者の群の組織変化は,1~3病日には,好中球・好酸球が優位で,そこにリンパ球・形質細胞が加わり,4~7病日には,好中球が減少し,リンパ球・形質細胞優位となり,8病日以降は一般にすべての炎症細胞浸潤は減少した.最後に,感染性大腸炎とその他の炎症性腸疾患,特に,潰瘍性大腸炎の初発例との生検上での鑑別についても検討した.

主題研究

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要旨 AIDS患者剖検例51例を対象とし,その消化管病変に関して臨床病理学的検討を行った.サイトメガロウイルス感染は18例にみられ,食道潰瘍,胃びらん,胃潰瘍,小腸炎,回盲部潰瘍,大腸炎および潰瘍などを形成した.病理学的に上皮細胞,小血管内皮細胞への感染のほか,筋間神経叢や平滑筋への感染による筋層壊死がみられた.単純ヘルペスウイルス感染は4例で陰部潰瘍としてみられた.Mycobacterium avium-intracellulareの消化管感染は4例にみられ,全例他臓器への撒布性感染を伴っていた.3例で便から同菌を分離した.肉眼的に小腸粘膜が一様に厚く表面が白色の微細顆粒状を呈するものと,結節状小隆起が散在するものとがあった.カンジダ症は最も頻繁にみられ口内炎,食道炎が多いが,大部分が治療により治癒軽減していた.クリプトスポリジウム感染は1例のみ認め,持続する水様下痢を主症状とした.カポシ肉腫は8例で消化管病変を形成し,皮膚もしくは口腔内病変を伴っていた.1例は持続する消化管出血のため重度の貧血に陥っていた.

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要旨 1996年夏にわが国で腸管出血性大腸菌(E.coli O157:H7)に起因する腸炎が流行したが,筆者らはその1年前に,47歳の女性に発症した本症を経験した.自験例では緊急内視鏡検査で右半結腸に著しいびらん,出血,汚い膿状分泌物を認め,粘膜面は暗赤色であり,虚血性腸病変に一致した所見が確認された.この時点で本症を強く疑い,選択培地による糞便培養を行い確定診断に至ったが,早期診断と治療に努めた結果,重篤な状態に陥ることなく治癒した.自験例における内視鏡像,超音波内視鏡像,注腸X線像などの画像はO157腸炎として特徴的であったが,感染性腸炎に対する臨床医の取り組み方についても多くの教訓が得られた.

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要旨 患者は54歳,女性,主訴は,粘血下痢便,右下腹部痛,発熱.近医から紹介され当科に入院.入院時著明な炎症反応と注腸造影で上行結腸に拇指圧痕像,大腸内視鏡検査では上行結腸中央部から盲腸にかけて,粘膜の発赤,浮腫,びらんが認められた.便培養により腸管出血性大腸菌であるO157:H7を検出しVero毒素が証明された.以上から病原性大腸菌O157:H7による出血性大腸炎と診断.中心静脈栄養および抗生剤投与で症状,炎症所見は消失した.右側結腸に虚血性大腸炎様所見を認めた場合,本症を常に念頭におき,早期診断,合併症予防を行うことが重要である.

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要旨 患者は74歳,男性.1995年8月13日,腹痛と頻回の下痢が出現.翌日,血便を伴うようになり当科入院.大腸内視鏡検査では肝彎曲部から横行結腸に著明な浮腫,発赤した粘膜,粘膜下血腫,縦走傾向の潰瘍を認め,注腸X線検査では上行結腸から横行結腸にかけて拇指圧痕像を認めた.肝彎曲部と横行結腸には縦走傾向の潰瘍もみられた.X線・内視鏡像および生検組織像からは虚血性腸炎との鑑別を要したが,内視鏡下生検培養の結果,病原性大腸菌O18を検出し,病原性大腸菌腸炎と診断した.抗生剤を投与し,約1週間で症状,検査成績とも改善し,その後施行した大腸内視鏡検査でも浮腫は消失し潰瘍瘢痕を認めた.

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要旨 〔症例1〕は37歳,女性.40℃以上の発熱,数十行/日にも及ぶ水様性下痢を主訴として,精査治療目的に当科受診した.大腸内視鏡検査でS状結腸近位側から回腸に至るまで血管透見像の消失と軽度浮腫性変化を伴った病変をびまん性に認め,生検および便汁から細菌検査を施行,S. enteritidisを検出した.〔症例2〕は60歳,男性.3~4行/日の水様性下痢と腹痛を主訴として精査治療目的に当科受診した.大腸内視鏡検査で回盲弁の腫脹と回盲弁上唇に白苔を伴う不整形の比較的大きい浅い潰瘍を認め,便汁のほかに回盲弁より生検で得た組織を細菌検査に提出,S. enteritidisを検出した.以上より2症例ともS. enteritidisによる感染性腸炎と診断し,文献的考察を加えて報告した.

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要旨 患者は64歳,女性.右下腹部痛を主訴に近医を受診し,注腸X線充満像で上行結腸の進行癌疑いとして紹介された.入院後の内視鏡検査で,上行結腸に多発する不整な浅い潰瘍を伴う狭窄像を認めた.同部からの生検では,非特異的な炎症像を示すのみで,腫瘍細胞はみられなかった.注腸X線検査では,終末回腸の伸展不良と小潰瘍およびBauhin弁の腫大もみられた.第3病日より発熱がみられ,第9病日のCTおよび超音波検査で,肝内に3か所の膿瘍を認めた.膿汁の培養で,Yersinia enterocoliticaが検出された.抗生物質投与により,臨床症状および血液検査データは改善し,大腸病変は潰瘍瘢痕を残して治癒し,肝膿瘍も消失した.便培養では,病原菌は検出されず,血清抗体価の上昇もみられなかったが,臨床経過から,エルシニア腸炎に肝膿瘍を併発したまれな症例と考えられた.

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要旨 患者は33歳,男性.海外渡航歴はない.主訴は腹痛,下痢,発熱.入院時,右側腹部に中等度の圧痛あり.末梢血で好酸球消失と肝機能障害を認め,大腸内視鏡検査で回腸終末部から右側結腸にかけ,浮腫および頂部にびらんを有する小隆起を主体とした腸炎を認めた.腸粘膜の生検培養でSalmonella typhiが検出され腸チフスと診断.ofloxacin(800mg/日)の内服治療開始後,速やかに症状と肝障害は改善した.抗菌剤中止後も排菌のないことを確認し退院.約1年後に施行した大腸内視鏡検査では,回腸終末部から上行結腸にリンパ濾胞の過形成が目立つ以外には異常を認めなかった.

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 胃に関するテーマを中心に

 DDW-Japan 1997は1997年4月17日~20日の4日間,名古屋国際会議場で開かれた.多彩な興味あるプログラムと天候に恵まれ大変な盛会であった.

 今回は胃のテーマを中心に学会の印象を述べさせていただく.

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 大腸に関するテーマを中心に

 DDW-1997は名古屋国際会議場で4月17日~20日の4日間開催された.大腸疾患に関連した学会は主として,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会と日本大腸肛門病学会の3学会であった.広い会場にも恵まれ,円滑かつ余裕ある運営がなされていた.臨床的テーマ(形態診断と治療)に重点を置いて,本DDWの印象を述べてみたい.

 最近の学会では大腸癌に関する演題があまりに多く,すべてを聴くことは不可能であった.今回は大腸に関する主題を絞ったためか,取り上げられた主題あるいは一般演題はすべて聴くことが可能なように配置してあった.会場から町へ出にくいこともあり,筆者は(最近になく)かなり多数の演題を聴いたとの印象が持てた.一般演題「大腸炎症性疾患」では,潰瘍性大腸炎に関する演題(例えば,簡便なX線検査の臨床的意義や虫垂病変の意義)に興味深い報告が多かった.また,「大腸悪性腫瘍」のセクションでは,主としてⅠs型癌の発育などが問題となり,今後そのoriginを解明する努力が必要との意見が多かった.口演は一題ずつ討論ができ,非常に熱のこもったもので,興味深かった.

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 食道に関するテーマを中心に

 DDW-Japanも第5回目となり,また,4日間に戻ったこともあって,運営にゆとりが感じられ,充実した学会であった.ただもっと余裕がほしいと思うことは,特別講演,教育講演,宿題講演,会長講演,計24題が他のセッションと並行して行われることに対してである.昼食時や夕方,あるいは1日分の時間を割いても聴けるようにしていただければと思う.莫大な資料・業績に裏打ちされ,周到な準備のもとに行われる講演をゆっくり拝聴したいといつも思っている.

 さて,食道関係であるが,消化器病学会ではパネルディスカッション2題,プレナリーセッション2題,一般演題31題,内視鏡学会ではシンポジウム1題,パネルディスカッション1題,一般演題82題で,まあまあというところであろう.これらの中で目立ったのは逆流性食道炎に新しい展開がみられるということであった.

症例からみた読影と診断の基礎

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〔患者〕63歳,男性.主訴:便潜血反応陽性のため精査希望.既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

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〔患者〕62歳,男性.成人病検診のため上部消化管造影検査を施行.胃の異常を指摘され精査目的にて来院.

リフレッシュ講座 胃の検査手技の基本・2

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 はじめに

 胃X線検査は,初回検査として病変の拾い上げに主眼を置くルーチン検査と,そのルーチンX線検査または内視鏡検査によって既に存在が確認されている病変の性状診断や質的診断を目的とした精密検査とに分けて行われてきたが,近年の内視鏡の目覚ましい発達,普及に伴ってX線検査の目的や役割も変わりつつある.最近では精密X線検査は良・悪性の鑑別診断に用いられることはほとんどなくなり,主に術前検査として,手術または内視鏡的治療が予定されている病変に対して,治療法の選択や手術術式の決定に必要な情報を得る目的で行われている.したがって,ここで要求される精密X線検査の役割は病変の全体像の把握,病型の決定,悪性病変における浸潤範囲および深達度診断など,内視鏡検査だけでは十分でない診断領域を補うことにある.その点を十分に認識しておく必要がある.以下に胃癌の術前検査として最も重要な浸潤範囲と深達度診断における要点を症例に沿って解説を試みる.

早期胃癌研究会

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 1997年2月の早期胃癌研究会は2月19日(水)に開催された.司会は吉田茂昭(国立がんセンター東病院内科),浜田勉(社会保険中央総合病院消化器科)が担当した.ミニレクチャーは“肉眼所見の診かた”を下田忠和(国立がんセンター中央病院臨床検査部)が解説した.

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 1997年3月の早期胃癌研究会は,3月19日(水),小平進(帝京大学医学部第1外科)と多田正大(京都がん協会)の司会で行われた.ミニレクチャーは下田忠和(国立がんセンター中央病院臨床検査部)が“摘出材料の固定法ならびに写真撮影のコツ”を解説した.

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欧文目次

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 今回,国立がんセンター中央病院内科医長ならびに同内科チーフレジデントの方々の編集による癌診療レジデントマニュアルが,医学書院から出版された.このマニュアルは医学書院の出しているレジデントマニュアル・シリーズの癌診療版とのことであるが,レジデントなどによって企画された診療上有用なシリーズの作成は恐らく“Washington Manual”として世界的によく知られ,日本語にも訳されている「Manual of Medical Therapeutics」の日本版を目指したものであろう,いずれにせよ,臨床の現場で直接患者さんを診察し,そのうえレジデントの人たちを指導する立場にあるチーフレジデントが,このようなマニュアルを編集されることはわが国の出版界では画期的な企画であると思う.この「がん診療レジデントマニュアル」も筆者の予想通り,臨床の現場で直接役に立つ極めて有用なマニュアルになっており,白衣のポケットの中に十分入る大きさ,厚さから考えて,今後癌治療の第一線で広く若い医師たちに愛用されるであろう.

 このマニュアルの特徴の1つは,まずインフォームドコンセントと癌告知の問題を最初に取り上げていることである.癌の告知の問題はわが国で長い間議論されていた問題であるが,このマニュアルでは癌告知のための一定の条件を挙げ,その条件を満たす患者に対しては積極的に癌を告知したほうが医師・患者間に強い信頼感が生まれ,結果的に質の高い癌の医療が達成されると述べている.最近ではインフォームドコンセントを得ることが医療行為を行う際の必須の条件になっていることを考えると,癌の場合でも告知をすることが診療の基本であると考えられる.しかし癌の告知の場合には,医療側ならびに患者側の双方が一定の条件を満たしていることが前提となるのは,日本の現状ではやむを得ないであろう.

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 工藤進英氏による「Early Coloretal Cancer-Detection of Depressed Types of Colorectal Carcinoma」が出版された.本書は同氏により医学書院から発行された「早期大腸癌―平坦・陥凹型へのアプローチ」の英語版である.わが国の内視鏡の進歩は世界から注目を浴びているが,まだ十分に受け入れられるに至っていない.そこで日本の内視鏡技術の神髄を世界に広めるために英語版として出版されたものである.

 長い間,大腸癌はポリープに由来すると考えられてきた.実際,大腸癌の大部分はポリープ由来であるが,ポリープ由来でない癌も存在していることは以前から予想され,de novoの癌と呼ばれていた.著者らにより平坦陥凹型の癌が多数発見され,それらを体系化し臨床上の意義を明らかにしたのがまさに著者である.平坦陥凹型の癌は直径10mm以下で粘膜下層に浸潤することが多く,リンパ節転移を起こすので内視鏡治療の対象ではなくなるばかりでなく,短期間のうちに進行癌に移行するものである.

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 1983年にHelicobacter Pylori(以下H. Pylori)の存在が明らかになって以来,わずかな年月にもかかわらず,その臓器障害のメカニズムや病態についての解明が急速に進んでいる.これらが完全に解決され,H. Pyloriの除菌治療が確立されれば消化器病学そのものが大きく変わると考えられる.

 日本では健康保険制度の制約の影響もありH. Pylori除菌は諸外国に比較して,かなり遅れている.現在ようやく除菌療法に関してフェーズ2の治験が始まったばかりである.したがって,このような現状では日本の一般臨床医レベルでの除菌療法はまだ先のことで,専門医以外へのH. Pylori除菌知識の啓蒙もまだ先のことと筆者は考えていた.

編集後記 樋渡 信夫
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 感染性腸炎は,戦後の環境衛生の整備に伴い,急激に減少した.それにより,血便・下痢・腹痛などを訴える患者に対して,日常臨床における鑑別診断としての重要性も少なくなり,経験することもまれとなった.

 しかし,最近は海外渡航や輸入食品が広く普及し,感染性腸炎は散発的にはみられていたが,昨年の腸管出血性大腸菌(O157)による腸炎の各地の集団発生に際しては,診断,治療,予防のあらゆる面で後手に回ることが多かった.

基本情報

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胃と腸
32巻7号 (1997年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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