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今回,国立がんセンター中央病院内科医長ならびに同内科チーフレジデントの方々の編集による癌診療レジデントマニュアルが,医学書院から出版された.このマニュアルは医学書院の出しているレジデントマニュアル・シリーズの癌診療版とのことであるが,レジデントなどによって企画された診療上有用なシリーズの作成は恐らく“Washington Manual”として世界的によく知られ,日本語にも訳されている「Manual of Medical Therapeutics」の日本版を目指したものであろう,いずれにせよ,臨床の現場で直接患者さんを診察し,そのうえレジデントの人たちを指導する立場にあるチーフレジデントが,このようなマニュアルを編集されることはわが国の出版界では画期的な企画であると思う.この「がん診療レジデントマニュアル」も筆者の予想通り,臨床の現場で直接役に立つ極めて有用なマニュアルになっており,白衣のポケットの中に十分入る大きさ,厚さから考えて,今後癌治療の第一線で広く若い医師たちに愛用されるであろう.
このマニュアルの特徴の1つは,まずインフォームドコンセントと癌告知の問題を最初に取り上げていることである.癌の告知の問題はわが国で長い間議論されていた問題であるが,このマニュアルでは癌告知のための一定の条件を挙げ,その条件を満たす患者に対しては積極的に癌を告知したほうが医師・患者間に強い信頼感が生まれ,結果的に質の高い癌の医療が達成されると述べている.最近ではインフォームドコンセントを得ることが医療行為を行う際の必須の条件になっていることを考えると,癌の場合でも告知をすることが診療の基本であると考えられる.しかし癌の告知の場合には,医療側ならびに患者側の双方が一定の条件を満たしていることが前提となるのは,日本の現状ではやむを得ないであろう.
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